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拾った子犬はナンバー1ホストでした

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さてもどうしてこうなった。

私は助けたはずの青年に、ベッドに押し倒されて丁寧な愛撫を受けている。
あっという間に下着ははぎとられ、何年も他人に触られていないモノを優しく舐められている。


「ま、って♡あっ、だめ…そんなと、こ♡なめちゃあ♡だめえええ♡」

「弘樹さん♡こんなにびちゃびちゃにして♡かわいい…んっ、味も、さいこう♡♡こんな美味しい汁のんじゃったら♡元気になっちゃう♡♡」

「やあ♡♡じゅるじゅる音らめえ♡元気じゃああん・・ああっ♡もう♡いっぱい元気じゃ、やああ、あああ♡」


強い快楽に頭の中が真っ白になっていく。
彼が「愛してるよ、弘樹さん」なんて甘ったるく囁くを最後に、私は情けなくも意識を失ってしまった。








それは冬の始まりのころだった。勤めていた会社の上司のあまりのクソぶり(パワハラ、セクハラ、モラハラのオンパレードだった)にいよいよぶちぎれた私は、退職届をそのクソ上司に提出(という名のぶち投げた)し明日から有休使わせてもらいますといった旨を、人生でも使ったことがないようドスの効いた声と多少汚い語彙で伝え会社を後にした。


ちなみに私は仏の斎藤と呼ばれていたらしく、後日後輩からのメールには「あの時ほど死を感じたことはなかった。ジョンウ○ックに見えた。」なんて旨の内容が書かれていた。いや、私は仏というほど優しくないし、伝説の殺し屋なんて言われるほどの迫力はない。絶対に。

なぜなら今年めでたくも30歳を迎える私だが、大学生以来恋人がいたことはないし、かといって仕事に邁進して出世をした…わけでもなかった。つまり中途半端な人間なのだ。


「だけど!今こそは!真の自由(期間限定)を手に入れた俺は最強だ!」


そう、有休消化が始まったのだ。(万歳)


朝は10時に起きるし、夜は3時までぐだぐだポケ〇ンをしたり映画を見る。

気が向いた時だけ外出し、適当にコンビニで食料を買い込む。最高だ。

下着や寝間着なんかを買いなおして、日用品も一新させてみた。なんて気持ちがいいんだ。二度と働きたくねえ。





この日は8時ぐらいに目が覚めて、今日は平日…近所のカフェでモーニングでも、と珍しく朝から外出した有休消化1週間目の朝のことだった。


「小倉あんにしようかなー…て、え、あれ、嘘、人!?」


マンションを出たとこで、若気な男が蹲っているのが目に入った。

いくら事なかれ主義のめんどくさがりの人間でも、さすがに人がしんどそうなのは見捨てられないだろう。というか小市民だからこそ見捨てられない。

私は慌てて、彼のもとへと向かい、一瞬戸惑ってから声をかけた。というのも彼の顔が真っ赤なのだ。

これはもう連れていくしかない。

「病院行きましょう」

どうしました?大丈夫?なんて言っている場合じゃない。だって、どうみても大丈夫じゃないだろう。

よく観察すれば息はとぎれとぎれで、汗をびっしょりかいている。首筋に手をかざせば、そこからでも分かるほど熱い。


「近くに病院があります。動けないなら、救急車呼びましょう」


彼は私の言葉に、小さく首を振る。


「どうして」

「ほ、保険証、ない・・・から」


彼のとぎれとぎれの言葉にハッとする。無保険なのか…。確かに国民健康保険は高い。だから払えない若者が最近増えているということを聞いたことがあった。私自身健康体で何年も病院にかかっていないから、全額負担になれば幾ら支払いが発生するかなんて分かったもんじゃなかった。
それに何より、初めての事態に若干パニックを起こしていたということもある。
というか大混乱だ。

だから私は思わずこう言ってしまったのだ。


「私の家ここなんです。せめて、休んでいってください」


もううなずく気力もない彼を何とか背負い、私は見ず知らずの(おそらく)成人男性を家に上げてしまったのだ。







なんとか家に帰ると、ベッドに彼を寝かせ、これまで一度も出番のなかった水嚢を冷凍庫から出してくる。

「頭の下、氷枕入れますからね…あと、熱図りましょう」


ぴぴっと額で体温を測ってしまえば、なんとその温度41・3度!!!
内心焦りまくる私をよそに、氷枕が気持ちよかったのか、彼はうっすらと目を開けて、「ありがとう」とかすれた声でお礼を言ってくれた。

