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第一次大陸最南端戦争

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第24融合暦450年代初頭。新たな惑星が融合を果たそうとしていた。

惑星の住人の言葉で、ナワタと呼ばれる星は100年以上かけて、ゆっくりと融合大陸に併合され、まさに完全な融合を果たす寸前であった。

融合大陸に新たな惑星が併合される時、膨大なエネルギーと共に融合石という鉱石がその境目に発生する。その融合石こそ、融合大陸における文明発展の要であり、その素材としての汎用性の高さからあらゆるものに利用されている。

この融合石は新たな星の融合と共に発生するわけであるが、融合石はその保有量によって国家としての国力が左右されるほどの鉱石であり、覇権を狙う国家はもちろんのこと、それを阻止したい国家としても新たな発生源を放置しておくというわけにはいかなかったのだ。

また、新たに併合された惑星の住人がどのような文明であるかも状況を大きく左右する。星自体が強大な軍事国家を形成している場合や、特定の神性により支配されている場合など、惑星の併合と共に隣接する国家への武力進出を試みる国家も多いためだ。

そのような事情から、惑星併合に際していち早く軍事力の行使を行う周辺国家も多く存在し、その都度大規模な戦乱として歴史に記録されるのである。

第24融合暦450年代初頭、惑星ナワタの併合に端を発した南端国家群の第一次武力侵攻は、ナワタを支配する日和神聖帝国の思わぬ抵抗にあう。日和神聖帝国第45代皇帝はナワタ併合前から周辺国家が軍事侵攻の準備を着々と進めていることを察知していた。



融合大陸における惑星併合においては、完全に併合されるまで併合の境目が空間として非常に不安定な状態になり惑星内への侵入も脱出も困難になる。そんな状況でも100年以上の時間の中で少人数ながら外部への脱出と連絡を行える装置の開発に成功した日和神聖帝国は密かに密偵を外部に放っていたのだ。

その密偵の情報によりある程度外部の状態と融合石の存在などを知り得た日和神聖帝国は第45代皇帝の名のもとに、できうる限りの戦力増強を図ったのである。その数、宇宙戦艦(融合大陸内では空中戦艦としてしか使えない)にして3000隻、戦闘機にして3万機、多脚戦車7万機、兵力1億2千万人という惑星間における総力戦に耐えうる兵力であった。

かくして、第一次武力侵攻時、融合大陸の科学力によって数段進んだ科学力を持つ南端国家群の先鋒であった南東ソルザ連合は想像以上の打撃を受けることとなる。ソルザ連合の保有する超ド級地上戦艦1隻とその護衛艦隊約200隻が戦闘で大破し、歩行戦車1万機が大破もしくは戦闘不能、20万人以上の兵士が死傷という大損害となったのである。



ただ、日和神聖帝国も無傷ではすまなかった。空中戦艦約300隻がソルザ連合の超ド級戦艦の主砲の前になすすべもなく轟沈し、戦闘機は融合境界線における重力場変換現象について情報収集が足りず融合境界線に接触した戦闘機が次々と墜落したことと融合境界線外からの長距離射撃により2000機を損耗したのだ。とはいえ、多脚戦車はある程度、南東ソルザ連合兵器群との戦闘で対等に渡り合うことに成功し、南東ソルザ連合の兵士にくらべ、日和神聖帝国の兵士は小柄で非力だったものの、小型火器の発達が南東ソルザ連合に勝っていたおかげでこちらも対等程度に戦闘を行うことが可能だったのだ。それでも多脚戦車1万2百機、歩兵34万人の死傷という、長期的に戦闘を続けるには非常に厳しい戦局には変わりなかった。



第一次武力侵攻において南東ソルザ連合は一旦の撤退を余儀なくされたが、明らかに余力を残して撤退しており、それは第二次武力侵攻において手加減はしないという意思を如実に表していた。また、第一次武力侵攻における南東ソルザ連合はいわば斥候的立場であり、日和神聖帝国の力を図るための試金石にすぎなかったのだ。

南端国家群自体が連合ではないため完全な足並みをそろえることは無い状態ではあったものの、そのすべてを合わせれば総兵力10億人を超える規模であることは確実であり、どれだけ日和神聖帝国が抵抗しようとも戦い続ける限りいつか敗北することは目に見えていた。

とはいえ、日和神聖帝国にも引けぬ事情があった。日和神聖帝国はナワタという星自体を信仰しその核を主神として崇めており、また実際にナワタの主神により発展の恩恵を受けていたのである。その主神の住まう土地たるナワタを他の者に蹂躙されることは宗教上許されざることであったのだ。

そのため、日和神聖帝国第45代皇帝により新たな命がくだされることとなる。「我らが聖地を守り切ることができる武力を開発せよ」と。この命により帝国中の科学者や技術者が総力を挙げて研究にのりだすことになる。この時幸いだったのは融合大陸との併合完了によって融合石の発掘、そして第一次武力侵攻において南東ソルザ連合から鹵獲した大量の兵器を研究することができたことだった。

