俺たちの××

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
上 下
108 / 353
二学期編

夜のデート →side Y

しおりを挟む
多分、30分は気を失っていた。

ぐらつく視界を矯正して、ソファーの上にばらばらになったベルトの残骸を眺めて、オレはため息をついた。
東流の行動は短絡的だから、オレには手に取るように分かる。
街に出れば喧嘩に巻き込まれて、暴力沙汰になるのは目に見えているし、かといって友人に頼るような真似はしない。
まあ、友人といっても誠士か東山かどっちかくらいしかいないし、誠士の家に再びいくようなことはないだろうし、東山と連絡先を交換してた様子はないし。

オレが言った西覇に聞いたという言葉から、まずは実家に帰って西覇に話を聞きに行くだろう。

部屋の机の上に無造作に置かれている単車の鍵を見れば、電車で実家に帰っているはずだ。
バイクに乗らないくらいの荷物をもっていったか。
まあ、バイクで実家へ行けば15分くらい。

今から出れば、東流が次の行動をとる前に間に合うはずだ。
飛び出した手前、絶対に意地を張って自分から帰っては来ないはずだから。

さっさと迎えに行こう。

オレは、バイクのメットを腕に抱え、部屋を飛び出した。





なんだかんだいいながらも、迎えにいくと一緒に帰ると言ってくれた。
西覇に、諭されたのもあるだろうが。
東流の実家から出ると、当然のようにタンデムシートに跨って素直に俺を待つ東流の姿に、オレは安堵の息をついた。

ちゃんと戻ってきてくれるということがこころから実感できる。
ガキの頃の約束を律儀に覚えていてくれたのだから、それをないことになんかするような答えは出すはずはなかったのだけど。

心のどこかで不安に思っていた。

「よく、俺がここに帰ったって分かったよな……」
「分かるよ。ずっと一緒にいたし、何考えて、それからどうするかくらい分かる」
シートの下からメットを取り出して手渡し、自分のフルフェイスのメットを被る。
「怒ってるんか」
眉尻を下げて、東流は深く息をつくとメットを被って俺の腰に腕を巻きつけてくる。
逞しい腕にそっと抱き寄せられると、ずっと安心感が増す。
「怒ってるってさっきも言ったよ。でも、トールが戻ってきて嬉しいよ」
「…………悪かった」
低い声で呟くトールに、俺は軽く頷いてエンジンを掛けて発車する。

12月に入って、街の明かりはきらびやかさを増してきている。
キラキラと光るイルミネーションが、流れ星のように風と一緒にとおりすぎていく。 

そうだ……アレを見せよう。

どうせ、情緒という言葉に無縁の東流なのであまり喜ばないだろうとは思うが。
マンションとは逆の街はずれの丘へとバイクを回し、段差をあがりながら一番高いところでバイクを止める。

眼下に広がるのは、キラメキの湖のような綺麗な光の塊。

「……ヤス?」

「あんま興味ねえだろうけど、お気に入りの場所。綺麗だろ?」

オレの言葉に、東流はメットをとってバイクを降りた。

宝石箱みたいだねとか、よく連れてきた女の子には言われたけども。
情緒とはほど遠い、東流の感想はどんなものなのだろう。

「へェ……こんなに夜景ってのは、綺麗なんだなァ。電気がすげえ光ってる」

東流にしては、充分情緒的な言葉に俺は驚いて目を見開いて、メットを外した。

比喩とかは…………やっぱりムリか。宝石箱とか天の川とかそういうロマンティックな言葉は思い浮かばないだろう。
月の光にぱっさぱっさの銀の髪が照りかえって光る。
鉄柵に腕をかけて、眼下を眺める姿は、影が差して一枚の絵のようにすら見える。

「…………トール、落ち着いたのか」

オレと一緒に帰ろうとは思えるくらいには、整理がついたのだろうか。
東流は振り返って俺を見て、ちょっと照れたように鼻の頭をなでて目を伏せる。

「まだ、わかんねえけど、俺、考えるのは下手だ。オマエの傍にいてえ、だからそうする。今までだってそうだったし、してえことすりゃあいいかって思った」
「そっか。オレもトールとずっと一緒にいてえよ」

短絡的だけど、東流らしい答えだ。
いつだって、そうだった。何もかも、自分のしたいようにしか生きられない男。

それが、オレが知っている、長谷川東流という男だ。

オレが惚れた男だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

親父は息子に犯され教師は生徒に犯される!ド淫乱達の放課後

BL
天が裂け地は割れ嵐を呼ぶ! 救いなき男と男の淫乱天国! 男は快楽を求め愛を知り自分を知る。 めくるめく肛の向こうへ。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

制限生活

澄玲 月
BL
R18作品です。ほぼ全部。 監禁だったり、もうすべてエロいことしまくります。

処理中です...