俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

誓い →side Y

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東流突然言い出した言葉を聞いた瞬間に、頭の中で弾けるように沢山の場面が思い浮かんだ。

今までの思い出し方とはまったく違い、走馬灯のような、と、言っても実際走馬灯なんか見たことないんだけど、バラバラとした記憶が全て繋がったのだ。

整理もつかずに、ただオレは目を見開くしかなくて、そのことを東流に伝えたくて記憶にあった俺の答えを返したのだ。

その言葉の意味を東流は理解してくれた。

あの夏休み、オレは東流を自分のものにしたくて、騙して殴った上でスタンガンを使って気絶させた上に拘束して犯した。
それだけでもかなりヒドイ扱いをしたのに、許してくれたことも、風呂場で同じ言葉でプロポーズされたことも、一緒に過ごした初めてのクリスマスのことも、年明けバイクで初日の出を一緒に見たことも蘇ってくる。

それが全部だって保証はないけど、一緒に恋人として過ごした毎日が戻ってくる。
オレも不安だったが、忘れられてしまった東流の方も不安で仕方がなかっただろう。
今日は、あんなプレイもしてしまったから、泣きそうな顔をしていた東流のは気持ちは分かる。

別に子供が欲しくてやったわけじゃないんだけど、東流にしたら、そう感じてしまっても仕方がない。

オレが思い出したことを察して、東流は嬉しそうな笑顔を見せると、思い出したのかと少しだけおそるおそる聞いてくる。
いつもこんな態度をとらない東流だが、そうさせるくらい不安にさせて、俺は最低だな

手を伸ばして東流の頬を撫でる。

「一切合切全部、って言いたいけど、全部だっていえる根拠もない。ただ、夏からの出来事は思い出した」
全部だって言いたいんだけど、どこまでが全部なのかはっきりしない。
ぐっと東流の腕が力強く背中に回る。
「トールのことをあんなふうに責めてたのに、直後にオレが同じ轍を踏むとか、ホントにありえねーよな」
直前の出来事を思い出して詫びると、東流は苦い顔をして抱いた腕に力を込めた。

「なかったことになったんだから、それは蒸し返すんじゃねぇ」
「そうだったな。トールは、本当に優しい」

優しすぎて泣きそうだ。

思い出したすべての記憶の中でいつだって、東流はいつだって俺に優しくあり続けた。

こんなにも、大事な思い出を忘れてしまうなんて、本当にありえない。

東流に捨てられると思い込んだ弱さと、信じ切れてなかった気持ちに、心から詫びたい。

だけど、謝ってどうこうなるわけじゃない。

何があっても、もう忘れない。

痴呆症になるくらい年老いても、これからのことは、どんなに酷いことが起こったとしても、絶対に。

心から、誓う。
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