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二学期編
横槍 →side S
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バタバタと激しい物音と共に焦りまくった様子で、玄関からダッシュで康史は寝室のドアを開いて飛び込んでくる。
かかった時間は約20分。予備校は隣の市にあるからチャリをかっとばしてきたのだろう。冬だというのに額に汗がビッシリだ。
平然と帰ってきたら、鍛え上げた空手チョップを入れてたところだ。
「大丈夫か」
ベッドに駆け寄って、心配そうに覗き込む康史に、東流はなんとなく嬉しそうに笑う。
康史は東流が後ろ手に拘束されているのを訝むような顔をして、俺を見上げる。
いや、俺はおまえとは趣味違うから。
「なんか、自分でやってもとまんなくて……。セージに腕くくってもらった」
ここで誤解されたくもないので、横槍を突っ込ませてもらう。
こいつのことだ、そんな美味しい場面自分がやりたかったとかいいだすはずだ。
「おい、康史。東流をぶっ壊してどーしてえの?」
完全にぶっ壊れているわけではないとは思うが、このままじゃ時間の問題だ。
「……そんなにヤバイのか」
「俺が見る限りな。トイレに篭っておなりまくっても発情しまくるとかありえねえ、カラダもあっけど、きっと精神からもきてるぞ」
不安そうな康史の表情に、俺は肩を竦める。
大体、東流のような俺様がマゾになれるわけがないのだ。無理に付き合ってるにすぎない。
元々性も淡白で、AVも康史のうちでしかみないような奴が、そんなモノ続けていったら、壊れるのも当然だ。
「ゴメン。トール」
「ヤスが謝ることじゃねえ。俺が、オマエにぜんぶやるって言った。だから俺の責任だ」
そういうとこが、康史をつけあがらせるんだが、全然わかってないな。
見てられない。
「ったく、二人ともサルでバカなんだから。放っておけないな」
「誠士、怒ってるのか」
いつもと違う俺の態度に康史は、眉を寄せて唇を引き結ぶ。
「そりゃあね。二人の親友として、お前らには幸せになってほしいの。このままじゃ二人ともぶっ壊れるからさ。横槍突っ込むよ」
「……大丈夫、俺は壊れねえ」
むっとした表情で俺に鋭い目を向ける東流に、俺はため息をつく。
「十分壊れてるって。まず、東流は夏休みのアレを負い目に感じすぎ。大体あんな目にあったのは、康史のせいなんだから、オマエに全く負い目はねえの。」
「でもよ……俺が勝手に脅迫に屈したわけだし」
「まず、東流は康史を信じろ。何が起きても、康史はずっと東流が好きだよ。ずっと見てた俺が保障する」
康史は何か言いたそうな様子で俺を見返したが、ちょっと照れた様子で笑って頷いた。
「そんで、康史は、東流を試しすぎ。それと、東流は夏のアレからずっと不安のまんまになってる。」
「……オレ何だかんだ心が狭い男だから……奴等以上の何かを東流に刻みたくて……」
夏の拉致事件があってもなくても変わらなかったかもしれないが、その後の2人の間に俺は少しだけ違和感を感じていた。
「だからだよ。甘いだけのはしてねえだろ」
「……そうかも……」
ちょっと考えて康史は肯いた。
「愛情で満たしてやれば、東流の渇望ってやつも少しは収まるんじゃないか」
お互い愛情を感じてても満たすことはできていない。
根底には夏のできごとが尾をひいているんじゃないか。
「なあ、セージ。カウンセラーも向いてるんじゃないか」
まだ体が辛いのか頭を半分まくらにうめたままで、東流は空気の読めない発言をする。
てか、俺の説教聞いてねえな、こいつ。
東流の態度にイラっとするが、まあ、無理だろうな。
「……っつーか、東流は昔から康史に甘すぎなんだよ」
「そーかな」
へらっとわらう東流にはのれんに腕押しの気分だ。
「大体、殴ってスタンガン使って気絶させて、強姦するような男を簡単に許すか?」
「え、ヤス、スタンガン使ったのか。だよな……ずっとおかしいと思ってたんだよなあ」
怒鳴りたい気持ちを抑えて、ちょっと驚いたような表情でいつもと変わらない笑顔にほっとはするが、うやむやにしようとしてるのか。
「そこじゃないって!!」
「東流は何より康史を失うことを怖がってるんだよ。わかんだろ。あの夜だってそうだった。拒絶が怖くて自分から切り出した」
無理やり話を戻すとぽかんと口を開けた東流のあほっぽい顔にぶちあたる。
「……セージ、俺の心が読めるのか?まさか!!エスパーか」
「オマエは分かり易いんだよ。康史が鈍感なだけ。だから怒ってるの」
「最近、受験で東流を放置してたろ?それも不安要素だし、昨日はたまってた分ヤり通したんだろうけど、体以外のこころの部分ちゃんと埋めてやってねえだろ」
「……うん」
少し考えて康史は肯いた。
どうやら心当たりがあるようだ。
「ったく、恋愛エキスパートの康史も、本命にだけはうまくやれないみたいだな」
俺が重ねていうと、康史はベッドの上に腰をおろして東流の髪を撫でている。
「今日は康史は東流に奉仕してやれ。優しくな」
「わかった…アリガトウ。誠士」
そろそろ、馬に蹴られる前に退散するかな。
「あと、ヤクザに絡まれたってのは、俺がどうにかしとくから、組と名前をメールでくれよ」
「ああ、セージのオヤジってマル暴だっけ。なんて組だったかなー」
思い当たったように、東流は首をかしげて思い返すように天井をみあげる。
記憶力は、東流はいいので大丈夫だろう。
「さて、俺も明日はミカちゃんとデートだし、帰るよ」
「アリガトな。セージ」
2人に見送られて、玄関を出ると合鍵できっちり戸締りをする。
「幸せにやれよ」
俺にとっては二人とも大事な親友だからな。
ふたりが傷つくのは、絶対にみたくない。
かかった時間は約20分。予備校は隣の市にあるからチャリをかっとばしてきたのだろう。冬だというのに額に汗がビッシリだ。
平然と帰ってきたら、鍛え上げた空手チョップを入れてたところだ。
「大丈夫か」
ベッドに駆け寄って、心配そうに覗き込む康史に、東流はなんとなく嬉しそうに笑う。
康史は東流が後ろ手に拘束されているのを訝むような顔をして、俺を見上げる。
いや、俺はおまえとは趣味違うから。
「なんか、自分でやってもとまんなくて……。セージに腕くくってもらった」
ここで誤解されたくもないので、横槍を突っ込ませてもらう。
こいつのことだ、そんな美味しい場面自分がやりたかったとかいいだすはずだ。
「おい、康史。東流をぶっ壊してどーしてえの?」
完全にぶっ壊れているわけではないとは思うが、このままじゃ時間の問題だ。
「……そんなにヤバイのか」
「俺が見る限りな。トイレに篭っておなりまくっても発情しまくるとかありえねえ、カラダもあっけど、きっと精神からもきてるぞ」
不安そうな康史の表情に、俺は肩を竦める。
大体、東流のような俺様がマゾになれるわけがないのだ。無理に付き合ってるにすぎない。
元々性も淡白で、AVも康史のうちでしかみないような奴が、そんなモノ続けていったら、壊れるのも当然だ。
「ゴメン。トール」
「ヤスが謝ることじゃねえ。俺が、オマエにぜんぶやるって言った。だから俺の責任だ」
そういうとこが、康史をつけあがらせるんだが、全然わかってないな。
見てられない。
「ったく、二人ともサルでバカなんだから。放っておけないな」
「誠士、怒ってるのか」
いつもと違う俺の態度に康史は、眉を寄せて唇を引き結ぶ。
