15 / 15
ていむスライム3
しおりを挟むまた妙に寒くて目が覚めた。
ああくそ、と眉間に皺を寄せながらベッドをまさぐり、その冷たい感触に飛び起きる。
その拍子でぱさりと毛布が落ちて、冷気がすうっと肌を撫でた。
あいつがいない。
いつも俺が起きるとすぴょすぴょと間抜けな寝息を立てているのに。
毛布をぜんぶぶんどられて、寒くて起きることも珍しくないのに。
慌ててベッドから飛び降りようとしたところで、窓の近くにいるのを見つけた。
こちらに背を向けてぼうっと何かを見つめていて、その頼りない姿に眉根を寄せる。
これだけ寒いのに寝巻きの裾からはすらりとした生脚が覗いていて、見ているだけで寒々しい。
背後に忍びよって抱き寄せると、小さな身体は冷えきっていた。
「おい、何してる」
「あ、ごしゅじんさま、おっはよー」
「まだ夜だから、こんばんはだ。何見てたんだ?」
「えへへー、見て見て、これ、くびわみたい!」
俺の肩に後頭部を預けるようにして、顔いっぱいでふにゃふにゃと笑う。
その指は首に浮かんだ黒い紋様を指していて、思わず眉間に皺を寄せた。
……首輪みたいというのは、果たして喜ぶところなのか。
刻みつけた俺のほうは、罪悪感と昏い喜びとがちょうど半々くらいなんだが。
「ああ、似合ってる。……おそろいだ」
ほら、と同じ紋様の刻まれた左手首を差し出してやると、その手がぎゅっと握られた。
大きな目でまじまじとそこを見つめて、また窓のほうへと視線を向けて―――外が暗いせいで室内を映し込んでいるそれを、鏡のように使っているらしい。
忙しなく視線を行き来させたと思ったら、勢いよく振り向いて思い切り飛びついてくる。
こいつくらい軽ければびくともしないが、驚くからせめて前置きはしろ。
「……お前なあ…………」
「おそろい! はじめて!」
「おーおー、初めて初めて。発音へったくそになってんぞ、落ち着け」
「すき!」
……それは、おそろいが好きと言う意味か、俺が好きという意味か。
ぎゅうぎゅうと抱きついてくる背中をぽんぽんと叩き、そのままベッドに連れ戻す。
ただでさえひんやりとしたスライムの身体が、今はすっかり冷えきっている。
いったいどれだけ眺めていたんだか。
「わかったから、寝ろ。おはようは朝だろ」
「くっついていい?」
「ちょっとだけな」
と言った瞬間俺の腹の上に乗っかって、ぺたりと伏せてふにゃりと笑う。
……それは全然、ちょっとだけじゃないだろ。
昨日こうして眠ったせいで、妙なことを覚えたらしい。
やれやれとため息を吐いて毛布を掴み、スライムを包み込んでやる。
重いし邪魔だし寝づらいが、こうしていると寒くはない。
これも悪くないかと小さく笑って、さらさらした髪をそっと撫でる。
俺の体温に馴染んだ身体を抱きしめていれば、朝までよく眠れそうな気がした。
50
お気に入りに追加
296
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~
金色葵
BL
創作BL
Dom/Subユニバース
自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話
短編
約13,000字予定
人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。
エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない
小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。
出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。
「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」
「使用人としてでいいからここに居たい……」
楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。
「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。
スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。
悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される
白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!?
愛される喜びを知ってしまった――
公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて……
❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾
❀小話を番外編にまとめました❀
✿背後注意話✿
✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など)
❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
いいですねぇ(*´﹃`*)
面白かったです!スライムくんの天然が好き…♡
続き読みたいなー、なんて思います
コメ失礼しました
感想ありがとうございます!!!
続きは今のところないのですが、また思いついたら投稿させて頂きます🙏✨