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番外編
入社式→sideT
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見た目は若いがかなりやり手のような社長の話を聞きながら、新入社員は男子4人だということが分かった。
まあ、大手ではなく中小企業だからそんなものだろう。
それになによりスーツってのは、かなり肩が凝るな。
一人づつ自己紹介をしていき、2人で座っていたヤツらは、東高のライバル高の西高だということが分かった。
2人の顔も覚えてないので、喧嘩とかには加担しないタイプかもしれない。
記憶力はいい方だから、人の顔はすぐに覚えられる。
「〇○市立北高出身、長谷川東流です。特には部活動とかしてなかったですが、体力と筋力には自信があるので現場仕事をがんばります」
とりあえず、でかい声を出して自己紹介をして席につく。
体育会系の会社なので、そういうのが好まれるらしい。
オヤジにもデカい声出しておけばなんとかなると言われたしな。
西高のヤツらも、俺の自己紹介を聞いてなにやらチラチラこちらを見てくる。
まあ、確かに北高で就職は珍しいしな。
栗原も似たような自己紹介をする。
温和そうな表情をしているので、あまりヤンキーっぽくはないのだが、それでも東高だしな。
「うわ、緊張したー」
横でほっと胸をなでおろして俺を見上げる。
なんだか見た感じは、なごませ役のようなヤツである。
教育担当の説明と仕事の内容を聞き、それぞれの部署に配属を言い渡された。
俺と栗原は同じドライバー部である。
他の2人は営業部らしい。
式が終わり社員証とかを渡されて、部屋の場所とかを聞いていると、
「あの、聞きたかったんだけど、長谷川君って北高のあの銀髪のハセガワ?」
気後れしたような態度で聞かれて首をかしげる。
あの、ってなんだろう。
「髪の毛?あー、なんかなー、脱色しすぎたら白っぽくなってたかも。なんか、よくわかんねーから、ブリーチかけすぎてた」
返事をかえすと、そっかと半笑いになりながら2人は営業部の方に向っていった。
その横で栗原は腹を抱えて笑っている。
「なーんか、ハセガワって、なんとなく抜け方がシロウと似てる」
「な。なにが?!シロに?えー、俺はあんなに抜けてねえよ」
「なんか何となくだよ。見ていてなんか構いたくなるなー」
「ああ、クリ、名前呼ぶの東流でいいぜ」
俺のつけた呼び名に、また笑いを噛み殺して栗原は頷いた。
「了解、東流。俺もクリで構わないよ。ドライバー同士仲良くしようぜ」
ニヤっと笑って栗原は、俺の背中をパンッと叩いた。
ドライバー部門の教育係の阪口と名乗った。
大体20前後だろうか。すこし歳上で、見た目はかなり屈強そうな身体つきをしている。
周りの社員も似たり寄ったりっていう感じで、俺も含めてケンカとかしたら強いだろうなって思う。
普段ケンカばっかしてると、体つきとか動きを見るだけで、大体の相手の戦闘能力は分かる。
栗原は、康史くらいの力があるなってのはわかるが、頭でケンカする分だけ、康史のが有利かなと思う。
さっき話をしたところ、士龍の派閥のナンバー3だったらしい。
親友だったからと栗原はいったが、弱そうでもない。
「へえ、長谷川は北高なんだ。進学校出て就職とか珍しいな。体育会系な仕事だが、大丈夫かあ?」
阪口さんは少し俺を見下したような態度で、俺の顔を珍しがるようにのぞきこむ。
少し身長は、俺より低い感じだが、大体178くらいか、動きは悪くは無いが、拳は強くはなさそうだ。
腕力はそれほどなさそうだ。
ダンベルとか上げた方がいいだろう。
「あー、はい。体力と筋力には自信あるっすけど。何か問題あるっすか?」
見てくれもきっちり鍛えてるし、栗原よりはガタイもいいし、体育会系がダメな訳がわからず、俺は首を捻る。
「栗原は、東高な。俺も東だから後輩だな。お前の歳だと五十嵐とか知ってるか?」
「あ、はい。かなり世話になりました」
「俺、五十嵐たちの一つ上だからさ。オマエとはすれ違いだったな」
