6 / 6
6.
しおりを挟む「ご、ごめん、その……」
「気にするな」
僕は我を忘れて乱れすぎて粗相をしていた。ライくんの高そうな寝具がしっとりしている。
まだ全身がちょっと痺れてる。
「気持ちよかったか? 満足か?」
「うん。気持ちよかった」
「ならいい。ちゃんと好きだって伝わってるよな?」
「うん。その、僕もライくんのこと好き」
「ああ、俺の方が好きだけどな」
その日、僕たちは初めて喧嘩した。
絶対的強者であるライくんには、肯定の返事しかできないって思ってたんだけど、好きって気持ちは負けないってどうしても伝えたかった。
だって僕はずっと前からライくんのことが好きだったんだから。烏滸がましいって遠慮してたけど、この想いが恋だって知ってた。
「そんなに俺のこと好きなら、今回だけは俺の負けでいい」
「ふふん。僕の勝ち」
「お前、やっぱり最高に可愛いな」
*
「ライくん、いつから僕のこと好きなの?」
「ずっと前だ。
トロイのやつにノート盗んだと責められたことがあっただろ? 可愛いくせにどんな悪さをすんのか気になって観察してたら全部誤解だと知った。
落とし物なんか放置すればいいのに本人にこっそり返してさ。
俺もフェアトを見習って街で荷物が重くてしんどそうな婆さんを手伝ってみたんだが、あんなこと感謝くらいされないとできねえ。
素直に凄いと思った。もうその頃には好きだったんだろうな」
「負けました……」
まさかそんな前から好きだったなんて……
こっそりやってたつもりなのに見られてたのも恥ずかしい。
でも、誰かに認めてもらいたかった。本当に見ててくれる人がいるなんて思ってなかった。それがライくんだったなんて嬉しすぎる。
「俺に熱い視線送ってくるくせに全然告白してこねえし」
そんなことまでバレてたの? これは本当に恥ずかしい。
「だって僕はハイエナだし……」
「堂々としていろ。お前が縮こまる必要なんかない」
「うん」
嬉しい。これからはコソコソしなくていいんだ。
あれ? でもライくんは学校では僕のこと避けてたのに。
「ライくん、一個聞いてもいい?」
「なんだ? なんでも聞け」
「学校で素っ気なかったし避けてたのは、ハイエナと仲良しだと思われたくなかったからじゃないの?」
だから僕はライくんが僕のことを好きなんてあり得ないと思ってたんだ。
「フェアトは俺の前でいつもビクビクしてるし目も全然合わさなかった。ずっと怖がられんのは俺だって堪えんだよ。それに離れると熱い視線送ってくれるしな」
「そうだったんだ……」
「だが、俺が離れてたからフェアトが傷つけられた。ごめん」
そんなのライくんのせいじゃないのに。それに助けてくれた。
「いいの。助けてくれて嬉しかった。ありがとう」
「感謝はいいから、これからはそばにいても俺に熱い視線送れよ」
「うん、頑張ってみる」
「お前、可愛すぎる。ダメだ。もう一回抱かせろ」
「うん。いいの?」
「いいのじゃねえ、俺が抱きたいんだ」
「うん、嬉しい。いっぱいキスしてほしい」
「いいぞ」
休み明けに学校に行くと、ライくんだけじゃなくてみんなが寄ってきた。
ライくんの許可が下りたからこれからは仲良くしてほしいって。どういうこと?
「あいつ、フェアトに近づく奴を追っ払ってたんだよ」
「恋人になったら話しかけていいって言ってたから、やっと話しかけたってわけ」
「そうそう。『俺のだから近づくな』とか言ってな。そのくせ全然手出さないの。やっとだよ」
「フェアトいつもありがとな。やっと言えた」
僕はずっとみんなに嫌われてるんだと思ってた。全員が僕を好きなわけじゃなくて、まだ一部の人は僕がハイエナだから避けてる。でもちゃんと僕を見てくれている人がいた。その中にはライくんから真実を聞いた人もいて、前は誤解してたって謝ってくれる人もいたんだ。
ライくんが僕の誤解を解いてくれてたなんて全然知らなかったよ。
みんながライくんのことを暴露したから、ライくんはちょっと不機嫌だ。でも僕の手をギュッと握ってる。
ずっと格好いいと思ってたけど、想像以上だった。こんな素敵な人に好きって言ってもらえる今がとても幸せだ。
「ライくん、ありがとう。好きだよ」
「知ってる」
(完)
最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
255
お気に入りに追加
91
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
お前だけが俺の運命の番
水無瀬雨音
BL
孤児の俺ヴェルトリーはオメガだが、ベータのふりをして、宿屋で働かせてもらっている。それなりに充実した毎日を過ごしていたとき、狼の獣人のアルファ、リュカが現れた。いきなりキスしてきたリュカは、俺に「お前は俺の運命の番だ」と言ってきた。
オメガの集められる施設に行くか、リュカの屋敷に行くかの選択を迫られ、抜け出せる可能性の高いリュカの屋敷に行くことにした俺。新しい暮らしになれ、意外と優しいリュカにだんだんと惹かれて行く。
それなのにリュカが一向に番にしてくれないことに不満を抱いていたとき、彼に婚約者がいることを知り……?
『ロマンチックな恋ならば』とリンクしていますが、読まなくても支障ありません。頭を空っぽにして読んでください。
ふじょっしーのコンテストに応募しています。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる