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まっしろ 〚早苗〛
しおりを挟む葵は本当に無垢というか、あまり欲というものを知らない。
きっとそれも生い立ちが関係しているんだろう。
ある意味生きるのに精一杯であったから、とてもその他の欲に頭が回らなかったというところではないかと想像している。
葵は多くを語らないけど、お小遣いはもらったことはなく、じいちゃんがこっそり遺してくれたお金をやりくりしている、と話していた。大学は奨学金を取らないと駄目だとも。
だからこそ、本はもっぱら図書館で借りて、漫画や菓子などの嗜好品には手が回らない。
AVやエロ本なんてもってのほか。パソコンは持っておらず、スマホには不適切なサイトにアクセスできないようにセキュリティがかかっている。
その状態でなんで男同士のやり方を知っていたのかと思えば、「時代小説にはよく男色が出てくるから」という答えだった。
流石に自慰くらいはするだろうにどうしているのかと聞いてみたら、真っ赤になって固まってしまって。
あの反応からしておそらく、不慣れ。どうしても溜まったときだけ出すくらいか、あるいはしたことないという可能性もある。
本当にうぶだ。
この、まっしろな心を、体を、俺の色に染めるのはきっとすごく楽しいだろう。
「今日、一緒にお風呂入ろうか。」
夕食後、ソファに座っていたらちょこんと横に座った葵にキスをして、じっと見つめて囁く。
真っ赤になって、眉を下げて、おろおろと視線をさまよわせて、それがどんなにそそるかわからないんだろう。
もう一度ぺろりとくちびるを舐めて指を絡めれば、焦げ茶の瞳が甘くとろけた。
葵は気づいてないようだけど、スキンシップに弱い。
愛情に飢えていたのか自らも積極的にどこかに触れてくるし、俺から触れると嬉しいと全身で表す。
頬を撫でるとするりと擦り寄るとか、抱き潰したくて仕方ない。
真面目な葵は学校を休みたがらないから、必然的に手加減しなければならないのだけど―――今日は金曜日。明日からは三連休。抱き潰さない手はない。
「ぁ、の……俺、ひとりで、入れる」
「うん。俺が一緒に入りたいんだけど、駄目かな?」
嫌だと言えない葵の、精一杯の拒絶。
そりゃあ、セックスのときは頑なに電気を消させるのに、明るい風呂場で全身を晒すなんて考えられないだろう。
「でっ、でもっ、準備も、してないし……」
「じゃあちょうどいいね。手伝うよ。」
もう言葉が尽きたのだろう、涙目で首を振るだけの葵を強引に連れ去って、脱衣所へと押し込む。
未だに脱ぐ決心がつかないらしい葵を横目にばさりと服を脱げば、また葵の顔が赤くなった。
「ほら、葵も脱ぎなよ。……それとも脱がせてほしい?」
ぶんぶんと頭を振った葵を置いて、先に風呂場へと脚を踏み入れた。
結局、葵が来たのは俺がすべてを洗い終わり浴槽に浸かった頃だった。
タオル一枚で前を隠す姿ははっきり言って扇情的だ。
時間差があったからこそゆっくりと葵を観察できて、これはこれでたまらない。
シャワーを浴びて肌に張り付く髪。触れたら折れそうなほど細い体。耳の先まで赤いのは、俺の視線を感じているからか。
葵は知らない、背中に散った俺の痕。
そういう痕跡を恥ずかしがる葵に気づかれないように、他者への牽制としていつも消えることはない痕が、上気した肌でより紅く染まる。
「洗ってあげようか?」
「ぃ、、いいっ!」
ひっくり返った声に、こちらを見ない瞳。
恥ずかしくて仕方ないのだろう。たまらない。もう我慢なんてできない。
シャンプーを泡立て、うつむき加減に瞳を閉じた葵の背後に忍び寄り、ソープを泡立てて背中を撫でる。
「ひぃ……んっ、」
浴室に反響した声に、葵がさらに赤くなった。
それに構わずに肉付きの薄い体を撫で回す。
ふるふると首を振って抵抗を示し、くちびるを噛んで喘ぎを堪えるけど、浴室に甘い吐息が響く。
きゅっと両方の乳首を摘み上げれば、また甲高い悲鳴が上がった。
「ぁっ、ゆうきぃ……っ」
すっかり勃ちあがった花芯をするりと撫でて、尻のあわいへ指を差し入れる。
くにくにと蕾をいじくれば、抗議するかのように名前を呼ばれた。
きっと、準備をしてないことを気にしているんだろう。
今までよりも強く振られた首に、涙で潤んだ瞳。
「ん。準備するから、鏡に手をついて?」
言いながら有無も言わさずシャワーの栓を捻る。
