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後宮へ
しおりを挟むその後も陛下は毎晩僕を抱いて、後宮へ行くことはなかった。排卵に合わせて種を注がなければいけないから、数日は該当する側妃がいないのだと思った。
しかし、陛下は一月経ってもニ月経っても後宮へ行く気配がない。
「陛下、僕を愛してくれるのはとても嬉しいです。しかし、陛下は子を作らなければなりません。どうか後宮へも・・・。」
「シオンが成人を迎えたらな。それまではシオンだけを抱きたい。それとも、シオンが手伝ってくれるのか?
うむ、そうか、その手があったか。それならいいぞ。」
「僕が手伝う?陛下と側妃の夜伽をですか?手伝えるものとは思えませんが・・・。」
まさか陛下は側妃を抱いている姿を僕に見せる気なんだろうか?
見たくない。陛下が誰かを抱いている姿など、見たくない。見ないなら耐えられるが、陛下が優しく誰かにキスをし愛情を注ぐところなど見たら、僕は気が狂ってしまいそうだ。
「後宮の医師をここへ。」
間も無く後宮を担当している医師が陛下の執務室にやってきた。
「お呼びでしょうか?」
「あぁ、側妃の中で排卵間近の者はいるか?」
「本日でしたら、アダリー様が該当されます。」
「分かった。夜にシオンと共に向かうから準備をしておくよう伝えておけ。」
「かしこまりました。」
皇帝は本当に僕を連れて行く気なんだ・・・
なぜ僕に見せようとするのか、嫉妬心を煽りたいとか、僕が悲しむ姿を見たいとか、そういうことだろうか?
そしてさっき僕が成人を迎えたら考えると言った言葉も気になる。僕が成人前だから陛下は手元に置いてくれているんだろうか?
だとしたら成人を迎えたら僕は後宮に住むことになるんだな。
陛下が訪れるのを毎日待つことになるのか。
それは仕方ないことだ。
後宮には今のところ男はいないと聞いている。
確か僕が陛下に引き取られてから側妃は増えていないから、今は8人だったかな。
側妃たちは僕と仲良くしてくれるんだろうか?この前は独り占めとか言われたし、またあの国の時のように辛く当たられて掃除をしたりすることになるんだろうか?
でも今は清浄魔法が使えるから、それほど大変でもないか。
あぁ、でも今は陛下の執務を手伝うという仕事があるから大丈夫かな。
「シオン、難しい顔をしてどうした?」
「いえ、大したことではありません。成人後のことを考えておりました。」
「そうか。シオンは何も心配することはない。余に全て任せておけばいい。」
「はい。」
僕は裸にガウンだけを着せられ、陛下に手を取られて後宮に向かっている。
なぜこのような格好で?
陛下が妃を抱いている隣で自慰でもしていろということだろうか?
そんなのあんまりだ・・・
僕はとても憂鬱な気持ちのまま後宮への歩みを進めた。
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