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第六楽章 北浜高校の夏合宿

一人だった少女は仲間を求める

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「うーん。もうちょっとなんだけどなぁ、、、」

優実は呟いた。もう少しなんか足りない。
曲にはなるだけどもっと吹けるようになりたい。

プロの演奏を聞くとどうも自分に足りないものがある気がする。

「優実ちゃん大丈夫?」

隣に座っていた陣内愛子先輩が話しかけてきた。

「あ、はい!でも、やっぱりもっと自分の中でうまく吹けるような気がして。」

「ほう。あーでもよくわかる他の人の演奏聞くとできる気がするよね。」

「そうなんです。自分の中で理想があるんですけど、、こうなんかバーンってきてびびりってきてどーん見たいな?」

「え?」

「志柿先生の音はふわーと柔らかい感じなんですけど私のは柔らかくないホットケーキみたいな?」

「はぁ、うん、そうなんだ。」

「もうちょっと練習します!
午後から金管で集まるんで。頑張ります。」

「う、うん!そうだね。」

陣内愛子はたまに優実のことがわからなくなる。常にポジティブでなんだかんだ言って周りのことを見てる気がする。

なんか篠宮先輩と似てるんだよなぁと
愛子は思うところがある。

それに少したまにドキッとするような言葉をかけてくる。

「優実ちゃんって小学校から音楽やってるんだよね。」

「はい!幼稚園からピアノやってて辞めて
小学校は金管バンドですね。
中学は帰宅部でした。」

「じゃあ中学の時はやらなかったの?」

「はい!あっでも家に帰るとすぐトロンボーン吹いてましたね。」

「えー勿体無くない?なんで中学やらなかったの?」

すると優実は顔を上げて目線を部屋の扉の方に向けて喋り出した。

ほっぺを人差し指で掻き、
無理矢理元気を出しながら。

「私、その、気づいたんですよね。
一人で吹いてる方が楽かなぁーって。

好きな時に好きなものを吹きたい!!

小学校の時はそつなくこなして特に怒られるような部員じゃなかったんです。」

「そうなんだ。でもなんで高校は吹奏楽部入ったの?」

「いや、、その、、まぁなんというか
ほんの出来心というか、、
愛子先輩、内緒にしてくださいよ。」

「別に話したりしないから大丈夫だよ。」

「あはは、ありがとうございます。
その、、一緒に吹いてくれる仲間が欲しかったんです。家で一人で吹いてても楽しかったんですけどそれを周りに共有する人がいなくて。」

「なるほどね。」

「コンクールでは賞はもちろん取りたいんですけど、でも先輩たちのこと大好きなんで!一緒に吹きたいんです。」

「おーい。ふたりで何話してるの始めるよ。」

すると部屋に入ってきたのは早乙女先輩。
そして後ろについてきて入ったのは
水越先輩だった。

「はーい。」

陣内先輩と優実は元気よく返事する。


その優実の恥ずかしそうに笑うその笑顔は
自然と愛子も笑顔になった。






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