僕の過保護な旦那様

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二章

177.ラビリントからの手紙

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「マティアス、鍛えたいのなら俺が鍛えてやる」
 こっそりリヴェラーニ夫夫に弟子入りしようと思ったのに、弟子入りすることなくラルフ様に阻まれてしまった。なんで分かったの?
 ラルフ様は副団長に対抗心を燃やしているから、その辺りで何か勘付かれたんだろうか?

 そして僕は今、筋肉痛で体が悲鳴をあげている。庭を散歩したり櫓の往復をしたり、少しスクワットをするくらいでは足りなかったらしい。
 ルカくん、半年もこんな訓練続けていたなんてすごいよ。しかも僕は僕に甘いラルフ様に鍛えてもらっているけど、ルカくんは加減を知らなそうなリヴェラーニ夫夫に鍛えてもらってたんだよね? 尊敬するよ。

 そんなルカくんからとうとう手紙が届いた。
『マティアスさん、みなさん、手紙を出すのが遅くなりました。僕たちは元気です。やっとラビリントの生活にも慣れてきました。今は二人で家を借りて住んでいます。冬には帰ります。
 ルカ』
 二人で住んでるってことは上手くいったってことだよね? よかった。

 そしてシル宛にハリオからの手紙も届いた。
「シル、何が書いてあったの?」
「エイドリアンがくろいのとあえたってかいてあった!」
 うん、そのエイドリアンって誰だっけ? 僕も頑張って思い出そうとしたんだけど、思い出せなかった。それでクロイノってのも誰だ?

「エイドリアンって誰? 研究者の人?」
「ちがうよ、ポポのかぞくだよ。ハリオにあげたの」
 そうだったのか。じゃあ僕がどんなに考えても分からないわけだ。
「クロイノは?」
「ママがいっぱいつくって、きしにあげたやつ。ハリオがルカくんにわたしてって」
 ん? 『クロイノ』も人ではなく、もしかしてポポ軍団つや消しブラック? 『黒いの』って言ったのか……

 ってことは、ルカくんが持っていたポポ軍団つや消しブラックはリヴェラーニ夫夫が渡したわけではなく、シル経由でハリオからルカくんに渡ったのか。
 リヴェラーニ夫夫、あらぬ疑いをかけてすみません。

 シルは森でリヴェラーニ夫夫が再現してくれた演技を見て、エイドリアンにクッキーの絵を描いたそうだ。
 二人とも離れてる時でもポポ一族を通じてお互いを想っていたのか。まさかチンアナゴがハリオとルカくんを繋げていたなんて。とうとうポポは人の恋愛にまで入り込んでくるようになった。
 恐ろしいことだ。


「えー? 何これ、二人で住んでいるってことは上手くいったのかもしれないけど、ハリオを押し倒せたのかが書いてない」
 フェリーチェ様にもルカくんから届いた手紙を見せてあげたんだけど、そんな感想だった。そうだけど、僕もそこはちょっと気になるけど、手紙に押し倒しましたとは書けないと思う。

「心配だし確認してくる!」
 そう言うと、フェリーチェ様は副団長を呼んで二人で馬に乗って出掛けてしまった。まさか今からラビリントに行く気ですか?

 引き止める間もなく行ってしまい、一人取り残された僕は庭に向かった。
 庭のガゼボではシルとエルマー様がレモネードを飲んでいる。そうだ今日はエルマー様が来る日だった。
 二人の間でどんな会話がされているのか気になる。だけど余計なことをすれば僕まで取り込まれそうで、迂闊にエルマー様に近づくことはできない。

「マティアス様もレモネードを召し上がりますか?」
 いつの間にか隣にいたリーブの言葉に僕は驚いてビクッとしてしまった。僕はラルフ様たちと違って気配を探ったりはできないから、許してほしい。
「うん。レモネード、もらおうかな」

 ああ、暑い日に飲む冷たいレモネードは美味しいな。
 空は青いし、風は心地いいし、これで筋肉痛がなければ、とてもいい日なんだけどな。

「リーブ、グラートと二人で出掛けたい時はは休みを取ってもいいんだからね」
「ありがとうございます。時々二人で出掛けておりますが、泊まりで出掛ける時はお休みをいただくかもしれません」
 いつ二人で出掛けてたの? 全然気付かなかった。リーブは優秀だから、仕事なんてササッと終わらせて、グラートとの時間を作っていたのかもしれない。
 二人でどんなところに行くんだろう? まさかデートの時も執事服で行くの? そんなわけないか……

「リーブはグラートとどこにお出掛けするの?」
「森が多いですね」
「そうなんだ? 森でデートいいね」
 そっか。二人で馬に乗って出掛けて、森を散策してサンドイッチでも食べながらのんびりするのかな? なんか素敵なデートだ。

「デートと呼べるかは分かりませんが、たまに二人で森に出掛けています」
「サンドイッチ持ってピクニックは立派なデートだよ」
「サンドイッチ? では次回はサンドイッチを持って行ってみます。きっと彼も喜ぶでしょう」
 サンドイッチは持って行かないのか。もしかして狩りをして食べたりしていたんだろうか? サバイバルデートだ。

 
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