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牽制
牽制②
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「……んっ……あぁ…っ……」
俺の上で腰を振る楠ノ瀬の顔が歪む。
それが苦痛のためなのか、それとも快楽によるものなのか――俺にはわからない。
楠ノ瀬の膣内が、今にも暴発しそうな俺の精を一滴残らず搾り取ろうとするかのように、蠕動している。
相変わらず俺はされるがままだ。
楠ノ瀬が動くたびにぷるんぷるんと揺れる胸にも指一本触れることができないまま、仰ぎ見ているしかない。
「……たかっ……と…ぉ……っ…くん……っ」
喘ぎながら俺の名前を呼んだ楠ノ瀬の動きがにわかに速くなる。
「……っ」
彼女の激しい動きに、俺の腰が溶けそうだ。
どくどく、と痛いくらいに脈打つ俺の肉棒が、持っていかれそうになる。
「お、れ……もぅ…っ」
限界が近いことを訴えると、
「う……んっ……いい…よ……」
楠ノ瀬の甘く乱れた声に導かれて、俺は達した。
「はぁはぁ……はぁっ」
いつもの殺風景な部屋に、俺と楠ノ瀬の荒い息の音が広がる。
じっとりと汗に塗れた楠ノ瀬の裸の上半身が、力尽きたように倒れこんでくる。
みぞおち辺りに、楠ノ瀬のツンと固くなった胸の先が擦れた。
楠ノ瀬はそのまま動かない。
俺の胸に耳を当てて、心臓の音に聞き入っているみたいだった。
今日は三回も出してしまった。
しかも楠ノ瀬の体内で……。
口での交わりだけでは、俺の正気を取り戻せなかったのだ。
――集中できなかった。
俺の意識があちこちに散らばって、何度も自分を手放しそうになった。
あの男のせいで、心が乱れていたのだろうか……?
楠ノ瀬が何度も何度も呼びかけて、繋ぎとめてくれた。その肉体でもって、俺の体内に憑いた『神様』を鎮めてくれた……。
俺はおもむろに手を伸ばすと、楠ノ瀬の頭を撫でた。長い黒髪がしっとりと濡れている。
慈しむようにゆっくりゆっくり撫でていると、
「ふふっ……気持ちいぃ……」
彼女が本当に気持ちよさそうに、小さく笑いながら呟いた。
俺はちょっと意地悪したくなって、
「わあぁぁぁっっ」
楠ノ瀬の頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。
「あ、ちょっと……! もう……髪、ぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ!?」
俺の突然のイタズラに、楠ノ瀬が髪を押さえながら抗議する。
「はははっ」
慌てる楠ノ瀬が可愛くて、こんなたわいないやり取りが楽しくて。
俺が笑うと、
「もぅ……何がそんなにおかしいの?」
楠ノ瀬が口を尖らせて呆れている。
俺は軽く突き出された紅い唇にちゅっ、と音を立てて口づける。
「へ? な、なに……急に」
突然のキスに照れているのか、楠ノ瀬の顔が真っ赤に染まっている。
「なに照れてんの? さっきまでもっとスゴいことしてたくせに」
「うぅ~……それとこれとは別だから!」
楠ノ瀬が俺から離れて背中を向ける。
――ずっと、こうしていられたらいいのにな。
こんな風に冗談言い合って……普通の恋人同士みたいに。
「……あの男に言われたよ」
俺は、楠ノ瀬の細い背中に向かって話しかけた。
「あの男?」
「……徳堂さん」
「えっ……」
驚きの声を上げた楠ノ瀬が振り返って俺を見た。
「『治療』以外で、お前に近づくな……って」
俺は寝転がって天井を見上げたまま続けた。
「……ほんとに、あいつと、結婚するのか?」
「……」
「……好きなのか?」
俺の子供みたいな問いかけに、楠ノ瀬はふるふると大きく首を振った。
「……好きとか嫌いとかじゃないの。決められたことだから」
弱々しい声で答える彼女に、
「いつの時代だよ。家が決めた人と結婚するなんて……」
ついつい詰るように言ってしまう。
「それはそうだけど……でも……」
涙声になった楠ノ瀬が俯く。
だだっ広い部屋の中は静かで、俺たち二人の呼吸音しか聞こえない。
「……じゃあ、高遠くんが何とかしてよ」
ぐすっ、と楠ノ瀬が鼻をすする音が小さく聞こえた。
「……」
どう答えたらいいのか、わからない。
「ごめん。……困らせちゃったね」
楠ノ瀬が無理やり絞り出したみたいな明るい声で言って、立ち上がった。
紅い襦袢を羽織り腰紐を締め直すと、そろそろと襖を開けて部屋を出て行った。