あ、一応高校によって、なんか先輩後輩があるようなとこなんだろうな。
俺の高校は、就職いなかったし体力系にくるような人はいねえし。
そういうコネがなくて、大丈夫かって意味だったかな。
「まずは中型に慣れてもらって、1年かけてから長距離増やして、大型に乗るようになるような感じだけど、運転とか平気か?長谷川は」
「バイクなら……。免許は誕生日遅かったんで、まだ取り立てっすけど」
「やっぱり、北高生はマジメ君なんだな。無免運転するタイプじゃねえよな」
やはり、阪口はなんとなくどこかバカにしたようにガハガハ笑っている。
少しカチンときた。
昔なら、ガッと殴って終了だが、そうもいかない。一応、社会人だしな。
今日から社会人ともう一度頭でとなえて、親指を握り込む。
「バイクで、充分だったんで」
「見てわかると思うが、俺達は北高の連中と違ってかなり荒っぽいからな。あんまボサボサしてると、ぶん殴られるから気をつけろよ」
あー、殴られんのはヤダなあ。
殴られたら、つい殴り返してしまう。
「はあ…………、避けたり受け止めていいんすか?」
先輩の鉄拳制裁は必ず受けなさいってのは、確かに気に食わねえな。
殴り返すのは、そりゃマズイだろうけど避けたり受け止めたりなら、まあOKだよな。
「はっ?!オマエね、世間知らずだな。そんじょそこらのおぼっちゃまくんの拳とは違うんだよ。受けたり避けたりできるかよ」
と言いながら、言行一致とばかりに腕をヒュンっと振ってくるので、仕方なくパシッと軽く受け止めてやる。
威力はかなり軽い。
康史のが重いパンチしてると思うくらい。
「出来ますよ。親父以外にあんま、殴られたことねぇっすから」
阪口の顔色が変わって、真っ赤になって二発目を打ってくるので、軽く首を捻ってかわす。
「阪口、やめとけやめとけ。ソイツは苗字は違うが佐倉さんの息子さんだ」
社長と名乗っていた快活な男が、一部始終を見てたらしく、笑いながらその場をいさめる。
そういや、ここは親父のコネだったよなあ。
ふっと入社の経緯をいまさら思い出す、俺も俺である。
親父の名前を聞いて、阪口はビックリした様子で俺を見返した。
親父の七光りとか、柄じゃねえよな。
俺は肩を聳やかせた。
まあ、大手ではなく中小企業だからそんなものだろう。
それになによりスーツってのは、かなり肩が凝るな。
一人づつ自己紹介をしていき、2人で座っていたヤツらは、東高のライバル高の西高だということが分かった。
2人の顔も覚えてないので、喧嘩とかには加担しないタイプかもしれない。
記憶力はいい方だから、人の顔はすぐに覚えられる。
「〇○市立北高出身、長谷川東流です。特には部活動とかしてなかったですが、体力と筋力には自信があるので現場仕事をがんばります」
とりあえず、でかい声を出して自己紹介をして席につく。
体育会系の会社なので、そういうのが好まれるらしい。
オヤジにもデカい声出しておけばなんとかなると言われたしな。
西高のヤツらも、俺の自己紹介を聞いてなにやらチラチラこちらを見てくる。
まあ、確かに北高で就職は珍しいしな。
栗原も似たような自己紹介をする。
温和そうな表情をしているので、あまりヤンキーっぽくはないのだが、それでも東高だしな。
「うわ、緊張したー」
横でほっと胸をなでおろして俺を見上げる。
なんだか見た感じは、なごませ役のようなヤツである。
教育担当の説明と仕事の内容を聞き、それぞれの部署に配属を言い渡された。
俺と栗原は同じドライバー部である。
他の2人は営業部らしい。
式が終わり社員証とかを渡されて、部屋の場所とかを聞いていると、
「あの、聞きたかったんだけど、長谷川君って北高のあの銀髪のハセガワ?」
気後れしたような態度で聞かれて首をかしげる。
あの、ってなんだろう。
「髪の毛?あー、なんかなー、脱色しすぎたら白っぽくなってたかも。なんか、よくわかんねーから、ブリーチかけすぎてた」
返事をかえすと、そっかと半笑いになりながら2人は営業部の方に向っていった。
その横で栗原は腹を抱えて笑っている。
「なーんか、ハセガワって、なんとなく抜け方がシロウと似てる」
