【短編】ハイエナくんは実は

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「ご、ごめん、その……」
「気にするな」
 僕は我を忘れて乱れすぎて粗相をしていた。ライくんの高そうな寝具がしっとりしている。
 まだ全身がちょっと痺れてる。

「気持ちよかったか? 満足か?」
「うん。気持ちよかった」
「ならいい。ちゃんと好きだって伝わってるよな?」
「うん。その、僕もライくんのこと好き」
「ああ、俺の方が好きだけどな」

 その日、僕たちは初めて喧嘩した。
 絶対的強者であるライくんには、肯定の返事しかできないって思ってたんだけど、好きって気持ちは負けないってどうしても伝えたかった。
 だって僕はずっと前からライくんのことが好きだったんだから。烏滸がましいって遠慮してたけど、この想いが恋だって知ってた。

「そんなに俺のこと好きなら、今回だけは俺の負けでいい」
「ふふん。僕の勝ち」
「お前、やっぱり最高に可愛いな」


 *


「ライくん、いつから僕のこと好きなの?」
「ずっと前だ。
 トロイのやつにノート盗んだと責められたことがあっただろ? 可愛いくせにどんな悪さをすんのか気になって観察してたら全部誤解だと知った。
 落とし物なんか放置すればいいのに本人にこっそり返してさ。
 俺もフェアトを見習って街で荷物が重くてしんどそうな婆さんを手伝ってみたんだが、あんなこと感謝くらいされないとできねえ。
 素直に凄いと思った。もうその頃には好きだったんだろうな」

「負けました……」
 まさかそんな前から好きだったなんて……
 こっそりやってたつもりなのに見られてたのも恥ずかしい。
 でも、誰かに認めてもらいたかった。本当に見ててくれる人がいるなんて思ってなかった。それがライくんだったなんて嬉しすぎる。

「俺に熱い視線送ってくるくせに全然告白してこねえし」
 そんなことまでバレてたの? これは本当に恥ずかしい。
「だって僕はハイエナだし……」

「堂々としていろ。お前が縮こまる必要なんかない」
「うん」
 嬉しい。これからはコソコソしなくていいんだ。
 あれ? でもライくんは学校では僕のこと避けてたのに。

「ライくん、一個聞いてもいい?」
「なんだ? なんでも聞け」
「学校で素っ気なかったし避けてたのは、ハイエナと仲良しだと思われたくなかったからじゃないの?」
 だから僕はライくんが僕のことを好きなんてあり得ないと思ってたんだ。

「フェアトは俺の前でいつもビクビクしてるし目も全然合わさなかった。ずっと怖がられんのは俺だって堪えんだよ。それに離れると熱い視線送ってくれるしな」
「そうだったんだ……」
「だが、俺が離れてたからフェアトが傷つけられた。ごめん」
 そんなのライくんのせいじゃないのに。それに助けてくれた。

「いいの。助けてくれて嬉しかった。ありがとう」
「感謝はいいから、これからはそばにいても俺に熱い視線送れよ」
「うん、頑張ってみる」

「お前、可愛すぎる。ダメだ。もう一回抱かせろ」
「うん。いいの?」
「いいのじゃねえ、俺が抱きたいんだ」
「うん、嬉しい。いっぱいキスしてほしい」
「いいぞ」

 休み明けに学校に行くと、ライくんだけじゃなくてみんなが寄ってきた。
 ライくんの許可が下りたからこれからは仲良くしてほしいって。どういうこと?
「あいつ、フェアトに近づく奴を追っ払ってたんだよ」
「恋人になったら話しかけていいって言ってたから、やっと話しかけたってわけ」
「そうそう。『俺のだから近づくな』とか言ってな。そのくせ全然手出さないの。やっとだよ」
「フェアトいつもありがとな。やっと言えた」

 僕はずっとみんなに嫌われてるんだと思ってた。全員が僕を好きなわけじゃなくて、まだ一部の人は僕がハイエナだから避けてる。でもちゃんと僕を見てくれている人がいた。その中にはライくんから真実を聞いた人もいて、前は誤解してたって謝ってくれる人もいたんだ。
 ライくんが僕の誤解を解いてくれてたなんて全然知らなかったよ。

 みんながライくんのことを暴露したから、ライくんはちょっと不機嫌だ。でも僕の手をギュッと握ってる。
 ずっと格好いいと思ってたけど、想像以上だった。こんな素敵な人に好きって言ってもらえる今がとても幸せだ。
「ライくん、ありがとう。好きだよ」
「知ってる」



(完)


 最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

 
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