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19.レスターの想い1/2

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 メレディス様に自室に呼ばれた時、僕は緊張していた。やっぱり僕には秘書官は無理だと言われるんじゃないかと、とうとう屋敷から出て行けと言われるんじゃないかと、そんなことを考えながら部屋を訪ねた。


 メレディス様も少し硬い表情に見えて、とても怖かったけど、僕は静かに話を聞いた。
 話は僕の父上と兄上の話だった。
 メレディス様が犯罪者の子供である僕のことを調べるのは当然だと思ったけど、父上と兄上の罪が冤罪だと知らされると僕は、ホッとした。

 やっぱり父上も兄上も、間違ったことなんてしていなかった。僕は父上と兄上が処刑されるほどの罪を犯したなんて信じられなかったし、でも一人ぼっちになってしまった時、なぜ罪なんかと、恨みたくなった。

 メレディス様に拾われていなければ、きっと僕は父上と兄上のことを恨んでいたと思う。
 恨みそうになったこともある。
 これから先もオルロー王国には帰れないと思っていたし、僕の出自が知れたら、メレディス様に迷惑がかかるから、秘書官を続けていいのかも迷っていた。
 だから僕は父上と兄上のことを誇ったまま、大好きなままでいられることにホッとしたんだ。
 これで堂々と秘書官ができると。


「家が再興した場合の身の振り方は、君の意思に任せる」

 それなのに、メレディス様はそんなことを言った。僕を抱きしめたのに、キスもしたのに、やっぱり僕のことを追い出すんだと思った。

「え? メレディス様は、僕が国に帰って伯爵家を立て直すことを望んでいるのですか!!!
 僕が邪魔になりましたか!? 僕が仕事ができないからですか!?
 僕は……」

 やっと堂々と秘書官を続けようと思えたところだったのに、どうして!
 僕は感情的に声を荒げてメレディス様を責めるような視線を送ってしまった。
 僕はメレディス様に感謝している。
 メレディス様がいなければ、僕は家も無いしお金が底をついてご飯も食べられず、死んでいたかもしれない。
 それか、ご飯を食べるために身を売ることになったかもしれない。
 だからとても感謝している。僕がこうして生きていられるのも、仕事があるのも、全てメレディス様のおかげ。


 そして、平民に落ちた僕は恐れ多くも、メレディス様を好きになってしまった。
 それは、書斎の書類整理を任された日、ソファーに押し倒されて、少し怖くて、気持ちよくて、全身が震えるようなキスをされた日だと思う。

 その日僕は全然寝れなかった。
 目を閉じると、メレディス様の顔が浮かんで、僕を求めてくる。
 優しく頭を撫でて、体の色々なところに触れて、キスをして、すると僕の股間が硬くなってメレディス様が教えてくれた子種がドロリと出た。
 僕はそこを触ると気持ちいいことを知ってしまった。

 それからメレディス様とは全然顔を合わせることが無くなってしまった。帰りも遅くて、帰ってきていないのかと思ったけど、家令のゼストさんに聞いたら、夜中に戻ってお休みになってから早朝に出勤されていると言われた。
 だから僕にできることをしようと、書斎の書類整理は頑張って1人でやったし、教師のマイストさんと共に魔法陣の勉強をして、メレディス様の部屋のベッドに回復魔法の魔法陣を作って貼らせてもらった。

 ゼストさんにはちゃんと許可をもらってる。安全確認のためにゼストさんのベッドにも魔法陣を貼らせてもらって、実際に体験して了承してもらった。
 よく眠れるとかで、屋敷に住み込みで働いている使用人のベッドには全てその魔法陣を貼ることになった。僕のベッドにも貼ってある。


 僕は寂しくなると、書斎に行ってソファーに寝転んでメレディス様を想う。
 ここでキスをしたんだと思ったら、会えない寂しさも少しは我慢できた。
 それでもやっぱり会いたいし顔を見たい。
 書類の整理が終わっても僕は書斎に通った。

 寂しい……

 
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