ぼくはスライム

桃瀬わさび

文字の大きさ
上 下
4 / 15

ぼくはスライム 4

しおりを挟む
「兄様のクラスは何をするの?」

 後ろに控えるシーラに確認する。
私の両手はお父様とお母様に繋がれていて、前方と後方に護衛の方々。

 よって、周囲はザワザワとしているけど、そうなることは最初からわかっていたから、気にしていない。

「殿下のクラスは喫茶室ですね。殿下は給仕をされるそうですよ。姫様発案の毒検知の魔道具も置いてあるそうですから、何か召し上がることができますよ」

「良かったわね、アイリス」

「はい」

 そうか。エルム兄様はウェイターをやるんだ。
 前世の学園祭の、執事喫茶やメイド喫茶の話をしたら、兄様興味津々だったからなぁ。

 兄様のSクラスは、すでに行列が出来ていた。

「まぁ!大盛況ね」

「あ。お待ちしておりました。どうぞ、中へ」

 入口で客の対応をしていたウサギが、アイリスたちに気付き、中へ入るように勧める。

「あら?ちゃんと並ぶわよ?」

「いえ。お見えになったら入って貰うようにと。お席も取ってあります」

「あら、エルムったら。じゃあ、皆さま失礼しますわね」

 お母様が並んでいる生徒たちに優雅に礼をして、教室へと足を踏み入れる。

 並んでいる者たちにしても、王族に並ばれると、落ち着かなくて仕方ないのだろう。

 文句もなく先を譲ってくれた。

 私は並んでいる生徒に、にっこりと笑いかけてから、ウサギにヒラヒラと手を振った。

 ウサギ・・・
うさ耳を付け、執事服のお尻部分にはウサギの尻尾が付いている。

 うさ耳の女執事。
これはあれか。貴族令嬢は足を異性に見せるもんじゃないとかいうせいで、バニーガールと執事服が合体したというやつか。

「アイリス!父上、母上」

 奥の席に案内されると、すぐにエルム兄様がやって来た。猫耳を付けて。

「兄様。猫のお耳」

「ははっ。似合うかい?令息は猫耳、令嬢はうさ耳着用なんだよ」

「兄様、お耳可愛い」

 エルム兄様の猫耳はブルーグレー。髪色に合わせているのかもしれない。

 周囲の猫耳をキョロキョロと見渡していると、金色の猫耳の令息と目があった。

 エメラルド色の瞳をした彼は、柔らかな笑みを浮かべながらこちらに近付いて来る。

「殿下。ご挨拶させてください」

「・・・チッ」

 うん?今、兄様が舌打ちしたような。
でもすぐにエルム兄様は笑みを浮かべて、お父様とお母様を見た。

「父上、母上。紹介します。クラスメイトのアスター・クリサンセマムです」

「クリサンセマム侯爵家のご子息か」

「はい。両陛下にご挨拶申し上げます。そして、愛らしい姫君、お見知りおきを」

 お父様たちに挨拶した後、私に恭しく頭を下げたアスターは、乙女ゲーム『花盗人の日記』の攻略対象のひとりだった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される

白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!? 愛される喜びを知ってしまった―― 公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて…… ❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾ ❀小話を番外編にまとめました❀ ✿背後注意話✿ ✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など) ❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき
BL
俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。 そいつはいきなり俺の唇を奪った。 その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。 いや、意味分からんわ!! どうやら異世界からやって来たイケメン。 元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。 そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに… 平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!? そんなことある!?俺は男ですが!? イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!? スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!! メインの二人以外に、 ・腹黒×俺様 ・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡 が登場予定。 ※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。 ※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。 ※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。 ※完結保証。 ※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。 初日のみ4話、毎日6話更新します。 本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。

処理中です...