「な。なにが?!シロに?えー、俺はあんなに抜けてねえよ」
「なんか何となくだよ。見ていてなんか構いたくなるなー」
「ああ、クリ、名前呼ぶの東流でいいぜ」
俺のつけた呼び名に、また笑いを噛み殺して栗原は頷いた。
「了解、東流。俺もクリで構わないよ。ドライバー同士仲良くしようぜ」
ニヤっと笑って栗原は、俺の背中をパンッと叩いた。
ドライバー部門の教育係の阪口と名乗った。
大体20前後だろうか。すこし歳上で、見た目はかなり屈強そうな身体つきをしている。
周りの社員も似たり寄ったりっていう感じで、俺も含めてケンカとかしたら強いだろうなって思う。
普段ケンカばっかしてると、体つきとか動きを見るだけで、大体の相手の戦闘能力は分かる。
栗原は、康史くらいの力があるなってのはわかるが、頭でケンカする分だけ、康史のが有利かなと思う。
さっき話をしたところ、士龍の派閥のナンバー3だったらしい。
親友だったからと栗原はいったが、弱そうでもない。
「へえ、長谷川は北高なんだ。進学校出て就職とか珍しいな。体育会系な仕事だが、大丈夫かあ?」
阪口さんは少し俺を見下したような態度で、俺の顔を珍しがるようにのぞきこむ。
少し身長は、俺より低い感じだが、大体178くらいか、動きは悪くは無いが、拳は強くはなさそうだ。
腕力はそれほどなさそうだ。
ダンベルとか上げた方がいいだろう。
「あー、はい。体力と筋力には自信あるっすけど。何か問題あるっすか?」
見てくれもきっちり鍛えてるし、栗原よりはガタイもいいし、体育会系がダメな訳がわからず、俺は首を捻る。
「栗原は、東高な。俺も東だから後輩だな。お前の歳だと五十嵐とか知ってるか?」
「あ、はい。かなり世話になりました」
「俺、五十嵐たちの一つ上だからさ。オマエとはすれ違いだったな」
あ、一応高校によって、なんか先輩後輩があるようなとこなんだろうな。
俺の高校は、就職いなかったし体力系にくるような人はいねえし。
そういうコネがなくて、大丈夫かって意味だったかな。
「まずは中型に慣れてもらって、1年かけてから長距離増やして、大型に乗るようになるような感じだけど、運転とか平気か?長谷川は」
「バイクなら……。免許は誕生日遅かったんで、まだ取り立てっすけど」
「やっぱり、北高生はマジメ君なんだな。無免運転するタイプじゃねえよな」
やはり、阪口はなんとなくどこかバカにしたようにガハガハ笑っている。
少しカチンときた。
昔なら、ガッと殴って終了だが、そうもいかない。一応、社会人だしな。
今日から社会人ともう一度頭でとなえて、親指を握り込む。
「バイクで、充分だったんで」
「見てわかると思うが、俺達は北高の連中と違ってかなり荒っぽいからな。あんまボサボサしてると、ぶん殴られるから気をつけろよ」
あー、殴られんのはヤダなあ。
殴られたら、つい殴り返してしまう。
「はあ…………、避けたり受け止めていいんすか?」
先輩の鉄拳制裁は必ず受けなさいってのは、確かに気に食わねえな。
殴り返すのは、そりゃマズイだろうけど避けたり受け止めたりなら、まあOKだよな。
「はっ?!オマエね、世間知らずだな。そんじょそこらのおぼっちゃまくんの拳とは違うんだよ。受けたり避けたりできるかよ」
と言いながら、言行一致とばかりに腕をヒュンっと振ってくるので、仕方なくパシッと軽く受け止めてやる。
威力はかなり軽い。
康史のが重いパンチしてると思うくらい。
「出来ますよ。親父以外にあんま、殴られたことねぇっすから」
阪口の顔色が変わって、真っ赤になって二発目を打ってくるので、軽く首を捻ってかわす。
「阪口、やめとけやめとけ。ソイツは苗字は違うが佐倉さんの息子さんだ」
社長と名乗っていた快活な男が、一部始終を見てたらしく、笑いながらその場をいさめる。
そういや、ここは親父のコネだったよなあ。
ふっと入社の経緯をいまさら思い出す、俺も俺である。
親父の名前を聞いて、阪口はビックリした様子で俺を見返した。
親父の七光りとか、柄じゃねえよな。
俺は肩を聳やかせた。
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