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噂
噂①
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週が明けて、俺は一週間ぶりに学校へ来ることができた。
祖父さんが手配したのか、欠席の理由はインフルエンザにかかったことになっていた。
「なぁなぁ、高遠」
昼休み。
同じクラスの仁科が、ニヤつきながら話しかけてきた。
仁科は一年の頃から同じクラスで比較的よく喋るクラスメイトだ。クルクルと柔らかそうな茶色い髪の毛が特徴的な男である。
「お前さぁ、隣のクラスの楠ノ瀬さんと付き合ってんの?」
「……え?」
――なんで、仁科の口から楠ノ瀬の名前が?
驚く俺を尻目に、仁科が続けた。
「何だよぉ、水くさいじゃんかよぉ。カノジョできたんなら教えてくれよなぁ」
仁科は体をくねくねと捩りながら、俺の肩を小突いた。
「いや、付き合ってるってわけでもないんだけど。……なんで、知ってるんだ?」
正直なところ、俺と楠ノ瀬の関係は説明が難しいのだが……。
だからこそ、どうして仁科が楠ノ瀬の名前を出してきたのか、不思議だった。
校内ではあやちゃんの目もあって、楠ノ瀬と大っぴらに口を利くことなんてほとんどないというのに――。
「あー……S高の友達から回ってきた」
仁科が斜め上を見やりながら、なぜか決まり悪そうな様子で言った。
「S高……?」
――嫌な予感がした。
俺たちの通うこの学校は私立の進学校で家からも遠いし学費も高い。だから同じ町から入学したのは楠ノ瀬と俺ぐらいのものだ。
一方のS高は俺たちの町の近くにある公立高校で、中学の同級生たちはほとんどがS高に通っている。
俺が楠ノ瀬の家に出入りしているところでも見られたのだろうか……?
「でも楠ノ瀬さんって大人しそうな顔して大胆だよなぁ……胸もでけぇし。高遠、いいよなぁ」
噂の出どころについて勘繰る俺の横で、仁科が頭の後ろで腕を組みながらイヤらしい笑みを浮かべている。
――なんでお前が楠ノ瀬の胸がデカイことを知ってるんだよ……!?
「……仁科。お前さっき『S高から回ってきた』って言ってたけど……。一体、なにが回ってきたんだ?」
仁科の言い回しに違和感を覚えた俺が問い詰めると、
「ん? いやぁ、まぁ……大したもんじゃねぇよ」
仁科が口を濁しながら、目を泳がせた。
俺のことを敢えて見ないようにしているみたいだった。
――明らかに怪しい……。
「おい、仁科!!」
俺はくねくねと落ち着かない仁科の肩を掴んだ。ギリギリと指に力を入れていく。
「なんだよ、高遠……痛い、って……!」
仁科が顔を歪めながら抗議してくる。
「じゃあ、教えてくれよ……なんで、俺と楠ノ瀬が付き合ってると思ったんだ?」
俺ができる限りの低い声で凄んでみせると、
「……いいけど、怒らないでくれよ。オレがやったわけじゃないんだから……」
ぶつぶつと小声で呟きながら、仁科は自分の制服のポケットに手を突っ込んだ。
祖父さんが手配したのか、欠席の理由はインフルエンザにかかったことになっていた。
「なぁなぁ、高遠」
昼休み。
同じクラスの仁科が、ニヤつきながら話しかけてきた。
仁科は一年の頃から同じクラスで比較的よく喋るクラスメイトだ。クルクルと柔らかそうな茶色い髪の毛が特徴的な男である。
「お前さぁ、隣のクラスの楠ノ瀬さんと付き合ってんの?」
「……え?」
――なんで、仁科の口から楠ノ瀬の名前が?
驚く俺を尻目に、仁科が続けた。
「何だよぉ、水くさいじゃんかよぉ。カノジョできたんなら教えてくれよなぁ」
仁科は体をくねくねと捩りながら、俺の肩を小突いた。
「いや、付き合ってるってわけでもないんだけど。……なんで、知ってるんだ?」
正直なところ、俺と楠ノ瀬の関係は説明が難しいのだが……。
だからこそ、どうして仁科が楠ノ瀬の名前を出してきたのか、不思議だった。
校内ではあやちゃんの目もあって、楠ノ瀬と大っぴらに口を利くことなんてほとんどないというのに――。
「あー……S高の友達から回ってきた」
仁科が斜め上を見やりながら、なぜか決まり悪そうな様子で言った。
「S高……?」
――嫌な予感がした。
俺たちの通うこの学校は私立の進学校で家からも遠いし学費も高い。だから同じ町から入学したのは楠ノ瀬と俺ぐらいのものだ。
一方のS高は俺たちの町の近くにある公立高校で、中学の同級生たちはほとんどがS高に通っている。
俺が楠ノ瀬の家に出入りしているところでも見られたのだろうか……?
「でも楠ノ瀬さんって大人しそうな顔して大胆だよなぁ……胸もでけぇし。高遠、いいよなぁ」
噂の出どころについて勘繰る俺の横で、仁科が頭の後ろで腕を組みながらイヤらしい笑みを浮かべている。
――なんでお前が楠ノ瀬の胸がデカイことを知ってるんだよ……!?
「……仁科。お前さっき『S高から回ってきた』って言ってたけど……。一体、なにが回ってきたんだ?」
仁科の言い回しに違和感を覚えた俺が問い詰めると、
「ん? いやぁ、まぁ……大したもんじゃねぇよ」
仁科が口を濁しながら、目を泳がせた。
俺のことを敢えて見ないようにしているみたいだった。
――明らかに怪しい……。
「おい、仁科!!」
俺はくねくねと落ち着かない仁科の肩を掴んだ。ギリギリと指に力を入れていく。
「なんだよ、高遠……痛い、って……!」
仁科が顔を歪めながら抗議してくる。
「じゃあ、教えてくれよ……なんで、俺と楠ノ瀬が付き合ってると思ったんだ?」
俺ができる限りの低い声で凄んでみせると、
「……いいけど、怒らないでくれよ。オレがやったわけじゃないんだから……」
ぶつぶつと小声で呟きながら、仁科は自分の制服のポケットに手を突っ込んだ。
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