僕の過保護な旦那様

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二章

164.お泊まり会

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 櫓お泊まり会の開催だ。
 今日はリヴェラーニ夫夫の貸切。
 明日は僕たち家族三人で櫓の上にお泊まり、その次はルカくんとハリオの予定だ。

 夕食はリヴェラーニ夫夫を迎えて大人数だ。
 そろそろ食堂のテーブルと椅子も、みんなで食事をするには狭くなってきた。
 今までは使用人は別で食べてもらっていたけど、みんなで食べればいいと思う。
 人数が増えて配膳も大変だし、騎士団の寮みたいに、自分で好きなだけ料理をお皿に盛り付けて席に持っていって食べるって感じでもいいんじゃないかな?

 後でラルフ様に相談してみよう。
 これ以上人が増える可能性は……
 チェルソとメイド三人と、謎多きルーベンが恋人を連れてくるって可能性もないとは言えない。

 シルはいつもはいないお客さんがいるからか、楽しそうに食事をしている。食堂にまでイーヴォ隊長からもらったクッションを持参して、副団長に見せていた。

「じゃあ櫓借りるね~」
「危険があれば知らせる」
 リヴェラーニ夫夫が櫓へ向かったんだけど、副団長が言った「危険があれば知らせる」って何?
 まさか王都に危険が迫っているとかじゃないですよね?
 戦争が始まるとか……

「ラルフ様、危険が迫っているんですか?」
「常に危険はすぐそこにある」
 そうじゃなくて……

 危険があるのかと考えると、僕は不安で眠れなくなってしまった。
 もしまたラルフ様が戦争に行ってしまったらどうしようと考えたら、怖くなったんだ。
「マティアス、眠れないのか?」
「戦争が始まったら、ラルフ様は戦争に行ってしまうんですか?」
「戦争? そのような話は今のところない」
「そっか」
 そうなんだ……
 戦争はないのか。じゃあ危険ってのはなんだろう?

「大丈夫だ。俺がついている」
 ラルフ様は僕のことをギュッと抱きしめて背中をトントンしてくれた。
 なんだろうこの安心感。ラルフ様がいれば怖くない。そう思ったら、さっきまで全然眠れなかったのが嘘みたいに僕は安心して眠りについた。

 翌朝、食堂に集まってみんなで朝食をいただいたけど、リヴェラーニ夫夫からは特に何の報告もなかった。
「フェリーチェ様、危険はなかったんですね」
「ん? 危険なんてなかったよ。星綺麗だった。櫓いいね。また使わせてね」
 危険はなかったのか。それなら安心だ。

 今日の夜は僕たち三人が櫓で星を見る。
「ママこれかしてあげる」
 僕はなぜかシルにピエールを渡された。
 久しぶりだなピエール。相変わらず胴体に描かれた蔓の模様は綺麗だ。うん、握り心地もいい。じゃなくて、なぜシルは僕にピエールを貸してくれたんだろう?
 僕は理由に悩みながらシルとラルフ様と並んで星を見ながら眠りについた。

「ルカくん、バニラの香りがいい? それともベルガモット? ローズってのもいいよね」
「えっと……」
 やっぱりいい雰囲気を作らないとね。僕は色々なキャンドルをルカくんの前に置いて、どれがいいか聞いた。
 ルカくんが選んだのはバニラの香りだった。やっぱりそれを選ぶと思ってたよ。お菓子屋さんだったルカくんとハリオの思い出としてバニラは最適かなって思ったんだ。
 昼間のうちにルカくんとフェリーチェ様と一緒に櫓の上をちょっとお洒落に飾りつけた。上手くいくといいな。

 甘い香りとキャンドルのゆらめく炎、空には星が見えていて、少し寒いから寄り添って一緒にブランケットに入ったりして。そうなったらもうね、恋人なんだから成功すること間違いなしだと思う。

