俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

ハッピーバースデー →side Y

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店を出ていつも相手してくれるマヌカンさんに、カッコイイ友達だねと言われて鼻高々になり、店を出る。

服を着替えた東流の横を歩くのは、かなり優越感でいっぱいだ。
鍛えられて長身の身体は少しの隙もなく、染め変えた髪は真っ黒ではないけど、艶やかなアッシュグレーが少しだけ光を返すので目立つ。

いつものコーディネートでも、東流ぽくてカッコイイんだけど、ヤンキー臭というかチンピラ臭が高すぎるから、まあ、周りに絡んでくださいっていってるようなもんだしな。

それに、さっき東流に耳元で囁かれた言葉にオレは浮き足立っている。

足腰立たないくらいにしてほしいとか、なんて大胆な煽り文句だろう。

エレベーターに乗り込み、オレは最上階へと登るボタンを押す。
これから予約した店で夕飯を食べるのだが、ココロはここにあらずな状態になっちまっている。
すごい高級ではないけど、美味しいと評判のいいイタリアンだ。
まあ、東流は質より量のタイプだから、味にはうるさくはないんだけど、最近オレの味に慣れてきたのか、少しだけ舌が肥えてきたかもしれない。

「オシャレっぽい店だな」

首を傾げて振り返り、並んでいる人の脇をくぐり店の中に頭から突っ込んでいく。

ちょ、先に入るなって。

慌ててオレは東流の隣にはいり予約していた日高だと告げる。
店員が、東流を見て少しだけ顔を染めているのが気に入らなく、思わず無駄に笑顔を向けてしまう。
なんなく店員の視線を自分にもってくることに成功して、笑顔で席に案内してもらう。
ホントに自分でもイヤになるくらい、オレは嫉妬深い。
「窓際か、夜景綺麗だな。ヤスが選ぶとこは、雰囲気もいいからな」
上機嫌で椅子に座る東流の表情が高揚しているようだ。
雰囲気といいたかったんだろうな。
「バースデー用のコース頼んだんだ」
「そんなんが、あるのか?」
驚いた表情で目を丸くするが、口許を緩めてありがとなと告げられる。
いつもより、大人っぽく見えて、なんだかオレまでドキドキしてくる。

運ばれてくるコースをそっちのけで、オレは、東流の一挙一動に夢中になっていた。


店を出て、エレベーターに乗り込み、今度は1階に降りるボタンを押す。
かなり食べたので、東流も胃は満足したようだ。
エレベーターの壁に寄りかかり、オレの腕を軽く引いてくる。
人も乗ってないので、もしかして誘われているのだろうか。

「…………ヤス、オマエさ、バイクできたの?」

東流はエレベーターの中で壁にもたれながら、首を傾げる。

「いや、電車で来たよ。トールのタンデム乗せてよ」
東流は、軽く天井を眺めて少しだけ唸ると、ふっと息を吐き出し、
「タンデムな。いーけどよォ、実はさ、結構、今、キてんだよなァ」
僅かに東流の目元が熱を持ってるように見えるのは、多分気の所為じゃないだろう。

全く触ってもないのに、東流はいま欲情してんのか。

クリスマスもそうだったか。エレベーターでキスしただけで、イクくらいになっていた。
今日は、泊まりじゃないし、ここでキスはやめとこう。
こういうシュチュエーションに東流は弱いってことか。
意外だな。

「……じゃあ、オレが運転しようか?」
事故らないだろうけど、何があるかわからない。
それに……オレが運転すれば、行き先の選択権はオレのものだ。
「ン…………わりぃな」
ポケットにゴソゴソと手を突っ込んで、バイクのキーを俺の手に渡す。
「何もしてねーのに、今にもイきそうな顔してるよね、トール」
耳元で囁くと、首筋を赤く染めて東流の強い目で、グッと睨み下ろされる。
本人、睨んでいるつもりはないんだろうけど。
「しょーがねーだろ。…………オマエがニコニコ可愛い顔して横歩くからよ…………っ、……くそ、可愛いすぎんだよ、バカ、早くかえんぞ」
エレベーターが開くと、大股で早足でまるでオレから逃げるように出ていく。

どっちが可愛いんだか。

まあ、東流にとってこの顔が武器になるってのは、ホントにオレにとっては幸運だったんだけどね。

渡されたバイクの鍵をギュッと握る。
行き先の選択権は、これで俺がいただいたってことだな。

東流のせいでこっちもかなりキちまった。近くの公園にでも寄って、ちょっとクールダウンしてくかな。

それとも…………今日の気温はそんなには寒くない。

夜空の中ってのも、悪くないな。とかね。
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