執事の嗜み

番外編

執事の敗北5 〚ケヴィン〛

「奉仕の手が止まっていますよ」

　赤く腫れた尻たぶを撫でて囁やけば、彼の脚から力が抜けた。へたりと床に座り込み、眼前の剛直をうっとりと見つめる。恭しく両手を添えて、先端にキス。張り出した部分を丹念に舐めてから、裏筋をやわく唇で食む。下生えに鼻先を埋めて根元に舌を這わせ、今度は付け根からゆっくりと舐めあげていく。
　先端を口に咥えたところで、彼が伏せていた瞳をあげた。潤んで煌めく瞳は情欲に塗れて私を誘う。褒めるように喉を撫でれば、それが嬉しげに細められる。
　焦れるほどにゆっくりと剛直が呑み込まれていく。喉奥さえ私に明け渡した彼が、とろけた瞳で見つめてくる。
　ねだるようなそれに誘われるまま、後頭部を掴んで雄を突き込む。黒い耳が幾度も揺れて、その突き込みの激しさを示す。
　きゅう、と喉奥が締まり、持っていかれる寸前で耐えた。乱れる息をため息で隠して剛直を引き抜いていく。名残惜しそうに舌を這わせる彼が、愛おしそうに先端にキスを落とす。

「鏡に手をつきなさい」

　瞳に過ぎるのは、紛れもない悦び。けれどそれを隠して唇を噛む。わずかに悔しさをにじませる唇を揶揄するようになぞれば、唾液に濡れるそこから紅い舌がちろりとひらめく。
　挑発するように瞳を細めた彼がふいと顔を背けて立ち上がり、鏡に手をついて背を向けた。

　鏡の中の自分から目を逸らし、上体を折って尻を突き出す。
　片脚を覆う薄絹との対比で、剥き出しの脚がやけに眩しい。
　短い白手袋をした手が尻たぶに掛かり、そこを両手で割り広げた。蕾が空気にさらされるだけで身を震わせて、熱い吐息を漏らしながら振り返る。
　羞恥に染まる頬。うるみ蕩けそうな瞳が、剛直を見て、私を見る。困ったように瞳を揺らし、きっときつく睨み上げて、―――蕾のふちに指が掛かった。

　本当はすぐにでも繋がるつもりだった。
　口淫で高められた剛直は鞘を求めて張り詰めているし、淫靡な姿に煽られるばかりだ。
　それでいてすぐには動けなかったのは―――見惚れて、いたからだ。私としたことが。
　恥じらいつつ双丘を割る姿に、声もなく雄を求める淫らさに。
　捩じ込んで揺さぶりたい衝動と、もっと見ていたいという願望に揺れる。動かない私に焦れた彼がいよいよ蕾に指を掛け、てらてらと濡れる粘膜を晒す。

「―――お、使い、ください、だんな、さま……」

　思わず舌打ちが漏れた。
　乱暴に細腰を掴み、前立腺を潰しながら奥まで突き込む。快楽のみを追いかけて、最奥をごじゅごじゅと乱暴に抉る。ひぁっ、まて、ばかっ、と切羽詰まった声がひっきりなしに上がり、痙攣とともに背を反らす。粘膜が搾り取るように絡みついてきて、彼の絶頂の深さを物語る。
　乞われるままに内壁を白く汚しながら、擦り付けるように腰を揺らす。赤く染まるうなじに噛み付いて、ねっとりとそこを舐めあげる。

「ぁっ、ああっ、やぁっ、イって…！イって、る、っ……からぁっ……！」
「そうだな」
「ひぅっ…！なん、でっ…！まっ、やぁあああっ…！」

　逃れようと逃げる腰を掴まえて、そのまま深く深く穿つ。
　片手で鈴のついた乳首を捻り潰し、痛みを宥めるようにくにくにといじる。
　ぬめりが増した内壁の襞をぐじぐじと潰し、嬲り、限界まで引いてはまた角度を付けて抉りこんでいく。
　半ば飛んだ理性のまま、玩具のように彼を揺さぶる。

「存分に使わせてもらおう」

　ふっ、と吐息だけで笑い、耳元で囁く。鏡の中、淫らに濡れた瞳を視線を絡める。
　片脚を抱えて大きく開かせ、しとどに濡れる花芯も嬲る。
　ひくりと頬を引き攣らせた彼の顔は、けれどすぐに快楽に蕩けて。
　知らず上がる口角はそのままに、極上の身体を味わい尽くしていく。


　―――こんな敗北なら、悪くない。