11 / 140
序章.美しき想い出
9.乱入
しおりを挟む
クレルの手を引っ張っりながら必死に逃げる。できる限りの妨害をするけれど、まるで効いているようには見えず、半ば呆れながらこちらを変わらぬ速度で追跡する相手に驚嘆の思いを抱く……機士や狩人は強いとは思ってたけど、実際に見ると規格外にも程がある。
「はぁはぁ……クレル! 申し訳ないけどもう少し強い魔法を使えないの?!」
「はぁはぁ……ここにある壁や床に使われてるコンクリートや木材程度の対価じゃこれが限界だよ!」
デコボコになった床に躓きそうになりながら走り続けながらクレルに問い掛けるけれど、難しそうね。
「なんとかならないの?!」
「僕にとってなんの価値もないから難しいよ! 前にも教えたでしょ? 魔法や魔物は釣り合う対価がないとダメだって!」
「そ、そうだったわね!」
クレルにとって価値あるものを犠牲にしないと、現段階では強い魔法は使えないのね……仕方ないけれど、今は困ったわ。
「……猟犬の解放申請──受諾」
「っ?!」
まずいわ! 相手がなにかをし始めている!
「悪い子にはまず、力の差を見せないとダメなようですね!」
相手の持つ兵装から凄まじい衝撃がこちらに向かってくる!!
「危な──」
──あれ、私空を飛んでる? なんで……クレルは? クレルは無事なの?
「あっ……」
クレルが居ない? いや、私の左腕が……ない。
「……あぁぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁ!!!!!!!!」
痛い痛い痛い痛い熱い痛い熱い熱い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い痛い熱い熱い痛い熱い痛い痛い痛い痛い痛い熱い!!!!!!!!!!!
「アリシアっ?!!」
「っ! クレル来ちゃダメぇ!!」
今そこに狩人が来てるから、ダメよ! 私は放っておいて逃げて!
「クソっ! 『我が願いの──ぶっ?!」
「させねぇよ」
「クレル?!」
私を助けようとしたクレルが顔を掴まれ持ち上げられる……やめてよ、クレルは何も悪いことしていないじゃない!
「やめて! クレルを放して!」
「……驚きましたね、片腕を失ってもなお、この害虫を庇うとは……お嬢様のおままごとだったと庇えなくなるのですが?」
なんで、どうしてよ! 私のことは配慮も考慮もするのに! どうしてクレルだけ問答無用で殺そうとするのよ?!
「納得できないという顔をされてますが、簡単な事ですよ……あなたがレナリア人でこいつがガナン人、それ以下でもそれ以上でもない、理由なんてそれで充分です」
「なっ?!」
そんな……そんな理由あんまりじゃない! クレルだって母親に望まれて生まれてきたはずなのに、どうして!
「我らの光り輝く白い肌と違って、地べたのような汚らしい褐色肌の害虫……見分けがつき易い以外に利点はない」
「がぅ?!」
「どれだけ、ぐっ……私の友達を侮辱すれば……」
なんでここまで……魔法だってこのプレゼントみたいに素敵な使い方もあるのに!
「魔法使いという人種は自らの欲望に忠実で、周囲の被害も考えず、自身の思うままに行動する……生きているだけで社会の害だ」
「違う! クレルはそんなんじゃ──」
「おらっ! その手を放せ!」
「──ディンゴ?」
私が反論しようとしたところで、どこからか飛んできた石が狩人の彼の後頭部に当たる……なぜディンゴが?
「……ここは生意気で躾のなっていないガキしかいないのか?」
頭から血を流しながらディンゴの方に振り返った彼は憤怒の形相で震えた声を発する。
「貴様、こいつが何者かわかっているのか?」
「そんなもんとっくに知ってるに決まってるだろバーカ!」
「……おいガキ、貴様も一応レナリア人だから──」
「──何度も言わせるな! このステハゲ!」
おそらく私と同じように警告しようとしたのだろう彼に向かって再度ディンゴが石を投げる。
「……お前から殺そう」
「っ?! ディンゴ逃げなさい!」
彼の石は防げても、子どもからの罵倒は看過できなかったようで、クレルをその場に放り出しディンゴに向かって行く。
「げほっ、ディンゴ、どうして……」
「うるさいクレル! お前がマヌケだから仕方ないだろ!」
「……なんだ? 人間と虫の麗しい友情ごっこか? ……反吐が出る」
「うっ……くそっ!」
私に戦うための……誰かを護れる力があれば良かったのに、どうして! どうして目の前で知り合いを殺されなきゃならないのよ!
「ディンゴ早く逃げなさい!」
「ディンゴ、僕のことはいいから! 今までのことは許すから!」
「うるさい! いいから黙って逃げろ!」
「……なんだ? 私は今なにを見せられている?」
……この人は本当にクレル達ガナン人を人として見てないのがはっきりとわかったわ。
「ふん!」
「ぶがっ?!」
「「ディンゴ!!」」
ごめんなさい、あなたのこといつもクレルを虐める嫌な子としか思ってなかったわ、できることなら謝りたいの……だから!
「逃げてよ……」
クレルも、なんで逃げずにまだ私のところに来ようとしてるのよ……一番狙われてるのあなたなのよ?
「げぼっ、お嬢様だって左腕を失くしても逃げてないのに、男の俺が! このディンゴ様が逃げられるか?!」
うっ……胸が、腕よりも胸が痛い。どうして男の子はそんなに格好付けたがるのよ……。誰か、誰でもいいから誰か……!!
