俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

ペアリング →side Y

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男同士でバレンタイン催事場には行けないなと考えていると、東流は迷わずシルバーアクセの店に入っていく。

まだ、欲しいものとかは考えてなかったんだけどな。
東流は、自分でイイと思ったら突っ走るタイプからな。だいたい人の意見は聞かない。
ちょっとゴツい感じのアクセが多いこの店は、俺の好きなテイストとは少し違う。
まあ、大体東流の好みだよな。

「ペアリングでも買うか?他に欲しいものとかあれば言ってくれていいんだけどさ」
東流らしくもない提案だ。
そういうのしたいとか、あまり考えるタイプじゃないんだけどな。
婚約もしてるらしいし。
記憶がないからその辺はよくわからない。

東流の体には、オレのものだというピアスをつけて俺の所有権を主張しているけど、確かにオレには何もない。

「ペアリング、いいと思うよ」

ショーケースに並んでいる指輪から、シンプルな一文字ラインだけ刻んであるものを選んで手にとる。
トールに選ばせたら、だいたい髑髏とか龍がとぐろ巻いているとかになるから、そこは先手を取らなくては。

ドクロは、オレの趣味じゃないし毎日はつけたくはない。

「イニシャル、彫ってもらうか」

どことなく嬉しそうな東流の顔に、つられてオレも嬉しくなる。
店員を呼んでサイズを出してもらい、イニシャルを告げると、ちょっと好奇心を含んだ視線を投げてくる。
別に、周囲の視線とかあまり気にしないし、多分オレ以上に東流も気にしないだろう。

今日は、東流もオレが選んだらしいシンプルな服を着ているし、髪の色も黒なのでヤンキーには見えない。
背が高く顔立ちは、黙っていれば野生的なイケメンなので、それでも人目はひく。

「クリスマスはディナー行ったんだけど、今日はどうする?」
イニシャルを彫り終わった指輪を受け取った東流は、当然のようにオレの腕を引いた。
いつも以上に東流はオレに優しい。
記憶の中でも、それなりにいつも優しかったけど、その頃とは全然違う。

「ん、メシはファーストフードでいいけど、ホテルには泊まりたい」

期待をこめて見やると、東流は困ったような表情を浮かべて少し視線をさまよわせた。
「分かったけど、あんま、先に言うなよ」
ちょっと怒った風情に首をかしげる。
「嫌?」
「ちげーよ、先に言われっと期待しちまうから、困る」
下半身を気にして、俯向く東流が可愛くて、もっと困らせたい気持ちにかられる。

「あ、オレもトールにあげたいものがある」

オレは東流の腕を引いて百貨店を出ると、繁華街へと向かった。
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