この研究により、融合石があらゆる物質を言葉通り融合させることができる鉱石であること、融合炉と言われる装置によって、ほんの一かけらの融合石から、膨大なエネルギーを抽出できることが判明したのだ。

ただ日和神聖帝国軍兵器開発本部は、この結果をもって、南東ソルザ連合の兵器と同質のものを作ることは否とした。日和神聖帝国は南東国家群から包囲された状態で併合されたため、資源量において南端国家群に圧倒的に不利な状況にあったためだ。ここから新規兵器の開発は慣れない融合石の扱いや、膨大過ぎるエネルギーによる暴走事故などの失敗を繰り返し難航を極めることとなる。

そんな中、南端国家群による第二次武力侵攻が開始される。この第二次武力侵攻では南東ソルザ連合とヴァルアデール公国、そして、ザゴート企業連合の連合軍で構成されており、超ド級地上戦艦20隻と随伴する兵器群も1万超、兵力にいたっては300万人を超える大艦隊であった。



これに対し日和神聖帝国は防衛艦隊として空中戦艦1000隻、戦闘機1万機、多脚戦車3万機、兵力400万を投入した。日和神聖帝国は数で勝りはするものの、所詮は併合前の旧式兵器の寄せ集めであり十分な兵力とはいえなかった上、南東ソルザ連合以外の国々の兵器は未知の兵器群であり、それらにどれほど対抗できるか未知数だったのだ。

第二次武力侵攻開始1週間で戦局は日和神聖帝国に大きく不利な状態であった。南端国家群側の超ド級地上戦艦2隻を大破せしめたものの、帝国側の空中戦艦はすでに400隻が轟沈、戦闘機は6000機が撃墜され、多脚戦車1万機が大破、兵力は240万人にまで損耗していた。



100万人を超える死者の報告を受け、日和神聖帝国第45代皇帝は悲嘆にくれる。「これ以上被害を増やすべからず」、さらに強い皇帝の命が日和神聖帝国軍兵器開発本部にくだされる。停戦は最初から選択肢に無かった、敵が戦いを望んでいるのだから。日和神聖帝国軍兵器開発本部はさらに休みなく、また手段を選ばず開発を進めることとなる。

第二次武力侵攻開始3か月目、帝国側は幾度となく防衛軍に援軍を送り込みなんとか持ちこたえていた。とはいえ軍全体の損耗率は50%に迫り、全滅も視野に入れなければならない状態が迫る。そんな中、日和神聖帝国軍兵器開発本部はとうとう新兵器クグツの開発に成功する。

その製法は、戦線で死亡し損耗した兵士の体を融合石によって縫合し、融合炉による膨大なエネルギーを制御できるまでに改造強化する。またその体を媒介としてナワタの主神の力を持って一度霊魂を呼び戻すのだ。その、呼び戻した魂をいわばAIとして、霊魂搭載式コンピューターとして実装することで高度で緻密な制御を実現するのである。

日和神聖帝国を構成するナワタ人は地球で言う女性しか存在しない。身長150~160㎝が平均であり小柄で非力である、そんな彼女らが馬力換算で300馬力近い力を手に入れ、小型反重力エンジンにより縦横無尽に飛び回るのである。また融合炉を一時的に臨界点近くまで稼働させることにより、小型融合連射砲(フュージョンキャノン)の開発に成功しており、この兵器により地上兵器の主砲クラスのフュージョンキャノンをこの小型な体格に搭載することが可能となったのである。



このクグツは量産承認後すぐさま大量の死体回収と共に大量生産され、第二次武力侵攻開始4か月目、初期生産型の2,000体が前線に投入。相対していたヴァルアデール公国軍戦力の約40%を瞬く間に撃滅し、劇的な勝利を飾ることとなる。これに対し南端国家群側は南東ソルザ連合とザゴート企業連合の連合軍で侵攻を開始。もともと友好国ではない彼らは敗北したヴァルアデール公国側から十分な情報収集を行わなかった。そのため、ほぼ無策に近い状態で日和神聖帝国の新兵器に戦いを挑んだのである。

結果、南東ソルザ連合とザゴート企業連合の連合軍は侵攻軍の約60%を失うことになる。ほぼ全滅という屈辱を味わいながら第二次武力侵攻も南端国家群の敗北という形で幕を閉じたのだ。



しかしながら、戦いは終わらなかった。第一次、第二次武力侵攻共に、南端国家群の総兵力からすればほんの一部の戦力を投入したにすぎなかったのだ。とはいえ、無策でクグツを有する日和神聖帝国に侵攻を仕掛けることは南端国家群にとっても危険と認識されたのだ。

この後、日和神聖帝国と南端国家群は散発的衝突を繰り返しながら、ついにはクグツ同士の泥沼の第三次武力侵攻へと続いていくのである。
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