僕の過保護な旦那様

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一章

13.最高らしい ※

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「マティアス……」
 僕がベッドから降りて歩いていくと、ラルフ様は一瞬で僕を攫って、気づいたらベッドの上に裸で横たわっていた。何その早技。移動だけじゃなくて脱がせるのも早いとかどうなってるの?
 それって戦争で生き残るために必要な技術じゃないよね?

「ラルフ様、僕が愛してるのはラルフ様だけですよ」
「キスしていいか?」
「早く、して?」

 僕がねだるように言うと、ラルフ様は僕に覆い被さってきた。それなのに僕には一切体重をかけず、頬にそっと触れた。
 目を閉じると柔らかい唇が重なる。でもすぐに離れた。目を閉じて待っているのに、二度目は全然下りてこない。

「どうしたんですか?」
「もう一度してもいいか?」
「いいですよ。何度でも好きなだけしてください」
 何度でも好きなだけって言ったのは僕だけど、それを後悔するくらい唇に、顔中に、全身にキスをされた。

「んんっ……」
「嫌だったか?」
「嫌じゃないですよ」

 僕の体にも恐る恐るといった感じでそっと触れて、僕がピクリと反応してしまう度に、「嫌か?」「大丈夫か?」なんて聞いてくるから、焦ったくなってくる。
 この前はもっとガツガツきたんだよね? 僕が腰を痛めるくらい激しく求めたんだよね? やっぱりラルフ様も媚薬に当てられてそんなことになってたのかな?

「ここには触れてもいいか?」
「いいですよ」

 ラルフ様の分厚い胸板と違って、薄くて貧弱な僕の胸なんて触っても楽しくないと思うけど……
 どこもかしこも、そっと触れるから、優しすぎる刺激がもどかしい。快楽を求めて気持ちだけが焦っていく。僕ってもしかして淫乱なんだろうか?

「俺の手は硬いから、不快じゃないか?」
「そんなことないですよ」

 早く。もっと刺激がほしい。そんな触り方じゃ足りない。お願い、もっと……
 ラルフ様の触れ方は全部物足りなかった。無理させないよう大切に扱ってくれているのは分かるんだけど、足りないんだ。僕の体は、前に抱かれた時のことを覚えてる。だからこんなのじゃ足りない。

「ラルフ様、前みたいに僕を求めてください」
「しかし……」
「ねぇ、お願い」

 蕩けるように僕を見下ろすラルフ様の目が、どんどん熱を帯びていく。さっきとは違う、僕を求めるその目にゾクッとした。
 それでもラルフ様は我慢しているのか僕に丁寧に触れていく。もうそんなにしなくていいよってくらい、後ろを優しく優しく解された。
「気持ちいいところ触っていいか?」
「いいですよ」
 気持ちいいところ? 気持ちいいって、僕が? それともラルフ様が?

「ああっ……」
 ヤバイ。何今の。ラルフ様が触れたのは一瞬だったのに、チカチカ星が瞬いて、気持ちいいのか、苦しいのか分からなかった。

「嫌だったか?」
 もう、なんでそんなこと聞くの? ラルフ様は手を止めて、心配そうに僕の顔を覗き込んでる。さっきまでの物足りない刺激から一変して、鋭すぎる刺激。緩急が凄すぎて、僕は本当におかしくなりそうだよ。
「嫌じゃないです」
「気持ちいいか?」
「……はい」
 恥ずかしい。全裸を見られてるし、乱れる姿も見られているのに、気持ちいいと伝えるのはそれ以上に恥ずかしかった。

「あっ、やっ……」
「嫌だったか?」
 違うのに、いちいち止まって確認しなくていいのに、僕の喉から嬌声が漏れてしまう度にラルフ様は手を止めて、僕を心配そうに見つめる。
 これ、蛇の生殺しってやつなんじゃないの? 途中で何度も何度も止められて、僕はとうとう泣いた。

「やだぁ、バカ。気持ちいいからやめてほしくないのに、ひどい。ラルフのバカ。バカバカ。やめないでよ……」
「ごめん」
 謝ってほしいわけじゃない。羞恥心ともどかしさの狭間で、本当に頭がおかしくなるかと思った。
 でも、やめたらダメなんだとラルフ様は学習したらしい。

「あっ……」
 今度は僕が息継ぎできないくらいに攻め立ててきた。加減……

「ラルフさま、きて、ねぇ、きて」
 このままではラルフ様を受け入れる前に窒息すると思った。
 だから早く。ラルフ様は僕の気持ちを汲んでくれないし、手加減を知らないし、僕は僕で我儘だし、もうどうしようもない。

 僕のお尻が目一杯開かれて、硬いものが腸壁を押し除けながら奥へとゆっくり進んでくる。
 熱い。苦しい。でも、やっと一つになれた。

「ラルフ様、もう全部入った?」
「まだ全然だ。苦しいか? もう今日はここでやめておくか?」
 ラルフ様は全然分かってない。優しすぎるのも罪なのかもしれないと思った。
「全部きて。やめないで」

「マティアス、奥まできた気がする」
「うん?」
「全部は入らないみたいだ」
 そんな……
 どうすればいい? 鍛えて腸は伸びるものなの? 鍛えるってどこを? 筋肉じゃあるまいしそんなの無理じゃない?

「腰の負担にならないようゆっくりするから」
「ん、ありがとう」
 たぶん本当にゆっくりしてくれてる。でもトントンッと奥を突かれる度に、体が痺れるような快感が襲ってきてちょっと怖い。吐息に混じってあぁって声が勝手に漏れてしまう。

「マティアス、大丈夫か?」
「ん。ひっ……」
 なんか今、そんなとこ入っちゃダメなんじゃないかって思うようなところに、ラルフ様がグンッと入ってきた。

「マティアス、なんか分からんが全部入った」
「あ、あぁ……」
 ダメかもしれない。奥の奥まで入ってきて、グポッグポッって出し入れされると、意識が飛びそうになる。

「ラル、さま、幸せ? ……きもち、いい?」
「あぁ、最高だよ。幸せだ」
「ん。よかった。僕も……です」

  
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