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ぼくはスライム 3
しおりを挟むご主人さまが戦うとき、ぼくはかくらんとみがわりをする。
敵のちゅういを引きつけて、ご主人さまに向かう攻撃を、できる限り受けるんだ。
ぼくはニンゲンじゃなくてスライムだから、痛いのだって感じないから。
剣とかヤリはちょっとにゅにゅってなるだけだし、魔法だって吸収できる。
どれかがご主人さまに当たったらすごくたいへんだから、とにかくせっせと走るんだ。
このダンジョンのヌシは、魔法がとくいみたいだった。
ぶつり攻撃ははじめだけで、ぼくに効いてないってわかると、そこから先はずっと魔法。
びりびりってのは、カミナリで、カッて熱くなるのはホノオ。このへんは平気。
苦手なのは、水とばくはつだった。
どういう仕組みかわかんないけど、水はすっぱりとぼくのおててを切り落としちゃうし、ばくはつはぼくの体をちりぢりにする。
離れちゃったところに触ればちゃんと元に戻るんだけど、そんな隙もなかなかない。
んんー、つよい。
「おい、大丈夫か!?」
「だいじょうぶー。ご主人さまは、けがしてない?」
「してねぇ!お前がぜんぶ受けてんだろ馬鹿!」
「へへ、よかったー」
ぼくは攻撃が出来ないから、ご主人さまのたてになりたい。
ご主人さまが怪我しないように、ぜんぶぜんぶ、受けきりたい。
ヌシもそろそろ、たいへんだって気がついたみたい。
死にものぐるいでぼくたちに攻撃をしかけてきて、ぼくの体がちりぢりになる。
ぼくこのままじゃ、ちっさくなっちゃう。
あ、でも、ご主人さまはちっさくてもいいって言ってた。
ならべつにいっかー。
ぶつぶつと何か唱えていたご主人さまが、ヌシに向かって駆け出した。
すぐにそれについていきながら、ほんのちょっとやな予感がする。
あのヌシ、なんで、逃げないんだろう。
なんで攻撃もしてこないんだろう。
まさか。
「ごしゅじんさまっ……!」
ご主人さまの剣がヌシを切り裂くと同時に、ヌシの体がばくはつした。
ぎりぎりで間に滑り込んだけど、ばくはつの威力はすごかった。
はじっこから千切れて飛ばされて、体がどんどん欠けていく。
まるっとぜんぶ呑もうとするのに、呑みきれなくてあふれてきちゃう。
それでも無理矢理呑み込んだら、体が端からくずれ出した。
千切れて飛んだぷにぷにの方から、さらさらと砂に消えていく。
あ、これが、いっぱいを超えるってことなのかな?
「馬鹿!お前、なんで……!」
なんでって、へんなご主人さま。
こうしなきゃご主人さまは死んじゃったのに。
ぼくはご主人さまを守るためにいるのに。
ひとりぼっちのぼくを拾って、たくさんのことを教えてくれて。
あったかくって、やさしくて。
いっしょにいるとさみしくなくて、なのに胸がきゅうっとして。
えっと、これ、なんていうんだったっけ。
あ、そうだ、たしか、
「ごしゅじんさま、すき」
あ。しまった言っちゃだめなんだった。
ご主人さまが困るから、ずっとないしょにするんだった。
ぐしゃりとご主人さまが顔を歪めて、目からぽたぽたと水をこぼす。
あの水、なんて、いうのかな、
いつか、教えて、くれるかな……?
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