26 / 62
本章
接触 4
しおりを挟む
雄弁な貴族の去った焚火を囲む四人は沈黙の中にあった、三人がキーツへの警戒感を解くことは無く六つの目が爛乱とキーツを射貫く、それではとキーツは立ち上がりジュウシから布袋を携えて戻った、
「お嬢さん、お嬢さんで良かったかな?」
キーツはまず少女に話し掛ける、少女は尚無言であったが、
「こちらを試してみて」
布袋から乾パンを二欠片程取り出すと自分の口へ運んだ、固く乾いたそれに口中の水分を持っていかれるも独特の甘味と歯ごたえが心地良くとても美味しい。
どうぞと布袋をそのまま彼等に押しやると少女は渋々受け取り袋を覗く、一欠片を手にし焚火に翳し確認すると安心したように口にした、
「・・・美味しい・・・」
彼女はそっと呟くと隣の二人にも分け与える、
「良かった、魚は苦手だったかな?」
キーツはそう言って微笑んだ、彼女の魚は何時の間にか獣人の腹に納まったらしい、その姿を確認する事は出来なかったが無駄にならなかったのであればそれで良いとも思う。
三人は乾パンを貪りつつ杯を呷り続けた、
「待って、慌てないでお湯沸かすからポットを頂戴」
楽しそうにそう言ってポットを受け取り川から水を汲む、焚火に戻るとやや落ち着いたのか獣人の二人はその手を止めており、少女は食事を続けていた。
「さてと、まずはどうしようか」
キーツはポットを火に掛け少女を見詰める、言葉を変えて彼女の言語で語り掛けてみた、少女は驚いた顔でこちらを見返し獣人二人も同様に大きな瞳でこちらを見ている、
「私達の言葉がしゃべれるのですか?」
少女はやっと会話に応じてくれたようだ、
「良かった、通じたみたいだね、随分昔に習ったものだから」
変じゃない?と微笑んで見せる、
「いえ、どこも変ではないです、でも」
と少女は口籠り、
「変でないのが変です」
と続ける、その言葉に再び冷や汗を掻いた、恐らくやり過ぎたのである上手過ぎたのだ、訛りや抑揚の付け方を調整すれば良かったか、
「そ、そう?そんなに上手だった?嬉しいなぁ、昔結構頑張ったのよね」
慌てて誤魔化そうとするが難しいようであった、少女の怪しむ目はその眼光を鋭くし口元に咥えた乾パンもそれ以上口中に送り込もうとしない、キーツはどうやって取り繕うかと思案するも冷や汗が吹き出るばかりであたふたとポットの様子を確認したり薪を追加したりと行動まで不審になる。
「どのようにお呼びすればよいですか」
少女はキーツの内心を知ってか知らずか静かにそう問い掛ける、キーツはその言葉を受け一切の動作を止め少女の瞳を伺った、その瞳には様々な感情が表れていたがその言葉の意味する事は彼女は自分の立場を受け入れているという事であった、否、それは言葉だけのようである、キーツが伺うその瞳の奥には静かな反抗心が灯りこの瞬間にも思考が渦巻き続けその一挙手一投足はおろか髪の毛の先、睫毛の先端迄をも生存という一事に掛ける思念が表出している、今彼女はその全霊を持って生き残る事にしたのだ。
キーツは心中で見事と快哉を叫びたくなった、地球で何人もの被害者を救ったがこれ程迄に生に貪欲で雄々しい意思を感じた事は無かった、地球での被害者は打ちひしがれ弱った上にその存在を抹消するようにキーツに懇願するものまで居たのだ、奴隷という立場に置いてなお全力で己を確固するその意思の強さと行き汚さはこの時代故か彼女の本質か、いずれにしろ助けて良かったとキーツは心底感じる。
「キーツでかまわない、敬称はいらないよ」
キーツは本来の笑みを浮かべる、ギャエルの前で見せた演技はもう必要では無かった、
「では、私達に名付けを、一時的とは言え主従であると思います」
「その件だが」
とキーツは懐からナイフを取り出すと柄を少女に向ける、
「その首輪を落としなさい・・・、この意味は分かる?」
突然の申し出に少女は躊躇いキーツの真意を測りかねている様子であった、
「どういう事?」
獣人の一人が少女に問い掛ける、少女の言語であった、やはり獣人は彼女の言葉を理解し発声する事が可能らしい、キーツには判断できなかったがある程度の訛りはあるのであろうが、
「奴隷の身分を解くという事です・・・、と思います」
少女は獣人にそう告げた、キーツはそのつもりだとその言を受ける、
「しかし、それでは貴方に利がありません」
少女は理を説く、利という単語にこの社会もそうなのだなとキーツは感じ入る、
「目的が分かりませんし道理が通らないと思いますが」
キーツは少々思案して、
「では、私の考えを説明すれば良いのかな」
手にしたナイフを地面に突き刺すと三人を見渡す、彼等は警戒しつつも関心を示している様子である、そこでキーツは訥々と嘘を並べた、ギャエルに語った内容に加え奴隷に対する嫌悪感を話すそれらは少女の言語を用いてより情緒的に物語られた、最後に探し人がその立場になっているとすれば自分は決して許さないと締め括る。
「許さないからといって貴方に出来る事は少ないでしょう」
少女は辛辣に断言する、
「少なくても、出来る事はあるんだろ」
キーツはそう返した、少女は黙り込む、キーツは柔らかく微笑んで、
「そこで、君達についてはその首輪を外した上で、君達の安全に暮らせる地まで送り届けたいと思う、先も言ったが私は旅人でこの辺の土地は不案内でね、戦争のお陰でいろいろ不安定な様子だし、君達ならある程度土地勘もあるだろうから案内を兼ねて・・・と考えたわけだ」
キーツは言葉を切り三人を観察する、その表情に変化は無いが少しは警戒感は薄れたようだ、キーツは如何かなと彼等に問い掛ける。
ややあって少女は口を開く、
「よく考えれば、貴方は命の恩人です」
獣人二人に視線を移す、その目は慈愛に満ち優し気であった、
「奴隷の契約の有無に関わらず、またそれがあったとしても恩人に対する礼が私には足りなかったようです、我々パドメの民とケイネスの民、レオパルディの民が不義理な蛮族と思われるのは沽券に関わります」
少女はキーツに視線を移す、何かしらの覚悟を決めたようだ、
「さらに我々の行く末も案じて頂ける事に深く感謝致します、キーツ様どうか暫くの間この身と友人の身をお預け致します、我々に出来うる事はどうぞ御指示下さい、全力で報いる事をお約束します、また命を救っていただいた事、食事を供して頂いた事、重ねて御礼を申し上げます」
胸に手を当て頭を垂れる、金色に輝く髪がその顔をキーツの視線から隠し、獣人もやや遅れて頭を垂れる、慣れない礼の仕方であったのだろう少女の方を伺いながら何とか似せるように努力していた。
キーツはその姿に取り合えずほっと一息吐く、浸透同化に於いては現地での協力員はどうしても必要であったしせっかく助けた彼等に自暴自棄になられても困る、
「こちらこそ、宜しくお願いしたい、取り合えず俺の事はキーツで良いよ様は要らない、君達は何と呼べばいい?・・・あぁ、それから畏まらないで、肩が凝るからね」
キーツは努めて明るい声を出す、少女は顔を上げ不思議そうな顔をする、後で聞いたところによると肩が凝るの意味が分らなかったらしい、
「・・・では、私からシェシュティン・ウーパドメ・ラーゲルレーブと申します、テインとお呼び下さい」
改めての自己紹介はどこか気恥ずかしいものがある、彼女もそのようで先程の活舌の良さは失われていた。
続いてテインは隣の獣人を促す、
「エルステ、言います」
言葉少なにペコリと頭を下げる、獣人の顔の長い狼顔の男子である。
「フリンダ」
その隣の獣人はやや食い気味にそう言って頭を下げた、獣人の猫顔の少女である。
「お嬢さん、お嬢さんで良かったかな?」
キーツはまず少女に話し掛ける、少女は尚無言であったが、
「こちらを試してみて」
布袋から乾パンを二欠片程取り出すと自分の口へ運んだ、固く乾いたそれに口中の水分を持っていかれるも独特の甘味と歯ごたえが心地良くとても美味しい。
どうぞと布袋をそのまま彼等に押しやると少女は渋々受け取り袋を覗く、一欠片を手にし焚火に翳し確認すると安心したように口にした、