一人残された俺は、天井を見つめながら楠ノ瀬の言葉を反芻していた。
俺の上で腰を振る楠ノ瀬の顔が歪む。
それが苦痛のためなのか、それとも快楽によるものなのか――俺にはわからない。
楠ノ瀬の膣内が、今にも暴発しそうな俺の精を一滴残らず搾り取ろうとするかのように、蠕動している。
相変わらず俺はされるがままだ。
楠ノ瀬が動くたびにぷるんぷるんと揺れる胸にも指一本触れることができないまま、仰ぎ見ているしかない。
「……たかっ……と…ぉ……っ…くん……っ」
喘ぎながら俺の名前を呼んだ楠ノ瀬の動きがにわかに速くなる。
「……っ」
彼女の激しい動きに、俺の腰が溶けそうだ。
どくどく、と痛いくらいに脈打つ俺の肉棒が、持っていかれそうになる。
「お、れ……もぅ…っ」
限界が近いことを訴えると、
「う……んっ……いい…よ……」
楠ノ瀬の甘く乱れた声に導かれて、俺は達した。
「はぁはぁ……はぁっ」
いつもの殺風景な部屋に、俺と楠ノ瀬の荒い息の音が広がる。
じっとりと汗に塗れた楠ノ瀬の裸の上半身が、力尽きたように倒れこんでくる。
みぞおち辺りに、楠ノ瀬のツンと固くなった胸の先が擦れた。
楠ノ瀬はそのまま動かない。
俺の胸に耳を当てて、心臓の音に聞き入っているみたいだった。
今日は三回も出してしまった。
しかも楠ノ瀬の体内で……。
口での交わりだけでは、俺の正気を取り戻せなかったのだ。
――集中できなかった。
俺の意識があちこちに散らばって、何度も自分を手放しそうになった。
あの男のせいで、心が乱れていたのだろうか……?
楠ノ瀬が何度も何度も呼びかけて、繋ぎとめてくれた。その肉体でもって、俺の体内に憑いた『神様』を鎮めてくれた……。
俺はおもむろに手を伸ばすと、楠ノ瀬の頭を撫でた。長い黒髪がしっとりと濡れている。
慈しむようにゆっくりゆっくり撫でていると、
「ふふっ……気持ちいぃ……」
彼女が本当に気持ちよさそうに、小さく笑いながら呟いた。
俺はちょっと意地悪したくなって、
「わあぁぁぁっっ」
楠ノ瀬の頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。
「あ、ちょっと……! もう……髪、ぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ!?」
俺の突然のイタズラに、楠ノ瀬が髪を押さえながら抗議する。
「はははっ」
慌てる楠ノ瀬が可愛くて、こんなたわいないやり取りが楽しくて。
俺が笑うと、
「もぅ……何がそんなにおかしいの?」
楠ノ瀬が口を尖らせて呆れている。
俺は軽く突き出された紅い唇にちゅっ、と音を立てて口づける。
「へ? な、なに……急に」
突然のキスに照れているのか、楠ノ瀬の顔が真っ赤に染まっている。
「なに照れてんの? さっきまでもっとスゴいことしてたくせに」
「うぅ~……それとこれとは別だから!」
楠ノ瀬が俺から離れて背中を向ける。
――ずっと、こうしていられたらいいのにな。
こんな風に冗談言い合って……普通の恋人同士みたいに。
「……あの男に言われたよ」
俺は、楠ノ瀬の細い背中に向かって話しかけた。
「あの男?」
「……徳堂さん」
「えっ……」
驚きの声を上げた楠ノ瀬が振り返って俺を見た。
「『治療』以外で、お前に近づくな……って」
俺は寝転がって天井を見上げたまま続けた。
「……ほんとに、あいつと、結婚するのか?」
「……」
「……好きなのか?」
俺の子供みたいな問いかけに、楠ノ瀬はふるふると大きく首を振った。
「……好きとか嫌いとかじゃないの。決められたことだから」
弱々しい声で答える彼女に、
「いつの時代だよ。家が決めた人と結婚するなんて……」
ついつい詰るように言ってしまう。
「それはそうだけど……でも……」
涙声になった楠ノ瀬が俯く。
だだっ広い部屋の中は静かで、俺たち二人の呼吸音しか聞こえない。
「……じゃあ、高遠くんが何とかしてよ」
ぐすっ、と楠ノ瀬が鼻をすする音が小さく聞こえた。
「……」
どう答えたらいいのか、わからない。
「ごめん。……困らせちゃったね」
楠ノ瀬が無理やり絞り出したみたいな明るい声で言って、立ち上がった。
紅い襦袢を羽織り腰紐を締め直すと、そろそろと襖を開けて部屋を出て行った。
一人残された俺は、天井を見つめながら楠ノ瀬の言葉を反芻していた。
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