ぼくはスライム

桃瀬わさび

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きみはスライム 2

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初めに抱いたのは性欲からだが、気づけば深みに嵌っていた。
にこにこと元気で素直なのに、夜は「きもちいー」と淫らにとろける。
事後にくりくりの目で見上げてきては、「ご主人さまも、きもちいーだった?」なんて聞いてくる。
正直言って、くっそかわいい。
売るつもりなんざまったくねーし、万一誰かに取られようもんなら、とにかく全力で取り返す。Sランクの全力で取り戻す。

しかも、ダンジョンでは有能すぎるほどに有能。
初めは一人にさせられなくて連れて行っただけだったが、二回目からは戦力として連れて行った。
物理攻撃は完全に無効。本人いわく、「にゅーっとなってちょっとイヤ」らしい。
雷は「びりびり」するし、炎は「あつい」らしいけど、ぱくりと呑み込めばおしまいだという。
これだけでも反則的なのに、罠の探知もお手の物だ。
ダンジョンの罠に掛かるモンスターを見たことはないが、これもその類の能力らしい。
スライムいわく「なんかいやーなかんじがする」からわかるという。

罠を探知したら作動させて種類の報告、モンスターと出会えば壁役に。
食事なし。排泄なし。セックスあり。野宿のときには枕にもなる。
……控えめにいって最高だ。

パーティへの誘いは相変わらずあるが、こいつがいれば必要ない。
俺は剣も魔法も使えるし、サポートはこいつで十分だ。
むしろパーティに入ったりして、こいつが他の連中に懐いたりするのは……考えるだけで気分が悪い。

しかも、しかもだ。
スライムにしては賢いが、こいつはあくまでスライムだ。
セックスの意味もわかっちゃいねーし、疑うこともまったく知らねー。
「ご主人さまがそうしろって言ってたぜ」なんて言われた日にゃあ、素直に尻を差し出すだろう。そんで俺とするときみたいに「きもちいー」と蕩けるんだろう。

……考えただけでムカムカする。

「いいか、他の人間の言うことは聞くな。わからないことは俺に聞け。そんで何か言われたら俺に報告。わかったか?」
「ん、ご主人さまに、ほーこく!」
「知らない人にはついていくな。違う、俺以外にはついていくな。いいな?」
「ついてくのは、ご主人さま、だけ!」

あってる?と少し傾げたちいせー頭を、がしがしと乱暴に撫でてやる。
わかっているかは微妙なとこだか、離れなければいいだけの話だ。俺が気をつけていれば問題ない。

それに、またしばらくはダンジョンだ。
A級パーティが何組も帰還できなくて、とうとう俺に依頼が来た。
「できればヌシの討伐、無理ならダンジョンのマッピングを出来るところまで」と、世話になっているギルド長から直々にだ。
きっとかなり厳しいだろう。
一人だったら断っていたが、……こいつがいれば行けるかもしれん。
まあ、無理そうだったら引き返せばいい。

頼もしすぎるパートナーを、しばらくがしがしと撫で回した。



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