【短編】xoxo

cyan

文字の大きさ
上 下
9 / 9

9.バエルの想い

しおりを挟む
 

>>>バエル視点

最近ミケは私に抱いてほしいとねだる。
他の者の時にはそんなことないのに、私が抱いている時だけ、もっとと煽ったり、私のことが好きだと何度も言う。
それがとても可愛いんだ。
それを眺めていたいんだが、ミケは私に抱かれれている時にしか言わない。
私だけ特別なのか?手を繋ぐのも私だけだしな。
キスもミケは私とだけがいいと言う。
ミケは私の愛がほしいらしい。それくらいいくらでもやるが、愛って何だ?



ミケを愛でて楽しい日々を過ごしている時にそれは起きた。

「アザゼル!許さん!もう出て行け!もう2度とミケには触れさせん!」
「人間は弱いな。俺には扱いが難しいらしい。」

私はアザゼルを怒鳴りつけて追い出した。
力の強いアザゼルが加減を間違えミケを傷つけたんだ。普段なら、あーまたかと残念な気持ちになりながらお気に入りを捨てることになるんだが、今回は違った。

誰にも触れさせないようミケを保護し、切り裂かれた体に必死に治癒の魔法をかけた。
青白い顔と力なくダラリと落ちた腕。私はミケが目を覚ますまでの5日間、睡眠も食事も取らずひたすらに治癒をかけ続けた。

「ミケ、死ぬな。私の側にいろ。」

生命の実など幾つ食べても寿命が延びるだけで、物理攻撃や魔法耐性がつくわけではない。
か弱い人間であるミケを、あんな悪魔たちに好き勝手にさせてはいけなかったんだ。
虹色の瞳。そのおかげでミケはどの悪魔の精を注がれても平気な様子だったから、私の精も大丈夫なのではないかと試してみた。
もがき苦しむどころか、可愛い私にしか見せない姿を見せてくれる。こんなの手放せないだろ。

もしミケが死んだら、私はアザゼルを殺してしまいそうだ。
もうミケはたかが人間ではなく私の宝なんだ。


ーーミケ、戻ってこい。私の愛を全部あげるから。戻ってこい。



「バ、エル、、、」
「ミケ、よかった。」

私はミケを抱きしめてキスをした。ミケが幸せだと言って笑ってくれたキスとハグ。

「ミケ、お前は私だけのものだ。もう他の奴になんか貸してやらん。ミケは物足りなくても我慢しろ。その分私が愛してやるから。」
「うん。」

もう少しでミケを失うところだった。2度とあんな悲しい思いをするのは嫌だ。この強く握っただけで壊れてしまいそうな脆いミケを守ってやれるのは私だけだ。


「バエル、僕、まだ生きてる?」
「あぁ、生きてるよ。」
「良かった。まだバエルに愛してるって言ってなかったから。僕、バエルのこと愛してるの。他の悪魔は要らないの。バエルは見てるのが好きみたいだけど、僕はバエルだけに抱かれたいしバエルだけに愛されたい。それが無理なら殺していいよ。」
「ダメだ。死ぬなんて言うな。ミケは私の最愛だ。他の者に抱かせたりしないから、私の側にいろ。」
「うん。」


ミケはアザゼルを罰しなくていいと言った。私は会わせなかったが、アザゼルはその後何度か人間界の果物や野菜を持ってわざわざミケのお見舞いに来ていた。
私も分かっているんだ。わざとじゃない。これはアザゼルのせいというより、私のせいだ。

初めは怖がっていたが、10年ほど経ってから会わせてやると、ミケもだいぶ魔界に慣れていたからか、普通に会話ができるほどになった。だから私もよくやく許すという決断ができた。
触れることは許さないが、話すくらいなら許してやる。


「バエル、キスとハグして。」
「あぁ、いいぞ。」

すっかり元気になったミケを抱きしめてキスをする。
側で見ているだけでは分からない温もりと柔らかさと、私だけに向けられる笑顔。
それを知ってしまったら、見ているだけなんてできないな。


毎日私が精を注いでいたせいか、ミケはだんだん悪魔の血が濃くなってきた。もう種族的には人間ではないな。

「バエル、大変!僕牙が生えてきた気がする。」
「ミケも悪魔の仲間入りだな。」
「え?そうなの?僕が悪魔になったら、またみんなに犯されるの?」
「そんなことしない。ミケは私だけのものだ。ミケに触れていいのは私だけだ。私だけでは物足りないか?」
「そんなことないよ。バエルだけがいい。バエルだけが好きだから。」

