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随分と派手な音楽と共に入場した王族はまあ眩しい。
王の横に並んでいる第一王子と王妃の横に並んでいる第二王子の金の髪は輝き、青い瞳は透き通ったガラス玉のようだ。
滅多に見ない容姿につい見惚れていると、横にいた妹がふらつく。
「ミッシェル?」
「そんな……」
唖然としたように呟くミッシェルの顔は真っ青だ。
「どうしたの? 大丈夫?」
「お姉様……おねえさま……第一王子の婚約者に、は……」
「ミッシェルっ!?」
ふらりとミッシェルの身体が動いたと思ったらそのまま前に倒れようとしたところを慌てて支える。
しかし、気を失ったミッシェルの身体は重く、私まで倒れかけ膝を打ってしまった。
近くにいたキースもこちらに気づき、ミッシェルの背中に手をやる。
「一体どうしたんだ」
「分かりません、もしかしたら体調が悪かったのかもしれません」
周りは王族を見ているからか目立っていないが、このままでは騒ぎになってしまうだろう。お母様も気づいたようで、公爵と一緒にやってくる。
「キース、ミッシェル嬢を休憩室に運んであげなさい」
「いいえ、お手を煩わせるわけには……」
「突然のことですから、大丈夫ですよ」
そう言ってキースはミッシェルを横抱きで持ち上げる。
いくら女子とはいえ、ドレスを着たミッシェルを軽々とお姫様抱っこするなんて……
公爵家とはいえ鍛えているのか、男性はこんなものなのか。同年代の男性にあまり関わらないので、驚いた。
「アリア、申し訳無いけど、第一王子に挨拶しに行ってきてくれないかしら。ミッシェルはこのまま馬車までお願いするから」
「分かりました、お母様!」
きっと、王様は母がなんとかするだろうと、第一王子に駆けてくとすでに令嬢の人だかりで近寄れない。
あー、どうしよう、早く戻らなきゃいけないのに! 邪魔だわ!
令嬢を押し退けて進んでいく。
正直、令嬢らしかぬ行為だけど、緊急事態だから! と自分を正当化する。
ぐいぐい進んでいると無理やり進みすぎたのか、後ろから背中を押されてしまい王子の前に出てしまった。
「あ……っ!」
人だかりを抜け、王子の前に出てしまった私に視線が集まる。
何故みんな王子から少し距離を開けて集まっているんだ……。
「突然失礼しました。この度はお招きいただきありがとうございます。私、シュタワイナ家長女のアリアと申します」
慌ててスカートを掴み、視線を下げると周りがざわっと声をあげたことに驚く。
あのシュタワイナ家の……、あの姉妹のお姉様だなんて……と聞こえる声に動揺する。
私たちは一体何がそんなに有名なのか。これは深窓の令嬢というだけでは無い。
戸惑っていると、王子が一歩私に近づいたのが見えた。
王の横に並んでいる第一王子と王妃の横に並んでいる第二王子の金の髪は輝き、青い瞳は透き通ったガラス玉のようだ。
滅多に見ない容姿につい見惚れていると、横にいた妹がふらつく。
「ミッシェル?」
「そんな……」
唖然としたように呟くミッシェルの顔は真っ青だ。
「どうしたの? 大丈夫?」
「お姉様……おねえさま……第一王子の婚約者に、は……」
「ミッシェルっ!?」
ふらりとミッシェルの身体が動いたと思ったらそのまま前に倒れようとしたところを慌てて支える。
しかし、気を失ったミッシェルの身体は重く、私まで倒れかけ膝を打ってしまった。
近くにいたキースもこちらに気づき、ミッシェルの背中に手をやる。
「一体どうしたんだ」
「分かりません、もしかしたら体調が悪かったのかもしれません」
周りは王族を見ているからか目立っていないが、このままでは騒ぎになってしまうだろう。お母様も気づいたようで、公爵と一緒にやってくる。
「キース、ミッシェル嬢を休憩室に運んであげなさい」
「いいえ、お手を煩わせるわけには……」
「突然のことですから、大丈夫ですよ」
そう言ってキースはミッシェルを横抱きで持ち上げる。
いくら女子とはいえ、ドレスを着たミッシェルを軽々とお姫様抱っこするなんて……
公爵家とはいえ鍛えているのか、男性はこんなものなのか。同年代の男性にあまり関わらないので、驚いた。
「アリア、申し訳無いけど、第一王子に挨拶しに行ってきてくれないかしら。ミッシェルはこのまま馬車までお願いするから」
「分かりました、お母様!」
きっと、王様は母がなんとかするだろうと、第一王子に駆けてくとすでに令嬢の人だかりで近寄れない。
あー、どうしよう、早く戻らなきゃいけないのに! 邪魔だわ!
令嬢を押し退けて進んでいく。
正直、令嬢らしかぬ行為だけど、緊急事態だから! と自分を正当化する。
ぐいぐい進んでいると無理やり進みすぎたのか、後ろから背中を押されてしまい王子の前に出てしまった。
「あ……っ!」
人だかりを抜け、王子の前に出てしまった私に視線が集まる。
何故みんな王子から少し距離を開けて集まっているんだ……。
「突然失礼しました。この度はお招きいただきありがとうございます。私、シュタワイナ家長女のアリアと申します」
慌ててスカートを掴み、視線を下げると周りがざわっと声をあげたことに驚く。
あのシュタワイナ家の……、あの姉妹のお姉様だなんて……と聞こえる声に動揺する。
私たちは一体何がそんなに有名なのか。これは深窓の令嬢というだけでは無い。
戸惑っていると、王子が一歩私に近づいたのが見えた。
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