「そりゃあね。二人の親友として、お前らには幸せになってほしいの。このままじゃ二人ともぶっ壊れるからさ。横槍突っ込むよ」
「……大丈夫、俺は壊れねえ」
むっとした表情で俺に鋭い目を向ける東流に、俺はため息をつく。
「十分壊れてるって。まず、東流は夏休みのアレを負い目に感じすぎ。大体あんな目にあったのは、康史のせいなんだから、オマエに全く負い目はねえの。」
「でもよ……俺が勝手に脅迫に屈したわけだし」
「まず、東流は康史を信じろ。何が起きても、康史はずっと東流が好きだよ。ずっと見てた俺が保障する」
康史は何か言いたそうな様子で俺を見返したが、ちょっと照れた様子で笑って頷いた。
「そんで、康史は、東流を試しすぎ。それと、東流は夏のアレからずっと不安のまんまになってる。」
「……オレ何だかんだ心が狭い男だから……奴等以上の何かを東流に刻みたくて……」
夏の拉致事件があってもなくても変わらなかったかもしれないが、その後の2人の間に俺は少しだけ違和感を感じていた。
「だからだよ。甘いだけのはしてねえだろ」
「……そうかも……」
ちょっと考えて康史は肯いた。
「愛情で満たしてやれば、東流の渇望ってやつも少しは収まるんじゃないか」
お互い愛情を感じてても満たすことはできていない。
根底には夏のできごとが尾をひいているんじゃないか。
「なあ、セージ。カウンセラーも向いてるんじゃないか」
まだ体が辛いのか頭を半分まくらにうめたままで、東流は空気の読めない発言をする。
てか、俺の説教聞いてねえな、こいつ。
東流の態度にイラっとするが、まあ、無理だろうな。
「……っつーか、東流は昔から康史に甘すぎなんだよ」
「そーかな」
へらっとわらう東流にはのれんに腕押しの気分だ。
「大体、殴ってスタンガン使って気絶させて、強姦するような男を簡単に許すか?」
「え、ヤス、スタンガン使ったのか。だよな……ずっとおかしいと思ってたんだよなあ」
怒鳴りたい気持ちを抑えて、ちょっと驚いたような表情でいつもと変わらない笑顔にほっとはするが、うやむやにしようとしてるのか。
「そこじゃないって!!」
「東流は何より康史を失うことを怖がってるんだよ。わかんだろ。あの夜だってそうだった。拒絶が怖くて自分から切り出した」
無理やり話を戻すとぽかんと口を開けた東流のあほっぽい顔にぶちあたる。
「……セージ、俺の心が読めるのか?まさか!!エスパーか」
「オマエは分かり易いんだよ。康史が鈍感なだけ。だから怒ってるの」
「最近、受験で東流を放置してたろ?それも不安要素だし、昨日はたまってた分ヤり通したんだろうけど、体以外のこころの部分ちゃんと埋めてやってねえだろ」
「……うん」
少し考えて康史は肯いた。
どうやら心当たりがあるようだ。
「ったく、恋愛エキスパートの康史も、本命にだけはうまくやれないみたいだな」
俺が重ねていうと、康史はベッドの上に腰をおろして東流の髪を撫でている。
「今日は康史は東流に奉仕してやれ。優しくな」
「わかった…アリガトウ。誠士」
そろそろ、馬に蹴られる前に退散するかな。
「あと、ヤクザに絡まれたってのは、俺がどうにかしとくから、組と名前をメールでくれよ」
「ああ、セージのオヤジってマル暴だっけ。なんて組だったかなー」
思い当たったように、東流は首をかしげて思い返すように天井をみあげる。
記憶力は、東流はいいので大丈夫だろう。
「さて、俺も明日はミカちゃんとデートだし、帰るよ」
「アリガトな。セージ」
2人に見送られて、玄関を出ると合鍵できっちり戸締りをする。
「幸せにやれよ」
俺にとっては二人とも大事な親友だからな。
ふたりが傷つくのは、絶対にみたくない。
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