ぼくはスライム

桃瀬わさび

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ぼくはスライム 2

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夜はえっちなことをするけど、昼はニンゲンのべんきょうをする。
お金の数えかたとか、自然なあいさつの仕方とか。
だんじょんにもぐっていないときは、ご主人さまはせんせーだ。

「ごしゅ……せんせー、すきってなんですか」
「どこでそんなん聞いてきた」
「んっと、パン屋のマーサが、ご主人さまがすきなんだって。ないしょねって言ってたけど、ないしょってなあに?」

「あーそうかマーサかーーー」とご主人さまがつぶやいて、がしがしと頭を抱えてた。
これはたぶん、困ってるとき。
すきっていうのは、こまること?
ご主人さまがこまること?

「あー、ええと、好きっつーのはだな。相手を想うと胸がきゅうっとしたりとか、離れたくないって思ったりとか、そーゆー気持ちのことだ」
「すきって言われると、ご主人さまはこまるってこと?」
「んんん、いや、一概にそういうわけでもないが、今回は、まあそうだな」

すきっていうのは、胸がきゅうってすること。
離れたくないって思うこと。
それってたぶん、ぼくがご主人さまに思ってること。
ぼくは、ご主人さまが、すき。

でも、すきって言われると、ご主人さまはこまっちゃう。
だから、すきって言っちゃいけない。
ん、おぼえた!

「明日からちょっと大変なとこにもぐるからな。勉強もしばらくお休みだ」
「はーい」

ご主人さまが大変だっていうなんて、よっぽど大変なんだろーな、って。
そう思ったよりもっともっと、新しいだんじょんは大変だった。
道はうにょうにょうねってるし、強いモンスターもいっぱい出る。
ぼくはスライムの中では強いけど、戦うことはとくいじゃない。
丸呑みと吸収しかできないんだから、しょうがない。

「だいじょうぶ?」
「あー、しんどいなぁ。罠も敵も異常だろこれ」
「そっかぁ」

ぼくが戦えればよかったなぁ、って思いながら、ほてほてとワナを確認する。
しんちょうに少しずつ進みながら、だんじょんの奥にもぐっていく。
休むときは交代で、進むときはぼくが前。
モンスターと戦うときは、ぼくが敵のちゅういを引いて、攻撃を受けて、ご主人さまが戦う仕組み。
それでもご主人さまは傷ついて、ぼくはちょっと悲しくなる。

ビリビリしたりぺしゃんこになったり、どくスライムになったりしながら、奥に奥に進んでいった。
このだんじょんは他のみんなが諦めたくらいに難しくて、ご主人さまでもたいへんみたい。
えっちなことをする元気もなくて、疲れ果てて眠ってる。
そんなご主人さまを見てると、胸のあたりがぎゅっとする。

―――ぼくが、戦うこともできたらなぁ

Sランク冒険者のご主人さまには、ぱーてぃの誘いもいっぱいくる。
だんじょんは五人くらいでもぐるのが普通で、ご主人さまは変なんだって。
ひとりでもぐるとあぶないのに、みんなでもぐると安全なのに、ご主人さまはいつもひとりだ。
ぱーてぃの誘いもしらんぷり。
「お前がいるだろ」ってご主人さまは言って、「誰かいたらエロいこともできねーし」って笑って、そのままぼくにずぷずぷしてくるんだけど。

―――ぼくがもっと強かったら、ご主人さまも危なくないのに

むーんと両手を突き出して、カミナリカミナリって考える。
ビリビリのイメージはバッチリなのに、カミナリは全然出てこない。
それにちょっとがっかりしながら、じゅんばんに魔法を試していった。

「ヌシに勝てばダンジョンも終わりだ。あと少しだから、気を抜くなよ」
「うん」

ようやくついたヌシの部屋の前で、ご主人さまが剣を抜く。こくこくとぼくもうなづいてから、むんっと袖をうでまくりした。
昨日ゆっくり休んだし、かいふくはたぶんバッチリだ。
ご主人さまもかいふくしたって言ってたし、つよいヌシでも大丈夫。のはず。

がんばろー、おー!



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