「ルカくん、頑張ってね」
「不安です。でもお二人にはいろいろ協力してもらったので頑張ってみようと思います」
 ルカくんは気合を入れたようなキリッとした表情を見せた。

「マティアス、ソワソワしてどうした?」
 ラルフ様に指摘されるほど、僕は二人のことが気になっていた。でも僕は上手くいくよう祈ることしかできない。
「ルカくんとハリオが上手くいくといいなって思ってたんです」
「そうだな。マティアス、俺のことも見てくれ」
 ラルフ様、また独り占めしたくなっちゃったんですか?
「いつも見てますよ。キスして?」
 今日は僕もラルフ様に愛されたい気分です。

 あっという間に僕は裸でベッドに横たわっていた。ラルフ様は僕のことよく分かってる。
 それに僕の気持ちにいつも答えてくれる。ルカくんを見ていると、それは当たり前じゃないんだと分かる。
「ラルフ様、大好きです」
「俺もマティアスが大好きだ」
 何度キスしても、唇が重なる瞬間は少しだけ緊張する。それでラルフ様の唇の柔らかさと温かさを感じると、いつもと同じ感触と温度に安心するんだ。
 幸せの余韻に浸ったまま、僕は今日もラルフ様の腕の中で眠りについた。


 ラルフ様に愛された幸せいっぱいの朝、食堂にはルカくんしか来なかった。ハリオは一体どこに行ったのか。早く出勤する日だったのかな?
 それよりもルカくんの様子がおかしい。幸せいっぱいには見えない。それどころか……
「ルカくん、そのクマどうしたの?」
 ルカくんの目の下にはくっきりとクマが現れていて、なんだか暗い影がさしている。

「マティアスさん……失敗しました。もう無理かも」
「眠れなかったんだね。うん、話は聞くから、温かい野菜スープを飲んで、暖炉に火も入れて、温かい部屋でゆっくり話そうか」
「はい……」
 失敗? ってルカくんは言えなかったんだろうか? それともハリオが断ったんだろうか?
 とにかく話を聞いてみないと。

 フェリーチェ様もルカくんのことが心配だったのか、今日は早くうちに来た。
「カモミールのお茶を持ってきたよ。蜂蜜を入れて飲もう」
「フェリーチェ様、ありがとうございます」
 ミーナにお茶を入れてもらって、暖炉の前に三人で集まってルカくんの話を聞いた。

 ルカくんは勇気を出した。それなのにハリオはまた断ったそうだ。ハリオ、何を考えてるの?
「……もう無理かも」
「ねえ、ハリオって本当に不能なんじゃないの? それを知られたくなくて理由をつけて断ってるとか」
 フェリーチェ様が言ったけど、それならキスさえしない理由にはならない。キスくらいしてもいいんじゃない?
 キスで相手の体に負担をかけるなんてことないと思うんだ。

 もし僕がルカくんの立場だったら、ラルフ様にキスもしてもらえなかったら、勇気を出してキスして欲しいと言っても断られたら。
 一度あったな。あの時はラルフ様が僕を避けて、悲しくて苦しくてたまらなかった。結局僕に病気を移さないためだったんだけどさ。

 夕方になってもルカくんは落ち込んだままだった。
 帰り際、フェリーチェ様に「危ないかも」なんて深刻な顔で言われたから、僕はハリオと話をしてみることにした。

「ラルフ様、ハリオの次の休みはいつですか?」
「三日後だが、何をするつもりだ?」
「ハリオと話をしてみようと思います。このままではルカくんが可哀想です」
 僕がルカくんとハリオのことを話すと、ラルフ様は難しい顔をして腕を組んでいた。ラルフ様も気になってたのかな?

「尋問は三日後の午後だとあいつに伝えておく。聞き分けが悪いようならチンアナゴで殴っていい」
 え!? 尋問でもないし殴ったりはしないけど……
「分かりました」
 こうして三日後の午後にハリオとの尋問──ではなく面談が決まった。

 
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