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二章
178.リヴェラーニ夫夫の趣味再び
しおりを挟む「ただいま~
マティアス様、ハリオとルカくん上手くいったみたい。ちゃんとルカくんは押し倒すことに成功したみたいだよ」
リヴェラーニ夫夫は王都に戻ったその足でうちに報告に来た。
押し倒すことに成功したんだ……ルカくんすごい。
ってことはハリオが受け入れるって話でことが進んだって思っていいの?
「ハリオも覚悟を決めたってことですか?」
「ん~なんかハリオは自分が受け入れるとか言い出して、だいぶ揉めたらしい。そこは部外者が何か言うところでもないからね」
それはそうですね。どちらになっても二人が納得して幸せならいいんだ。
そしてフェリーチェ様は僕にこそこそと耳打ちした。
「一回してからほぼ毎日ハリオが求めてくるから、体を鍛えておいて良かったって言ってたよ。ふふ」
ほぼ毎日!? 求めてくるってことはハリオが受け入れたわけじゃないのか……
体力をつけたことが役に立ってよかったね。
「それで今日は、私たちが新婚旅行に行った時の再現のストーリーが出来上がったから見てもらおうと思ってね」
……そうだった。リヴェラーニ夫夫の趣味は演劇だった。披露する場がなくてウズウズしていたんだろうか? もしかして、ラビリントに行ったのもハリオとルカくんの様子を見るのはついでで、演劇を見てもらいに行ったのかもしれない。
「分かりました」
シルや手が空いている使用人も呼んで庭でリヴェラーニ夫夫の演劇が始まった。
なんだかとても楽しそうに二人は踊ったり歌ったりしている。川に行って魚を釣って、熊を二人で倒して担いで村まで行って村のみんなと宴会をしたり、星空を見上げながら出会った頃の思い出を語ったり、新婚旅行がとても楽しかったということが分かる。
分かるんだけど、僕たちは一体何を見せられているのかと思ってしまう。そしてとても長いんだ。
「ではこれで、一部を終わります。ちょっと休憩を挟んで、二部を開催するのでお楽しみに!」
え? 二部もあるの? こんなに長いのがまだ続くのか……
いつもニコニコしているリーブも、少し笑顔が引き攣っているように見える。
チェルソは夕飯の仕込みがあるからと言って逃げた。なんかずるい。
そしていいところにイーヴォ隊長が訪れた。
「今日は副団長までいるんだな。シルくんもパンも元気だったか?」
もしかして副団長が急に休みを取った皺寄せはイーヴォ隊長のところにいっているんだろうか? ちょっと疲れた顔をして現れたイーヴォ隊長は、パンを撫で回してシルを抱っこして駆け回ると、ずいぶん穏やかな顔つきになった。
「では俺はそろそろ騎士団に戻る」
「もう少し遊んでいきませんか?」
イーヴォ隊長が帰ろうとしたので僕は引き留めた。さっき来たばかりなのに、こんなに早く帰るなんて、もしかして何かを察した? 逃しませんよ。あなたも道連れです。
イーヴォ隊長をベンチに座らせてレモネードを渡すと、庭に出ていくリヴェラーニ夫夫を見て顔が引き攣った。今更気づいてももう逃げられませんよ。終わったらシルとパンと遊んでいいですから、チェルソの美味しい夕食もつけますから、どうかこの甘いラブストーリーに耐えてください。
イーヴォ隊長は小さくため息をついて覚悟を決めたようだ。隣に座ったミーナと何やらこそこそと話をしている。刺繍の話だろうか? 前にもミーナと話をしていたから、きっと刺繍か、もしくは編み物の話だと思う。
第二部が終わると、リヴェラーニ夫夫はとても満足したように帰っていった。
「この続きはまた今度ね」
まだ続きがあるんだ……もうちょっとコンパクトにまとめてほしいと思うけど、悲しいお話や辛い話ではないだけマシなのかもしれない。自分たちの幸せをみんなにも分けてあげたいってことなんだろうか? 本当に二人は仲良しなんだな。
「イーヴォ、夕食を食べていくのか? 珍しいな」
帰ってきたラルフ様が、夕食の席にイーヴォ隊長がいるのを見つけて話しかけた。
「ああ、軽いストレスを感じてな。マティアスさんとシルくんに誘ってもらったからご馳走になることにした」
「軽いストレス? 団長と副団長の尻拭いのことか?」
「それもあるが、今日は副団長夫夫の演技の場に偶然居合わせてな……」
イーヴォ隊長がそう言うと、ラルフ様は大変だったなとでも言うように、イーヴォ隊長の肩にポンと手を乗せた。
「また近いうちに騎士団に召集がかかるんだろうが、俺は逃げる」
「ああ、それがいい。今回は二部でもまだ終わらない。延々と演技とダンスを見せられた結婚披露宴を思い出す」
イーヴォ隊長がため息混じりにそう言った。
リヴェラーニ夫夫の結婚披露宴はそんなにすごかったんだ……怖いもの見たさという意味で少し見てみたい気もする。
「ママ、これおいしい」
「じゃあ僕も食べてみようかな」
シルが肉団子を美味しい美味しいと言って食べている。
ラルフ様とイーヴォ隊長が、進展はどうだとか話しているのがちょっと気になったけど、仕事の話かもしれない。仕事の話だったら僕は全然分からないから聞いても仕方ないし、シルと一緒に肉団子を堪能した。
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