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本編
6 他称ビッチ、油断する
しおりを挟む夏のぎらぎらした日差しから逃げるように体育館倉庫に入ると、なんだかやけに薄暗く感じる。
「篠田ぁ?」と呼んだけれど返事はなく、瞬きをして目が慣れるのを待っていたら、後ろで重い扉が閉まった。
途端にひんやりと感じられる空気に、ぞわりと肌が粟立つのを感じる。
突き刺さるようないくつもの視線に、ピリピリと空気が張り詰めていく。
――あっちゃー、くっそ、油断したなあ。
ずっと気をつけていたのに、ここ最近なかったから気が緩んでいた。
トイレの個室に連れ込まれかけたり、空き教室で囲まれたりなんてこともあったのに、ほんと学習しないよなー、俺。
内心で自分を罵りながら、じりじりとボール籠のほうに回り込む。
できるだけ自然に見えるように、警戒させないようなゆっくりとした動きで――できているかはわかんないけど。
嫌な鼓動を感じながら待つことしばらく。
ようやく暗闇に慣れた目に見えてきたのは、篠田じゃなくて、三人の男だった。
真ん中のはたしか、篠田と初めて話したときに、めちゃくちゃ粘ってきた先輩だっけ?
一回だけとか、舐めるだけでいいからとか、とにかく食い下がられた覚えがある。
残りの二人はたぶん初対面だと思うけど……まあ、たぶん、類は友を呼ぶ的なあれだろ?
こんなところで呼び出した相手を囲んじゃうようなやつなんだろ?
詳細なんて知りたくないね。
あ、あと扉を閉めたやつがもう一人いるのか。
見張り役なのか参加者なのかはわかんないし、後ろに目はついてねーから、顔も確認できないけど。
てことはこいつら、全部で四人?
えー多くね? やばくね?
他称ビッチを薄暗い密室に呼び出す理由っていったい何かなー?
逃げないように閉じ込めて、四人で囲んですることって何なんだろうなー?
心当たりが全ッ然ないなー?
暗いのにいやにぴっちり閉められた扉とか、不自然に中央に積まれているマットとかさー。
なんっか、ろくでもないアレコレしか想像できなくてヤな感じだなー?
「あれー、先輩、篠田知りません?」
平静を装って声を掛けたら、嫌な笑い声が倉庫に響いた。
うっわー悪役っぽい笑い声だな、なんて苦笑いしそうになるけど、物音を隠しもしないのは、それだけ人が来ないからなんだろう。
扉はひとつ。窓はない。
鍵は掛からないはずだけど、俺より体格のいい男四人をぶっちぎって逃げられるか?
一人は扉を押さえてんのに?
……うん、無理ゲー。
「なんかようやくヤる気になったみたいだからさあ、満足できるように人数揃えてやったんだ。感謝しろよー?」
「うーわーめっちゃうれしー……って、なるわけないだろ。あんたらとヤる気なんて微塵も湧いてねーし、湧く予定もねーし。俺帰るんで」
「大丈夫だって、ちょっと穴借りるだけだし。もったいぶんなよクソビッチ」
いやそんな、消しゴム貸すみたいに穴貸せるか!
ちょうど四人いるんだし、二組作って仲良くしろよ! なんなら一対三でもいいよ!
棒も穴も揃ってんだから、俺を巻き込む必要ないだろ!?
そもそも俺はビッチじゃねーし、仮にビッチでも選ぶ権利はあるし、強姦は犯罪なんですよ先輩!
男を強姦して捕まったら、おかーさんが泣きますって!
「強姦? 何言ってんの? 和姦だよ和姦。ビッチに誘われたから、俺たちは善意で欲求を満たしてあげるわけ。わかる?」
「ちゃんと証拠も撮ってやるって。ああこりゃ和姦ですわってわかるよーなやつ」
うっっっわー、痛い。
痛すぎてやばい。
エロ漫画の読みすぎ? AVの見すぎ? フィクションと現実もわからなくなったのか?
ほんとに頭大丈夫?
こんなきったねぇ倉庫で、たぶんゴムとかローションとかもなくツッコまれて、いきなりあんあん喘げるわけねーだろ!
大人しく一人でシコってろ!
「あはは、冗談きっついっすわー。俺にも選ぶ権利はあるんで」
言い返しながらも少しずつ距離を取っていたけど、残念ながら行き止まりみたいだ。
じりじりと下がっていた背中が何かにぶつかって、ぎりっと奥歯を噛み締める。
目の前にはボール満載のボール籠。
投げつけるボールだけはたくさんあるけど、四人突破、できるだろうか?
自慢じゃないけどひ弱だぜ?
こうも障害物だらけだと、自慢の逃げ足も使えないし。
しかもうっかり漏れちゃった本音で、なんか先輩怒らせたっぽい?
嫌な薄笑いもかき消えて、ぎらぎらした目を向けてきている。
――これって、いわゆる、貞操の危機?
いや、なんで男が貞操の危機だよ。
意味わかんねぇっての。
初めてがこんなとこでいきなり4P、じゃなくて5P!? とか、まーじーでー無理だって! 助けて神様!
強姦ヤローが丁寧にほぐしてくれるとも思えねーし、下手するとケツぶっこわれるって。
想像だけで鳥肌モンだって!
「捕まえろ」
いやいやほんと無理だから!
テンプレ悪役が足並み揃えて向かってくるから、とりあえずボールをぶん投げた。
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