「助けて……」
「ふん、では死ね──」
『──オ"カ"ァ"サ"ン"』
──そんな音割れした声が聞こえた瞬間……狩人の腹が割かれた。
▼▼▼▼▼▼▼
「はぁはぁ……クレル! 申し訳ないけどもう少し強い魔法を使えないの?!」
「はぁはぁ……ここにある壁や床に使われてるコンクリートや木材程度の対価じゃこれが限界だよ!」
デコボコになった床に躓きそうになりながら走り続けながらクレルに問い掛けるけれど、難しそうね。
「なんとかならないの?!」
「僕にとってなんの価値もないから難しいよ! 前にも教えたでしょ? 魔法や魔物は釣り合う対価がないとダメだって!」
「そ、そうだったわね!」
クレルにとって価値あるものを犠牲にしないと、現段階では強い魔法は使えないのね……仕方ないけれど、今は困ったわ。
「……猟犬の解放申請──受諾」
「っ?!」
まずいわ! 相手がなにかをし始めている!
「悪い子にはまず、力の差を見せないとダメなようですね!」
相手の持つ兵装から凄まじい衝撃がこちらに向かってくる!!
「危な──」
──あれ、私空を飛んでる? なんで……クレルは? クレルは無事なの?
「あっ……」
クレルが居ない? いや、私の左腕が……ない。
「……あぁぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁ!!!!!!!!」
痛い痛い痛い痛い熱い痛い熱い熱い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い痛い熱い熱い痛い熱い痛い痛い痛い痛い痛い熱い!!!!!!!!!!!
「アリシアっ?!!」
「っ! クレル来ちゃダメぇ!!」
今そこに狩人が来てるから、ダメよ! 私は放っておいて逃げて!
「クソっ! 『我が願いの──ぶっ?!」
「させねぇよ」
「クレル?!」
私を助けようとしたクレルが顔を掴まれ持ち上げられる……やめてよ、クレルは何も悪いことしていないじゃない!
「やめて! クレルを放して!」
「……驚きましたね、片腕を失ってもなお、この害虫を庇うとは……お嬢様のおままごとだったと庇えなくなるのですが?」
なんで、どうしてよ! 私のことは配慮も考慮もするのに! どうしてクレルだけ問答無用で殺そうとするのよ?!
「納得できないという顔をされてますが、簡単な事ですよ……あなたがレナリア人でこいつがガナン人、それ以下でもそれ以上でもない、理由なんてそれで充分です」
「なっ?!」
そんな……そんな理由あんまりじゃない! クレルだって母親に望まれて生まれてきたはずなのに、どうして!
「我らの光り輝く白い肌と違って、地べたのような汚らしい褐色肌の害虫……見分けがつき易い以外に利点はない」
「がぅ?!」
「どれだけ、ぐっ……私の友達を侮辱すれば……」
なんでここまで……魔法だってこのプレゼントみたいに素敵な使い方もあるのに!
「魔法使いという人種は自らの欲望に忠実で、周囲の被害も考えず、自身の思うままに行動する……生きているだけで社会の害だ」
「違う! クレルはそんなんじゃ──」
「おらっ! その手を放せ!」
「──ディンゴ?」
私が反論しようとしたところで、どこからか飛んできた石が狩人の彼の後頭部に当たる……なぜディンゴが?
「……ここは生意気で躾のなっていないガキしかいないのか?」
頭から血を流しながらディンゴの方に振り返った彼は憤怒の形相で震えた声を発する。
「貴様、こいつが何者かわかっているのか?」
「そんなもんとっくに知ってるに決まってるだろバーカ!」
「……おいガキ、貴様も一応レナリア人だから──」
「──何度も言わせるな! このステハゲ!」
おそらく私と同じように警告しようとしたのだろう彼に向かって再度ディンゴが石を投げる。
「……お前から殺そう」
「っ?! ディンゴ逃げなさい!」
彼の石は防げても、子どもからの罵倒は看過できなかったようで、クレルをその場に放り出しディンゴに向かって行く。
「げほっ、ディンゴ、どうして……」
「うるさいクレル! お前がマヌケだから仕方ないだろ!」
「……なんだ? 人間と虫の麗しい友情ごっこか? ……反吐が出る」
「うっ……くそっ!」
私に戦うための……誰かを護れる力があれば良かったのに、どうして! どうして目の前で知り合いを殺されなきゃならないのよ!
「ディンゴ早く逃げなさい!」
「ディンゴ、僕のことはいいから! 今までのことは許すから!」
「うるさい! いいから黙って逃げろ!」
「……なんだ? 私は今なにを見せられている?」
……この人は本当にクレル達ガナン人を人として見てないのがはっきりとわかったわ。
「ふん!」
「ぶがっ?!」
「「ディンゴ!!」」
ごめんなさい、あなたのこといつもクレルを虐める嫌な子としか思ってなかったわ、できることなら謝りたいの……だから!
「逃げてよ……」
クレルも、なんで逃げずにまだ私のところに来ようとしてるのよ……一番狙われてるのあなたなのよ?
「げぼっ、お嬢様だって左腕を失くしても逃げてないのに、男の俺が! このディンゴ様が逃げられるか?!」
うっ……胸が、腕よりも胸が痛い。どうして男の子はそんなに格好付けたがるのよ……。誰か、誰でもいいから誰か……!!
「助けて……」
「ふん、では死ね──」
『──オ"カ"ァ"サ"ン"』
──そんな音割れした声が聞こえた瞬間……狩人の腹が割かれた。
▼▼▼▼▼▼▼
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる