俺たちの××

怜悧(サトシ)

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冬休み編

スパルタ教育 →sideT

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「こんなことも分からないの?3年間何してたんだよ」
容赦なく罵倒されながら、俺は全くわからない問題に取り組んでいる。どうせ、先は就職なんだしテストとかいらねーだろうと思うのだが。
「主に喧嘩かな……」
「素直に答えるなよ。そんなことより……問題の答えをさがせ」
西覇の教え方は確かにうまいのだが、かなり容赦ないのが玉に瑕だよな。

と、言うわけで、康史の家から里帰りして4日目だ。
ベッドは捨てられてしまったので、おふくろに布団を用意してもらった。
かなり、欲求不満もたまっているし。
4日間勉強詰めだし。

「なあ、アニキ。そーいう、エッチしたいみたいなえろい顔してないでよ。顔に出過ぎ」

図星をつかれて、思わず焦ってしまう。
西覇は、ふうとため息を漏らすと、
「まあ、集中力ないならやっても無駄だし、正月はヤッちゃんとこに帰れよ」
もーいくつ寝るとお正月だしな。
そりゃ、帰りたいけどなあ。

「マジか。そんな顔にでてるか」
「そんなに、ヤッちゃんとがいいのか」 
西覇ひ、ため息を吐き出して俺を見やる。

「フェロモン出しすぎ、エロすぎ」

「え、えええ!!」 
俺は西覇の言い草に思わず驚く。
「とりあえず、兄貴の好きな記憶問題だけでも、公式を丸暗記してね。」
「記憶は大丈夫だが、それをどこで使うかがわかんねえよな」
数学の問題は公式の使いばしょがわからんのだ。

「ちっとは、考えろよ……公式なんだから、はめこむ法則があるっての」

その時、ちょうどはかったように、康史からメールが入った。


追試の勉強の最中の康史からのメールは、初日の出がみたいという内容で連絡が入った。
西覇にもさんざん、物欲しそうな顔をしてると言われたが、そんなに顔に出るものか。

大晦日の夜にバイクで康史のマンションまで駆けつけると、すでに康史はエントランスまえでコートを着込んでメットをかぶって待っていた。

「トール、タンデム乗せてよ」
「あァ、構わねえけど……」

康史が自分のバイクを出さないことに違和感を感じながら、タンデムに跨るのを見返すと、ちょっと照れたような表情を浮かべて、
「あのよ。空気挟むのも、焦れったい時があるからさ」
腰に腕を回して、背中にひっつかれるのはスカジャンごしにもなんだか心地よい。軽く体重を預けてくる様子が本当に可愛らしい。

「久々だしな。クリスマス以来だしなあ、でかけんのも」
「そうだね。一週間くらい会ってなかったから、色々溜まってるし、ついでに姫始めもよろしく」

背中で物騒な言葉が聞こえるが、聞こえない振りをしてエンジンをふかす。
溜まってるのは、オマエだけじゃあない。

「ちゃんと掴まってろよ、埠頭がいいよな。日の出だったら」

ぎゅっと腰に回された腕の強さに肯定と受け取り、俺はスロットル全開で走り出す。
毎年初詣では、いつも一緒に露店のある神社とかに行っていたので、日の出を見ようなんて初めてかもしれない。
これから、康史との初めてをイロイロしていこうと言った俺の言葉を律儀に覚えてるのだろう。
背中に当たる康史の心臓の音が心地いい。

海に近寄るほどに強くなる、身体に感じる風圧もなにもかも、今までになく爽快な感じがする。
カーブの多い海岸線を走り、まだまだ暗い闇の中でスピードをあげてスリルを愉しむ。
怖がりはしないが、振り落とされないようにしがみついて力が込められる感覚に心臓が跳ね上がる。

俺だって、会えなかった期間、堪らなかった。慣れない勉強なんざして、苛々は募るし、弟も時間割いてくれてんだと思うとケツまくるわけにはいかない。
会いたくても我慢していたのは、俺も同じだ。
埠頭の手前のガードレール脇に停めて、メットを外して康史を振り返って見やる。

「トール、飛ばし過ぎ。心臓もたねえよ」

ちっともビビってはいなかった癖に、メットを外して唇を尖らせて咎める口調で言うのがまた、可愛い。

「ケーサツにも追われなかったべ。……大丈夫か?」
手を差し出すと、ふっと綺麗な顔を緩めて康史は花が咲くように笑顔を向ける。

「日の出まであと1時間ってとこかな」





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