「いいんですよ…あの、少し話せますか?」

「はな、せる」

冷えピタも張っとくかとおでこに張りながら、この熱に心当たりはあるか?と尋ねる。


「きのう、から、風邪ひいてて…たぶん、熱あって、でも仕事休めなくて…朝、帰ろうとしたら」


「倒れた、と。クソ会社じゃねえか」


風邪ぐらいなら働けとかつて言ったクソ上司が脳内でにやりと笑い、私は思わず語気を荒げる。

おっと、失礼と彼を見れば熱に浮かされているのか、あまり聞こえていなかったようだ。


「じゃあ、一応風邪…と、熱さましの薬ならあるんだけど、飲んでみますか?」

私が家にある市販薬を目の間に出せば、彼は小さくうなずいた。


「それ飲んだことあるやつ…飲む」

なら、大丈夫かと、医者やら薬剤師に怒られそうなことを考えながら、私は水と一緒に薬を差し出す。
体を起こす彼の背中を支えながら、薬を飲むのを見届けた。

「ありがとう」

ちゃんとお礼の言える子はえらいなあ。飲み終わったコップを受け取りながら、思わず彼の頭を撫でてしまう。

「ん…」

彼はどこか気持ちよさそうに目を細める。この時私は初めて彼の顔がテレビに出るようなアイドル顔負けのいわゆる「かっこかわいい」というやつであると気が付いた。

(あぶない、あぶなかった。あのまま倒れていたら、よからぬ奴に連れ去られていたぞこの子…)

彼はまた、意識がもうろうとしてきたのか、うつらうつらとしだしたので、私はまたそっとベッドに横たえて布団を整えた。


「ゆっくり休むといいよ」


返事は寝息に代わって聞こえてくる。






夕方を過ぎたころ


「さて、様子見に行くか。目が覚めてたら買い出しいかないとな」


私はリビングでホラー映画を見ていたのを中断して、寝室をそっと開けた。
そして思わず足を止めてしまう。

「あ」


「ども」


どうやら目が覚めていたみたいだ。体を起こして、彼はへにゃりとした笑みを浮かべて私を見ていた。


「よかった、目が覚めたんだ…どうですか?体調は」


「ん、大丈夫。です。助けてくれて、ありがとうございました」


ぺこりと頭を下げる彼に、私はなんだか気恥ずかしくなってくる。こうも、感謝されることがなかったから、くすぐったい感じだ。

「えっと、どうしますか?帰れそうなら、タクシーとか呼ぶし…しんどいなら、まだ休んで行ってもいいし」

私の言葉に彼は少し驚いた顔をした

「じゃあ、えっと、まだ辛いからいていい、ですか?」

「もちろん!そうだ、お腹すいてます?っていってもうどんくらいしか出せないんだけど、鍋焼きうどん…食べます?」


「食べたい!」


ぺかーっと輝く彼の笑顔に思わず、うっとダメージを受ける。一応社会人なので持ち前のうっすらスマイルで返し、彼をリビングへと案内する


「どうぞ、座って。鍋焼きうどんっていってもコンビニのやつだから、すぐできるよ」

「俺、食べたことないです、それ」

「あらあら、きっと感動するよ」

「そんなにー?」


どこか人懐っこい彼の態度に私はいもしない甥っ子の幻影を見てしまいそうになる。

今もテーブル両肘をついて、にこにことしている姿は、まだ軽く熱があってほわほわしているのと相成って実にかわいらしい。子犬力100だ。


「あの、俺、ハルトって言います。おにいさんは?」

ああ、まだ名乗ってなかったかと、私はぺこっと頭を下げ、イマジナリー名刺を出しそうになる。会社員の時の癖が抜けていないようだ。


「私は斎藤弘樹です」

「会社とか、大丈夫?迷惑かけちゃったよね…」

なんと、つらかろうに私の心配をしてくれるとは…最近緩くなってきた涙腺がさらに緩みそうになる。

「元会社員で今は有休消化中…つまり暇人だから構いませんよ」

「そうなんだ、てか弘樹さん俺より年上なんだから敬語やめてよ」

「じゃあ、そうしようかな…それにしてもハルトくんこそ大丈夫?親御さんとかに連絡しなくて」

私の言葉にハルトは一瞬息を止めると、わすれてたー!とスマホを探し出した。

「あれ、えっと、あれー」

「スマホなら、上着の中じゃないかな?そこにつるしてあるよ」


ハルト君は、ありがとっと上着のポケットを漁りだすと、すぐにお目当てのスマホを見つけられたようで、ほっと息を吐いていた。それから、ものすごい勢いで文字を打つと、ピロンと返事が速攻で帰ってくる。

