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 2日後、ジルベルトとカリオを乗せた馬車が王城を出発した。
 王族であるジルベルトの移送ということで、周りには近衛騎士たちが乗る馬が囲んでの移動となる。
 馬車に初めて乗るカリオは緊張した様子を見せていたが、王都を出る頃になると、やっと落ち着いてきたようだ。

 馬車で3時間ほど東へ移動した小さな街の一番端。森のすぐ手前にある薄いグリーンの屋根が可愛い屋敷に到着すると、ジルベルトは丁寧に、屋敷の南側にある、日当たりのいい部屋のベッドへ寝かされた。

 御者と護衛騎士たちの仕事はここまでだ。
 当分の間は食い繋げるように食糧と、ジルベルトとカリオのための衣類や布や石鹸等の日用品、カリオが希望した魔導書数冊が玄関に置かれると、彼らはすぐに屋敷を後にした。

 カリオは荷物の整理よりも先に、ジルベルトの元へ向かった。

 コンコン
「失礼します。
 ジルベルト様、離宮に到着しましたよ。ここは離宮の南側にある、1番日当たりがいいお部屋なんです。
 僕は隣の従者用の部屋を使わせていただきます。背中、馬車に長時間揺られて痛くありませんか? 背中の下に薄い浮遊魔法を入れますね。きっとこれで圧が1箇所に固まることもなく、床擦れなども予防できると思います。
 僕は荷物の整理をしますので、少し離れますが、先ほど屋敷の敷地内に結界を張ったので安心して下さい。
 荷物が片付いたらまた来ます」

 カリオは答えることがないと分かっているのにも関わらず、ドアをノックしてジルベルトの部屋に入り、浮遊魔法と結界を使ったことを報告すると荷物を整理するために部屋を後にした。

「ふー、こんなにたくさん食料を用意してくれるなんて、本当にありがたいな。僕1人では食べきれなさそうだ。
 一部は長期保存できるようにして加工しておこう。
 とりあえず今日は全て棚に入れて、明日からゆっくりやっていこう」


 コンコン
「失礼します。
 ジルベルト様、お食事の時間です。味気ないものは嫌かもしれませんが、健やかに過ごされるためですのでどうか我慢してください」

 カリオはジルベルトの胃の中へドロドロに擦り潰した料理を転移させた。
 城では鼻から管を通して胃の中へ液状の食事を流していたようだが、チューブを交換したりするのはカリオには出来そうになかったため、チューブは抜いてもらっていた。

「ジルベルト様、今日の食事はチーズの入ったパン粥と、豆と根菜とトマトのスープを用意しました。舌を通っていないので味は分からないと思いますが、何を食べたのかは把握したいでしょう?
 ジルベルト様は何がお好きでしょうか? お好きな物があればご用意します。
 僕はここでお食事してもいいですか? 匂いだけでも感じることができたらいいのですが」

 カリオはベッドから3歩ほど離れた場所にある机に料理を用意して食べ始めた。

「あ、でも僕は平民なのでジルベルト様のお口に合うような料理は、作ることができないかもしれません。王様に頼んで料理の本を用意してもらって、ジルベルト様の目が覚めるまでには頑張って練習しますね。
 それより目が覚めたらきっとお城に戻られるのですから、お城で料理人が作った料理を食べた方がいいですね。ここにいる間だけは、僕の料理で我慢して下さい」

 そう言うと、カリオは黙々と食事をとった。

「うん。美味しかったです。自画自賛ですが。それでもこうして飢えることなく食材を用意してもらえるのは、とても有難いです。
 では僕は片付けてきます。着替えの用意をしてまた来ますね」

 カリオは自分が食べた食器と、ジルベルトの胃に転移させた料理が入っていた食器をトレイに乗せて部屋を後にした。

 静まり返った部屋に、ジルベルトは眠っているだけのため必要ないように思われるが、ジルベルトが起きた時のためにと、部屋のランプはつけたままにされている。

「さて、洗い物が終わったらジルベルト様に清浄魔法をかけて服を着替えさせて、今日はもう寝よう」

 食器や鍋などを清浄魔法で綺麗にして棚にしまうと、ジルベルトの着替えを持って部屋に向かった。

 コンコン

 カリオは毎回、ジルベルトの部屋に入る時はノックをしている。
 起きているのか寝ているのか、意識があるのか無いのかも分からないけれど、それでも彼は王子であるし、人としてのマナーとして守ろうと決めていた。

「失礼します。
 着替えと、体の清浄を行いますね。
 えっと、僕に触られるのは嫌だと思うので、できるだけ触らないように魔法を使ってやりますね。体の清浄は魔法でやりますし、膀胱や直腸の中も魔法で処理するので安心して下さい。
 オムツなども必要ないと思うので、外しますね」

 カリオはこれから何をするのかしっかりと伝えてから、体の清浄を行っていった。

「着替えは申し訳ないですが、少しだけ体に触れされてもらいます。
 下穿きはさすがに僕に脱がされるのは嫌ですよね……。
 清浄で毎日綺麗にしますので、週に一度だけ取り替えることにしましょう。他は全て着替えましょうね」

 カリオは眠ったままのジルベルトの衣服を脱がせて、新しいものを着せていく。
 今まで隠れていた白くしなやかな四肢や、スベスベな胸や背中を見て、ドキドキしてしまう。

「ジルベルト様はやはりとても美しいですね。いえ、別に変な意味ではなくて、お花を眺めて美しいと思うような感じです。
 今日の寝衣は、水色のシルクにしました。ジルベルト様がどの色をお好みかが分かりませんでしたので、その美しい髪に似合うと思って選びました。
 今日は移動があったので疲れたでしょう? もう寝ましょう。僕も少し疲れてしまいました。
 隣の従者用の部屋で休ませてもらいますね。
 おやすみなさい。良い夢を」

 カリオは隣の部屋に移ると、ジルベルトのものより少し粗末な布団に包まって寝た。

  
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