「・・・美味しい・・・」
彼女はそっと呟くと隣の二人にも分け与える、
「良かった、魚は苦手だったかな?」
キーツはそう言って微笑んだ、彼女の魚は何時の間にか獣人の腹に納まったらしい、その姿を確認する事は出来なかったが無駄にならなかったのであればそれで良いとも思う。
三人は乾パンを貪りつつ杯を呷り続けた、
「待って、慌てないでお湯沸かすからポットを頂戴」
楽しそうにそう言ってポットを受け取り川から水を汲む、焚火に戻るとやや落ち着いたのか獣人の二人はその手を止めており、少女は食事を続けていた。
「さてと、まずはどうしようか」
キーツはポットを火に掛け少女を見詰める、言葉を変えて彼女の言語で語り掛けてみた、少女は驚いた顔でこちらを見返し獣人二人も同様に大きな瞳でこちらを見ている、
「私達の言葉がしゃべれるのですか?」
少女はやっと会話に応じてくれたようだ、
「良かった、通じたみたいだね、随分昔に習ったものだから」
変じゃない?と微笑んで見せる、
「いえ、どこも変ではないです、でも」
と少女は口籠り、
「変でないのが変です」
と続ける、その言葉に再び冷や汗を掻いた、恐らくやり過ぎたのである上手過ぎたのだ、訛りや抑揚の付け方を調整すれば良かったか、
「そ、そう?そんなに上手だった?嬉しいなぁ、昔結構頑張ったのよね」
慌てて誤魔化そうとするが難しいようであった、少女の怪しむ目はその眼光を鋭くし口元に咥えた乾パンもそれ以上口中に送り込もうとしない、キーツはどうやって取り繕うかと思案するも冷や汗が吹き出るばかりであたふたとポットの様子を確認したり薪を追加したりと行動まで不審になる。
「どのようにお呼びすればよいですか」
少女はキーツの内心を知ってか知らずか静かにそう問い掛ける、キーツはその言葉を受け一切の動作を止め少女の瞳を伺った、その瞳には様々な感情が表れていたがその言葉の意味する事は彼女は自分の立場を受け入れているという事であった、否、それは言葉だけのようである、キーツが伺うその瞳の奥には静かな反抗心が灯りこの瞬間にも思考が渦巻き続けその一挙手一投足はおろか髪の毛の先、睫毛の先端迄をも生存という一事に掛ける思念が表出している、今彼女はその全霊を持って生き残る事にしたのだ。
キーツは心中で見事と快哉を叫びたくなった、地球で何人もの被害者を救ったがこれ程迄に生に貪欲で雄々しい意思を感じた事は無かった、地球での被害者は打ちひしがれ弱った上にその存在を抹消するようにキーツに懇願するものまで居たのだ、奴隷という立場に置いてなお全力で己を確固するその意思の強さと行き汚さはこの時代故か彼女の本質か、いずれにしろ助けて良かったとキーツは心底感じる。
「キーツでかまわない、敬称はいらないよ」
キーツは本来の笑みを浮かべる、ギャエルの前で見せた演技はもう必要では無かった、
「では、私達に名付けを、一時的とは言え主従であると思います」
「その件だが」
とキーツは懐からナイフを取り出すと柄を少女に向ける、
「その首輪を落としなさい・・・、この意味は分かる?」
突然の申し出に少女は躊躇いキーツの真意を測りかねている様子であった、
「どういう事?」
獣人の一人が少女に問い掛ける、少女の言語であった、やはり獣人は彼女の言葉を理解し発声する事が可能らしい、キーツには判断できなかったがある程度の訛りはあるのであろうが、
「奴隷の身分を解くという事です・・・、と思います」
少女は獣人にそう告げた、キーツはそのつもりだとその言を受ける、
「しかし、それでは貴方に利がありません」
少女は理を説く、利という単語にこの社会もそうなのだなとキーツは感じ入る、
「目的が分かりませんし道理が通らないと思いますが」
キーツは少々思案して、
「では、私の考えを説明すれば良いのかな」
手にしたナイフを地面に突き刺すと三人を見渡す、彼等は警戒しつつも関心を示している様子である、そこでキーツは訥々と嘘を並べた、ギャエルに語った内容に加え奴隷に対する嫌悪感を話すそれらは少女の言語を用いてより情緒的に物語られた、最後に探し人がその立場になっているとすれば自分は決して許さないと締め括る。