頭からずぶ濡れにさせながら、鏡に上体を押しやれば尻だけを突き出した格好になった。
慎ましやかな窄まりをいじり、つぷりと人差し指を差し込む。
いつも、こんなに狭いところに入るのかと思うけれど、やわく締め付けるここを早く散らしたい。
その一心で性急にナカを拡げれば、葵が何度も身を震わせた。
✢
少しやりすぎたかもしれない。
あまりにも声を出さないから顔を覗き込んで見れば、ぼろぼろに泣いた葵がいた。
強すぎる羞恥と、快感と混乱。
そんなものでぐずぐずに泣きながら、頬を撫でればそっと顔を擦り寄せてくる。
また、ずくんと欲が膨れ上がった。
もどかしく指を引き抜き、葵を連れて浴槽に浸かる。
冷えた体を温められて安心したように力を抜いた葵を後ろから抱き込んだ。
ぐずぐずに泣いてたくせに、俺に泣かされていたくせに、振り向いて甘えるように肩に顔を埋めてくる。
―――くそ、
本当は軽く温まったらベッドでゆっくりしようと思っていた。
泣かせてしまった分、優しくしようと。
でも、こんなことされて、理性なんか残るはずない。
向かい合うように抱え上げて、尻を割り広げながら強引に先端を捩じ込む。
完全に力を抜いていた葵の柔らかいナカを味わうようにゆっくりと前後させれば、また葵の声が浴室に響いた。
「ぁっ……!あ、つい………」
お湯が少し入ったのか、身を震わせ、俺の首に縋り付く。
きっと、無意識なのだろう。
繋がるときはいつも、出来るだけ多く俺と触れ合おうとして、日頃の恥じらいが嘘のように身を寄せてくる。
少しの隙間さえ嫌がるように。
―――俺も大概、葵にヤラれてる。
「あおい。」
耳元で囁やけば、ふわりと葵の瞳が開いた。
熱にとろけた大きな瞳に、俺が、俺だけが写っている。
ぬちぬちと内壁を味わうと、少し抑えた嬌声が浴室に響き、また理性を奪い去っていく。
「ね、俺のこと好き?」
「すっ、すきぃっ、ゆうきぃっ……!」
「こんなに泣かされても?」
きゅうっと乳首を摘み上げると、ひぃぁっと啼いて湯船が白く染まった。
こくこくと頷いた葵の首に噛み付いて、奥の奥をぐじぐじといじる。
ここが、葵の、弱いトコ。
「ゆぅっ……!ねが、………ぃで」
「んー?」
ねっとりと吸い付くような奥を夢中になって味わっていたら、名前を呼ばれて顔を上げた。
縋り付く手が頬に回って、葵からの、へたくそなキス。
俺の唇を舐めて、食んで、驚きに固まった俺の上でもどかしげに腰を揺らす。
途切れ途切れ、喘ぎ声に混ざる単語を拾えば、わずかみっつの言葉で。
―――ゆうき、おねがい、みないで
舌を欲しがって何度も唇を舐め、奥のいいところを擦り付けるように体を反らして。
羞恥のせいか胸のあたりまで真っ赤に染まり、胸の飾りがつんと尖って刺激を欲しがっている。
―――見ないなんて、有り得ない。
肩を掴んで腰を突き上げ、弱いところをぐじりと潰した。
悲鳴をあげようと開いた口に舌を挿し込み、口蓋を、歯列を、舌で嬲る。
乳首も花芯も欲望のままいじり倒せば、きゅうっと締まったナカに搾り取られるように吐き出していた。
✢
結局、一回で終わるはずもなく、風呂から上がってからはベッドで存分に貪り倒した。
葵は、みだらだ。
無垢で敏感な身体を羞恥に赤く染めて、快楽に啼き、それを与える俺に縋り付いてくる。
好きな体位は、対面座位や正常位。
後背位や背面座位なんかもめちゃくちゃ感じはするのだけれど、正面からくっつくことができる体位の方が好きらしい。
疲れ切って眠り込んだ葵の頬を突きながら、思わず苦笑が漏れる。
白く無垢な葵を染めようと思うのに、結局翻弄されているのは俺の方だ。
後背位で攻め立てて泣かすよりも、正常位で指を絡めてキスをして、ひたすらに甘やかしながら抱きたい。
たまには今日のように羞恥で泣かせたいけど、泣かせた後はいつも以上に甘くとろかしたいと思う。
―――俺がこんなにヤラれてるなんて、気づいてるのかな、この子は。
さっきまでの淫靡さが嘘のような穏やかな寝顔を見ながら、小ぶりな鼻を軽く摘む。
少し空いたくちびるにキスを落として、愛しい身体を抱き込んだ。
ぎゅうっと抱きしめると、寝ていても擦り寄ってくるのが可愛すぎる。
柔らかい髪に鼻先を埋める。
俺と同じシャンプーなのに葵の髪はどこか甘い。
その香りに誘われるように、優しい眠りに落ちていた。
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