それを何度か繰り返したあと、ハルト君はちょっと困った笑みを浮かべて椅子に座った。

「大丈夫?」

「んーちょっと怒られちゃったけど、大丈夫。仕事は治るまで休みでいいって」

「あ、社会人だったんだね」

「俺、これでも、23だよ!」

「すまない年を取ると若い子の年齢が分からななくなるんだ」

「なんだよそれー」

ハルトくんはおかしそうにケラケラ笑う。そうやって笑っているとやっぱり子供に見えてしまい、私はそれだけは絶対に言うまいと心にしまった。

「さて、うどんできたかなー」

「めっちゃいい匂い!!」








さすが若い。うどんはあっという間に汁まで飲み干され、ハルトくんはとても満足そうにしている。

「これ、俺の好物になったかも」

「それはよかった」


一応解熱剤を飲んでもらい、汗もかいただろうからと風呂をすすめた。

するとハルトくんはどこかぽやんとした顔で私をじっと見る。

「どうしたんだい?」

「あの、俺、また倒れちゃいけないから、一緒にお風呂入ってくれる?」

え、一緒!?とは思ったが、たしかにハルトくんの言うことも一理ある。先ほどピピっと体温を測れば、熱は下がったとはいえ、37.8…まだまだ辛いだろう。

「よし、分かった。一緒に入ろう。しっかり温まって寝れば、きっとよくなるよ」


「うん!」


お湯をためて、「湧き上がりました」とのアナウンスがあった後、私はタオルと下着(新しいものを買っておいてよかった)を用意する。着替えは私の部屋着でいいとハルトくんは言ったけど、きって手も足も私より長いから悲しいことになりそうだ。


あったまることが売りの入浴剤を入れれば、瞬く間にお湯は白濁していく。ちなみにこれは私のややだらしない裸を見られるのが恥ずかしいからだ。いや、だらしないとはいっても、そこまでじゃないはずだが…


「じゃあ、入ろう」

どこか緊張した声色になるのは許してほしい。

「うん!」

私の緊張とは逆にまったく気にした様子のないハルトくんは、がばっと大体に服を脱いでいく



見事に鍛えられた裸があらわになり、もしかしてほんとにアイドル??と思わず感嘆してしまう。


「はやく、冷えちゃうよ弘樹さん」

「あ、ああ、すまない」


私ももぞもぞと服を脱ぎ、浴室に入った。







狭い湯船にぎゅうぎゅうで向かい合って二人で入る。


「なんというか、一緒じゃなくて、浴室の前で私が待機していたほうがよかったね」


ごめん、という情けない私の言葉に、ハルトくんはどこか嬉しそうな顔で首を横に振る。

「一緒に入ってくれ嬉しい…すごく、弘樹さんといると落ち着くから。こんなにゆっくりお風呂に入ったのも久しぶり。俺、弘樹さんに拾ってもらってよかった」


「君が、いいなら…いいけど」

せめて我が家の風呂がもう少し広ければ…と、思わず独り言つ。

「じゃあさ、こうしよう。この体勢ならもう少し足伸ばせるよ」

「え、ええ!」

急に腕を引かれて、私は体勢をぐるりと反転させられる。ぱしゃっと水が跳ねるのに驚いていると、いつの間にやら後ろから抱え込まれるような形になっていた。


「ちょ、ハルトくん、これ」

「ふふ、なんかこの格好さ、恋人みたいだね」


甘ったるい声が耳に直接吹き込まれ、背筋がぞくぞくする。

ハルトくんの腕が私のお腹にまわされ、密着度がさらに上がる。そうなってしまえば自然と尻に当たるのが、ハルトくんのアレで…


「ハルト、くん、あの」


「なあに、もっと温まらないと…ふふ、弘樹さんの耳真っ赤」


からかうように、耳をはむっとかまれる


「ひやあ♡」

「かわいい…すげえ、食べちゃいたい♡」



ハルトくんの手が悪戯にお腹をゆっくりと撫でる。反対の手はなぜか胸をもみ始め、私は頭が沸騰しそうになる。


「やめえ♡さ、さわるの、あっ♡、もまないでえ♡」


「むり♡おっぱいもこんなにふにふにで♡かわいすぎ弘樹さん♡」


「か、かわいく、ないからあ♡」


ダメだ!このままだと勃つ♡勃起しちゃう♡

って、…あ♡ ハルトくんの♡すごく硬くなって♡

「ハルトくん、も、う…でよお?熱、上がっちゃう♡」

「ん、そうだね、弘樹さんものぼせちゃうね、でよっか」

「ん♡」


最後に頭にキスを落とされ、どっちが病人かわからないぐらいふらふらしながら私たちは風呂を後にした







「調子乗ってごめん。弘樹さんすごくやさしいから甘えちゃった」


ハルトくんをベッドに寝かせ、冷えピタを張りなおす。


「んー病気で心細くなったってことにしとくよ…」


「ありがとう弘樹さん…俺、まだちょっと心細くて」


布団をグイっと引き上げ、ハルトくんはこちらをじっと見上げる。子犬力1000では?


「だから一緒に寝てほしいな」


「んんんんー。分かったよ」


狭いベッドで大の男が身を寄せ合って入る。

だいぶ顔色のいいハルトくんにほっとしながら、なんだか疲れたと私はそっと目を閉じた。

次第に睡魔がやってきて、私はそのまま身を任せる。


そんな私をじっとハルトくんが見ていることも知らずに。






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