魔界のものも食べられるようになったミケと、たまに街に行って食事をするようになった。
これがデートというやつか。
そして、脱がすことを目的としない、着飾る用の服を色々買ってやった。


「・・・バエル、これは本当に脱がすことを目的としてない服って言えるの?」
「たまにはいいではないか。ミケを着飾って、そして淫らに脱がせたい時もあるんだ。」
「これ、着飾るって言うの?ほとんど透けて見えてるじゃん。」

ヒラヒラのレースのドレスのようなものを買ってきたら、ミケは気に入らなかったようだ。

「ミケは気に入らなかったか・・・」
「せっかく買ってくれたんだから着るけどさ、ちゃんと外を歩ける服を買ってよね。」

こうして文句を言いつつも、ミケは着てくれるんだ。

「どう、かな?やっぱり恥ずかしい・・・着てないより、こっちのが恥ずかしい。」
「ミケこのまま抱いていいか?」
「いいけど、この前みたいに切り裂いたら勿体無いから気を付けてね。」
「分かった。」

そうだった。この前はミケが可愛すぎて襲いかかって服を切り刻んでしまったんだった。

「ミケ、愛してるよ。」
「うん。嬉しい。僕もバエルのこと愛してる。今日もいっぱいキスとハグしてくれる?」
「もちろんだよ。」


(終)

 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

君が好き過ぎてレイプした

眠りん
BL
 ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。  放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。  これはチャンスです。  目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。  どうせ恋人同士になんてなれません。  この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。  それで君への恋心は忘れます。  でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?  不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。 「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」  ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。  その時、湊也君が衝撃発言をしました。 「柚月の事……本当はずっと好きだったから」  なんと告白されたのです。  ぼくと湊也君は両思いだったのです。  このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。 ※誤字脱字があったらすみません

くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました

あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。 一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。 21.03.10 ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。 21.05.06 なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。 21.05.19 最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。  最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。  最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。 23.08.16 適当な表紙をつけました

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

小指の先に恋願う

ミヅハ
BL
三年前の雨の日、傷だらけで路地裏に蹲っていた凌河(りょうが)を救ったのは、花が綻ぶような笑顔を浮かべる綺麗な少年だった。名前も住んでいる場所も知らない少年を必死に捜し続ける凌河だったが、何の手掛かりも得られない状況にイライラしていた。そんなある日、面倒臭さを抱きながら行った学校で転校生を見掛ける。目が合い、微笑む青年には少年の面影があり──。 美形不良攻め×美人受け。 攻め視点と受け視点が交互に進みます。 「」付きの性的描写ありには、軽いものでも※をつけています。 暴力表現ありには*をつけています。

男とラブホに入ろうとしてるのがわんこ属性の親友に見つかった件

水瀬かずか
BL
一夜限りの相手とホテルに入ろうとしていたら、後からきた男女がケンカを始め、その場でその男はふられた。 殴られてこっち向いた男と、うっかりそれをじっと見ていた俺の目が合った。 それは、ずっと好きだけど、忘れなきゃと思っていた親友だった。 俺は親友に、ゲイだと、バレてしまった。 イラストは、すぎちよさまからいただきました。

何も知らないノンケな俺がなぜかラブホでイケメン先輩に抱かれています

波木真帆
BL
俺、葉月亮太は直属の上司である八神悠亮さんと、休日出勤で郊外にあるショッピングモールの試飲イベントに来ていた。大盛況で帰途についたのも束の間、山道で突然のゲリラ豪雨に遭遇し、急いで近くの建物の駐車場に避難した。トイレと食事を期待して中に入ったのだが、そこはなんとラブホテルでしかも2時間は出られない。 一緒に過ごすうちになんとなくおかしな雰囲気になってきて……。 ノンケの可愛い社会人3年目の天然くんとバイなイケメン先輩の身体から始まるイチャラブハッピーエンド小説です。 おそらく数話で終わるはず。 R18には※つけます。

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが

古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。 女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。 平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。 そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。 いや、だって、そんなことある? あぶれたモブの運命が過酷すぎん? ――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――! BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。

処理中です...