179 / 184
二章
177.ラビリントからの手紙
しおりを挟む「マティアス、鍛えたいのなら俺が鍛えてやる」
こっそりリヴェラーニ夫夫に弟子入りしようと思ったのに、弟子入りすることなくラルフ様に阻まれてしまった。なんで分かったの?
ラルフ様は副団長に対抗心を燃やしているから、その辺りで何か勘付かれたんだろうか?
そして僕は今、筋肉痛で体が悲鳴をあげている。庭を散歩したり櫓の往復をしたり、少しスクワットをするくらいでは足りなかったらしい。
ルカくん、半年もこんな訓練続けていたなんてすごいよ。しかも僕は僕に甘いラルフ様に鍛えてもらっているけど、ルカくんは加減を知らなそうなリヴェラーニ夫夫に鍛えてもらってたんだよね? 尊敬するよ。
そんなルカくんからとうとう手紙が届いた。
『マティアスさん、みなさん、手紙を出すのが遅くなりました。僕たちは元気です。やっとラビリントの生活にも慣れてきました。今は二人で家を借りて住んでいます。冬には帰ります。
ルカ』
二人で住んでるってことは上手くいったってことだよね? よかった。
そしてシル宛にハリオからの手紙も届いた。
「シル、何が書いてあったの?」
「エイドリアンがくろいのとあえたってかいてあった!」
うん、そのエイドリアンって誰だっけ? 僕も頑張って思い出そうとしたんだけど、思い出せなかった。それでクロイノってのも誰だ?
「エイドリアンって誰? 研究者の人?」
「ちがうよ、ポポのかぞくだよ。ハリオにあげたの」
そうだったのか。じゃあ僕がどんなに考えても分からないわけだ。
「クロイノは?」
「ママがいっぱいつくって、きしにあげたやつ。ハリオがルカくんにわたしてって」
ん? 『クロイノ』も人ではなく、もしかしてポポ軍団つや消しブラック? 『黒いの』って言ったのか……
ってことは、ルカくんが持っていたポポ軍団つや消しブラックはリヴェラーニ夫夫が渡したわけではなく、シル経由でハリオからルカくんに渡ったのか。
リヴェラーニ夫夫、あらぬ疑いをかけてすみません。
シルは森でリヴェラーニ夫夫が再現してくれた演技を見て、エイドリアンにクッキーの絵を描いたそうだ。
二人とも離れてる時でもポポ一族を通じてお互いを想っていたのか。まさかチンアナゴがハリオとルカくんを繋げていたなんて。とうとうポポは人の恋愛にまで入り込んでくるようになった。
恐ろしいことだ。
「えー? 何これ、二人で住んでいるってことは上手くいったのかもしれないけど、ハリオを押し倒せたのかが書いてない」
フェリーチェ様にもルカくんから届いた手紙を見せてあげたんだけど、そんな感想だった。そうだけど、僕もそこはちょっと気になるけど、手紙に押し倒しましたとは書けないと思う。
「心配だし確認してくる!」
そう言うと、フェリーチェ様は副団長を呼んで二人で馬に乗って出掛けてしまった。まさか今からラビリントに行く気ですか?
引き止める間もなく行ってしまい、一人取り残された僕は庭に向かった。
庭のガゼボではシルとエルマー様がレモネードを飲んでいる。そうだ今日はエルマー様が来る日だった。
二人の間でどんな会話がされているのか気になる。だけど余計なことをすれば僕まで取り込まれそうで、迂闊にエルマー様に近づくことはできない。
「マティアス様もレモネードを召し上がりますか?」
いつの間にか隣にいたリーブの言葉に僕は驚いてビクッとしてしまった。僕はラルフ様たちと違って気配を探ったりはできないから、許してほしい。
「うん。レモネード、もらおうかな」
ああ、暑い日に飲む冷たいレモネードは美味しいな。
空は青いし、風は心地いいし、これで筋肉痛がなければ、とてもいい日なんだけどな。
「リーブ、グラートと二人で出掛けたい時はは休みを取ってもいいんだからね」
「ありがとうございます。時々二人で出掛けておりますが、泊まりで出掛ける時はお休みをいただくかもしれません」
いつ二人で出掛けてたの? 全然気付かなかった。リーブは優秀だから、仕事なんてササッと終わらせて、グラートとの時間を作っていたのかもしれない。
二人でどんなところに行くんだろう? まさかデートの時も執事服で行くの? そんなわけないか……
「リーブはグラートとどこにお出掛けするの?」
「森が多いですね」
「そうなんだ? 森でデートいいね」
そっか。二人で馬に乗って出掛けて、森を散策してサンドイッチでも食べながらのんびりするのかな? なんか素敵なデートだ。
「デートと呼べるかは分かりませんが、たまに二人で森に出掛けています」
「サンドイッチ持ってピクニックは立派なデートだよ」
「サンドイッチ? では次回はサンドイッチを持って行ってみます。きっと彼も喜ぶでしょう」
サンドイッチは持って行かないのか。もしかして狩りをして食べたりしていたんだろうか? サバイバルデートだ。
304
お気に入りに追加
1,268
あなたにおすすめの小説
婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました
花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。
クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。
そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。
いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。
数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。
✴︎感想誠にありがとうございます❗️
✴︎(承認不要の方)ご指摘ありがとうございます。第一王子のミスでした💦
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる