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焦燥
焦燥②
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楠ノ瀬は俺の胸にぴとっと頬をくっつけてると、しがみつくように俺の背中に腕を回した。
――大人しそうに見えても実は芯の強い薬ノ瀬がこんな風に抱きついてくる時は……。
俺に何かを訴えたい時なんだと思う。
「……ん、どうした?」
楠ノ瀬の長い髪をゆっくりと撫でながら、俺はできるだけ優しい声で尋ねた。
「……高遠くんが自分であの力を制御できるようになったら、」
楠ノ瀬は俺の胸に顔をうずめたまま、か細い声で言う。
「もう、こんな風に逢うことは……なくなっちゃうんだよね……」
「…………」
「学校で会ったら、挨拶ぐらいはしてもいい? それともまた、全然知らない他人みたいに振る舞わなきゃいけないのかな……」
――『楠ノ瀬の娘のことも、諦めなさい』
祖父さんに言われたことを思い出す。
藍原朔夜というもう一人の「後継者候補」が現れたことによって、俺を見る周囲の人たちの目はいっそう厳しくなるだろう。
俺がダメでも、跡継ぎはいるんだから……。
そんな状況で、もし俺と楠ノ瀬が付き合ったりすれば……それは大きな「弱み」となる。
町の人は俺たちのことをよく思わないだろうし、過去にあったような災厄がもたらされる可能性もある。
――やっぱり、楠ノ瀬とは離れたほうがいいのか……?
「なに、考えてるの……?」
楠ノ瀬が顔を上げて俺の顔を見つめていた。長い睫毛で縁取られた瞳が少し濡れている。
「この間、高遠くんが付けた痕……もう消えちゃったんだ」
少し笑いながら言った楠ノ瀬が襦袢の襟を開いて、白い胸元を露わにした。
柔らかそうに盛り上がった双丘に、思わず目が釘付けになる。
「また、付けて欲しいの……。それを見ると、高遠くんが近くにいる気がして……安心するから」
はにかみながら言う楠ノ瀬が可愛くて……。
俺は自分の唇を彼女のそれに重ねた。
先日のような乱暴な触れ方ではなく、壊れ物を扱うみたいに優しく触れる。
ちゅ、ちゅ、と互いの唾液で湿っていく唇の音が静かな部屋の中に響いた。
「ん、もっと……」
どちらからともなく漏れた声をきっかけに熱を帯びた舌が絡まる。
くちゅ、くちゅ……二人きりの部屋で反響する水音がだんだん大きくなっていく。
俺は楠ノ瀬の頭の後ろに添えていた手を下ろして、量感のある乳房を掬いあげるように持ち上げた。あたたかい。
舌を絡ませたまま、やわやわと胸を揉みほぐした。先端はもう待ちかねたようにぷっくりと固く尖っていたが、俺は敢えてそこには触れないで、柔らかな胸の感触を味わっていた。
「……高遠くん、やっぱり意地悪」
唇を離した楠ノ瀬が俺の顔を上目遣いに見ながら、詰るように言った。
俺はニヤっと笑って、また彼女の紅い唇に吸い付いた。
柔らかな唇を吸いつつ、爪の先で彼女の胸の先端を弾くと、
「あぁ……っ」
満足げな声を漏らした楠ノ瀬が、弓なりに体を反らした。
――大人しそうに見えても実は芯の強い薬ノ瀬がこんな風に抱きついてくる時は……。
俺に何かを訴えたい時なんだと思う。
「……ん、どうした?」
楠ノ瀬の長い髪をゆっくりと撫でながら、俺はできるだけ優しい声で尋ねた。
「……高遠くんが自分であの力を制御できるようになったら、」
楠ノ瀬は俺の胸に顔をうずめたまま、か細い声で言う。
「もう、こんな風に逢うことは……なくなっちゃうんだよね……」
「…………」
「学校で会ったら、挨拶ぐらいはしてもいい? それともまた、全然知らない他人みたいに振る舞わなきゃいけないのかな……」
――『楠ノ瀬の娘のことも、諦めなさい』
祖父さんに言われたことを思い出す。
藍原朔夜というもう一人の「後継者候補」が現れたことによって、俺を見る周囲の人たちの目はいっそう厳しくなるだろう。
俺がダメでも、跡継ぎはいるんだから……。
そんな状況で、もし俺と楠ノ瀬が付き合ったりすれば……それは大きな「弱み」となる。
町の人は俺たちのことをよく思わないだろうし、過去にあったような災厄がもたらされる可能性もある。
――やっぱり、楠ノ瀬とは離れたほうがいいのか……?
「なに、考えてるの……?」
楠ノ瀬が顔を上げて俺の顔を見つめていた。長い睫毛で縁取られた瞳が少し濡れている。
「この間、高遠くんが付けた痕……もう消えちゃったんだ」
少し笑いながら言った楠ノ瀬が襦袢の襟を開いて、白い胸元を露わにした。
柔らかそうに盛り上がった双丘に、思わず目が釘付けになる。
「また、付けて欲しいの……。それを見ると、高遠くんが近くにいる気がして……安心するから」
はにかみながら言う楠ノ瀬が可愛くて……。
俺は自分の唇を彼女のそれに重ねた。
先日のような乱暴な触れ方ではなく、壊れ物を扱うみたいに優しく触れる。
ちゅ、ちゅ、と互いの唾液で湿っていく唇の音が静かな部屋の中に響いた。
「ん、もっと……」
どちらからともなく漏れた声をきっかけに熱を帯びた舌が絡まる。
くちゅ、くちゅ……二人きりの部屋で反響する水音がだんだん大きくなっていく。
俺は楠ノ瀬の頭の後ろに添えていた手を下ろして、量感のある乳房を掬いあげるように持ち上げた。あたたかい。
舌を絡ませたまま、やわやわと胸を揉みほぐした。先端はもう待ちかねたようにぷっくりと固く尖っていたが、俺は敢えてそこには触れないで、柔らかな胸の感触を味わっていた。
「……高遠くん、やっぱり意地悪」
唇を離した楠ノ瀬が俺の顔を上目遣いに見ながら、詰るように言った。
俺はニヤっと笑って、また彼女の紅い唇に吸い付いた。
柔らかな唇を吸いつつ、爪の先で彼女の胸の先端を弾くと、
「あぁ……っ」
満足げな声を漏らした楠ノ瀬が、弓なりに体を反らした。
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