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14.マルクからの手紙
しおりを挟むひと月もすると、父の体調も戻ってきたため、父上と兄上と一緒に領地を回ることが増えた。
行ったことがない村や、知らない産業などがあって、子供の頃に国を出たんだから仕方ないことなんだが、私は本当に領地のことを何も知らないんだということが分かる。
それを私に勉強させるために連れ回しているんだろう。机の上だけの勉強では、どうにもならず、ちゃんと自分の目で見ることが大事なのだと気付かされた。
「書類の処理などはできても、やはり現地を見て回らないと分からないことも色々あるんですね。」
「そうだな。」
父上も兄上も、領民と気軽に話している。私では分からない農産物の話などもあって、私は聞いているだけなんだが、へぇ、と思うこともあってなかなか勉強になるな。
ある日、領地を回っていて小さな農村だったんだが、5歳くらいの男の子に手紙を渡された。
この国では農村部の識字率がそれほど高くない。絵でも描いてくれたのかと思って広げてみると、私宛の手紙だった。
差出人はマルク。
今は修行の旅を続けているが、また必ず会いに行くと書かれていた。
マルクが近くにいるのか?私はキョロキョロと辺りを見渡して探してみたが、その姿を確認することはできなかった。修行はどうやら順調なようだ。よかった。
「ランディー、何だその紙は。」
私が持っていた手紙を父上が手に取ると、内容を見てワナワナと震え出した。怒っているのか?なぜ?
そして様子のおかしい父上を見て兄上もその手紙を手に取った。
「ランディー、すぐに帰ろう。」
「え?はい。」
私は兄上に手を取られて馬車に乗り込むと、すぐに屋敷に帰ることになった。
そしてその後しばらくは、屋敷から出してもらえなかった。ラウルの屋敷に滞在させてもらっていた時のようだ。
違うのは、ここが帝国ではないことと、兄上の部屋で兄上と一緒に寝るようになったことだろうか。
兄上はおやすみのキスはしてくれるんだが、一度だけ軽く触れるだけのキスをしてすぐに寝てしまう。夜会の夜のように舌を絡めるようなキスはしてくれない。
「・・・兄上、おやすみなさい。」
とても寂しい。帝国ではみんなといつもキスをしていたから、口寂しいというか、快感に飢えているというか。これは帝国に染まりすぎた弊害なんだろう。
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