僕の過保護な旦那様

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二章

35.うし…… ※

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 ラルフ様はずっと僕のことを守ってくれると言ったけど、僕も守りたい。敵の攻撃から守ることはできないけど、心の支えにはなりたいです。

「マティアス、いいか?」
 そんなこと聞かなくていいのに。
 我慢できないと訴えるような熱の籠った目で見つめられると、僕だって期待してしまう。背中がゾクリとして、腹の中が早く早くと強請ってくる。

「早くキスして?」
 唇が重なって、いつものように僕はラルフ様の早技によってすぐに裸にされた。
 左手で頭頂部の髪をそっと撫でられて、髪越しにもほんのりラルフ様の熱が伝わってくる。温かくて気持ちいいって思いながら、ラルフ様の首に腕を回すと、ビクッとされたけど、僕は構わず腕に力を込めた。
 この反応も、生きて帰るために、僕との未来のために身につけたことなんだと思ったら、今までのこと全部が愛しく思えた。

「ラルフ様、たくさん僕を愛して下さい」
「分かった」

 今日は加減なんてしないで僕を求めてほしい。ラルフ様に全て奪われたい気分なんだ。

 僕の薄い胸をラルフ様の少し硬い指がなぞって、僕の乳首にそっと触れた。
「マティアス、気持ちいいか?」
「あっ……」
「これはどうだ?」
 指先で弾くように触りながらそんなことを聞いてくる。いつもそんなこと聞いてこないのになんで?
「んん……気持ちいい、です」

「これはどうだ?」
 今度は二本の指で摘んでクニクニと揉んでいる。ピリピリとした快感が襲ってきて、呼吸が早くなる。
「……気持ちいい、です。ああ……」

 色んなところにそっと触れて、舌を這わせたり、チュウッと吸ったり、甘噛みしたり、いちいち触り方を変える度にジッと見つめられて、気持ちいいかを聞いてくるから、気持ちいいけど疑問が湧いて全然集中できなくなってきた。

「ラルフ様、待って」
 今日はラルフ様に全て奪われたい気分だったのに、まどろっこしく確認ばかりでなかなか進まない行為に、とうとう僕は耐えられなくなって、ラルフ様に待ったをかけた。今度は何を考えているのか。

「なんだ? 足りなかったか? 気に入らなかったか?」
「なんですか? なんでそんなにいちいち気持ちいいか聞いてくるんですか?」
「マティアスの気持ちいいところが知りたい。聞きたいことがあれば、憶測だけで行動せず、やはり本人に聞いた方がいいと思い至った」

 それは僕が戦争に行った理由を聞いたことと関係あるんだろうか?
 なぜ突然そんなことを始めたのか僕には分からない。ラルフ様は僕の性感帯を既に把握してるじゃないか。いつも弱いところばかり攻めて、僕のこと声が枯れるまで啼かせたりするくせに、今更何がしたいのか全然分からないよ。

「僕はラルフ様に抱かれる時に不満なんてありません。いつも優しく愛してくれるから幸せだし、いつも気持ちいい。変なことしないでいつも通り愛して下さい」
「そうか。そう簡単に答えを教えてはもらえないんだな。頑張ってみる」
 なんでそうなる? 僕はちゃんと答えたよね? なぜ伝わらないんだろう?
 変なところでやる気を見せたラルフ様に、ちょっと不安になったけど、こんなところで止められては困る。そんなことより僕は早く愛されたい。

 僕はこの時、本当にラルフ様のことを分かっていなかったんだ。もっとこの時に話し合うべきだったと、のちに反省することになる。

「早くきて、ねえ、焦らさないで」
「まだダメだ。しっかり解さないとな」

 久しぶりだと分かってるから、ラルフ様はしつこいくらいにしっかりと僕の後ろを解してくれた。それまでにも散々啼かされて、指が抜かれると僕はやっと一息つくことができた。
 ラルフ様は優しい。ラルフ様のは大きいけど、痛みを感じたことはない。それはラルフ様がいつも僕を気遣って痛くないようにしてくれるからだ。たぶん。

「ラルフ様、大好きです」
「マティアス……煽るな」

 僕は膝を抱えて、上体を起こしたラルフ様を眺める。少し汗ばんだ体がキャンドルの光に照らされて綺麗だと思った。淡い灯りが鍛えられた筋肉の凹凸に光と影をもたらして、絵画みたいだ。
 ヌルヌルとオイルを塗られたラルフ様がジュプッと僕の中に入ってきて、ゆっくりと奥まで進んでくる。本当は無理にでも結腸までグイッとこじ開けて入り込みたいところを、ラルフ様は僕の中の受入れ準備が整うまで優しく動いて我慢してる。
 煽るなって言われても、今伝えたい。

「好き。キスして」
 ラルフ様は角度を変えて触れるだけのキスを何度も繰り返して、散々焦らすと、やっと舌を潜り込ませてきた。強請るようにラルフ様の唇に吸い付くと、落ち着けとでも言うように髪を撫でられる。

「んんっ……」
 グイッと奥の奥までラルフ様が入ってきて、そのまま動きを止めた。腰の動きは止めたまま、僕を抱き起こしてギュッと抱きしめている。汗ばんで少し冷えたラルフ様の胸が気持ちいい。

「ずっとこうしていたい」
「いいですよ」
 ラルフ様の熱と香りに酔っていた。ラルフ様と一つになって、ゆっくりお風呂に浸かっているような気分。熱をぶつけられるような快楽もいいけど、こうした温かく緩やかな快楽も悪くない。
 動かなくても、一滴ずつ快楽を足されていくみたいに、少しずつ快楽が高まっていく。

 でもだんだんその優しい快楽だけでは足りなくなってくる。もっと高みに上りつめたくて、自分からゆっくりと腰を動かしてみる。
「んん……はぁ……」
「マティアス……我慢できなくなる」
「我慢なんてしなくていいですよ」
「無理させてしまう」
「いいんです。ラルフ様の全てを受け止めたい。ねえ、動いて?」

 ラルフ様の喉がゴクリと音をたてると、ラルフ様の腕が緩んで、僕の自重だけでまた奥深くまで飲み込んだ。
「ああっ、ふかい……」

 やっぱり僕は大胆かもしれないと自分で自覚しかけたんだけど、ラルフ様の下からの突き上げが始まると、快楽によって思考は溶けてどこかに消えていった。
 意識が飛びそうになるのを必死に堪えて、震える手でラルフ様にしがみつく。

「あっ、だめ……やっ……」
「やめるか?」
 喘ぐばかりでまともに話せない僕は、やめないでと首を横に振ってラルフ様の腰に足を巻きつける。

「いいんだな?」
 そんなこと聞かないで。きつくても止めてほしくない。僕の頬に触れたラルフ様の左手を両手で掴んで、うんうんと頷いた。いつも伝わらないもどかしさを込めて、ガジガジとラルフ様の指先を甘噛みしていたら、ラルフ様は僕の右手をとって指を口に含んでベロリと舐めた。

「うし……」
「牛でいい。マティアスに愛されるなら」
 僕もおかしくなってたけど、ラルフ様もおかしくなってた。僕たちにしか分からないけど、それがいい。少し笑い合って、またお互いを激しく求めた。


 次の日起きると、やっぱり僕の腰は終わってた。でも加減されずにラルフ様に愛された証みたいで、腰の痛みさえ嬉しかった。
 ん? 加減、されてないんだよね? 加減されてこれってことないよね?


 
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