「許さないからといって貴方に出来る事は少ないでしょう」
少女は辛辣に断言する、
「少なくても、出来る事はあるんだろ」
キーツはそう返した、少女は黙り込む、キーツは柔らかく微笑んで、
「そこで、君達についてはその首輪を外した上で、君達の安全に暮らせる地まで送り届けたいと思う、先も言ったが私は旅人でこの辺の土地は不案内でね、戦争のお陰でいろいろ不安定な様子だし、君達ならある程度土地勘もあるだろうから案内を兼ねて・・・と考えたわけだ」
キーツは言葉を切り三人を観察する、その表情に変化は無いが少しは警戒感は薄れたようだ、キーツは如何かなと彼等に問い掛ける。
ややあって少女は口を開く、
「よく考えれば、貴方は命の恩人です」
獣人二人に視線を移す、その目は慈愛に満ち優し気であった、
「奴隷の契約の有無に関わらず、またそれがあったとしても恩人に対する礼が私には足りなかったようです、我々パドメの民とケイネスの民、レオパルディの民が不義理な蛮族と思われるのは沽券に関わります」
少女はキーツに視線を移す、何かしらの覚悟を決めたようだ、
「さらに我々の行く末も案じて頂ける事に深く感謝致します、キーツ様どうか暫くの間この身と友人の身をお預け致します、我々に出来うる事はどうぞ御指示下さい、全力で報いる事をお約束します、また命を救っていただいた事、食事を供して頂いた事、重ねて御礼を申し上げます」
胸に手を当て頭を垂れる、金色に輝く髪がその顔をキーツの視線から隠し、獣人もやや遅れて頭を垂れる、慣れない礼の仕方であったのだろう少女の方を伺いながら何とか似せるように努力していた。
キーツはその姿に取り合えずほっと一息吐く、浸透同化に於いては現地での協力員はどうしても必要であったしせっかく助けた彼等に自暴自棄になられても困る、
「こちらこそ、宜しくお願いしたい、取り合えず俺の事はキーツで良いよ様は要らない、君達は何と呼べばいい?・・・あぁ、それから畏まらないで、肩が凝るからね」
キーツは努めて明るい声を出す、少女は顔を上げ不思議そうな顔をする、後で聞いたところによると肩が凝るの意味が分らなかったらしい、
「・・・では、私からシェシュティン・ウーパドメ・ラーゲルレーブと申します、テインとお呼び下さい」
改めての自己紹介はどこか気恥ずかしいものがある、彼女もそのようで先程の活舌の良さは失われていた。
続いてテインは隣の獣人を促す、
「エルステ、言います」
言葉少なにペコリと頭を下げる、獣人の顔の長い狼顔の男子である。
「フリンダ」
その隣の獣人はやや食い気味にそう言って頭を下げた、獣人の猫顔の少女である。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
後宮の最下位妃と冷酷な半龍王
翠晶 瓈李
ファンタジー
毒を飲み、死を選んだはずなのに。なぜか頭にお花が咲きました……。
♢♢♢
~天より贈られし『甘露』降る大地
仁政を施す王現れる証
これ瑞兆なり~
♢♢♢
甘露とは天から与えられる不老不死の霊薬。中国古来の伝説では天子が仁政を行う前兆として天から降るといわれている。
♢♢♢
陥落寸前の瑤華国で死を望み『毒』を飲んだ最下位妃、苺凛(メイリン)。
けれど『毒』は〈死〉ではなく『霊力のある花』をその身に咲かせる〈異能〉を苺凛に与えた。
一方、軍を率いて瑤華国を征圧した釆雅国の第二王子、洙仙(シュセン)。
彼は龍族と人の血が混ざった冷酷な男だった。
「花が咲き続ける限り、おまえは俺から逃れられない」
死を願う苺凛に洙仙は冷たく笑う。
冷酷で意地悪な洙仙が嫌いな苺凛だったが、花に秘められた真実を知ってから気持ちに変化が……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる