あの音になりたい！ 北浜高校吹奏楽部へようこそ！

第六楽章 北浜高校の夏合宿

下から支える音を①

「やっぱりここのCの音、みんな悪くなりがちだからここはしっかり取りましょう。」

チューバの前田は低音グループに伝えていた。

ここの部屋にいるのはチューバの3人そして
コントラバス、バリサク、バスクラ｡

「うん、そうだね。ここは気をつけよう。」

名瀬先輩は心当たりがあるようで
前田の発言に賛同していた。

今、低音パートで演奏して録音したものを
聞いていた。悪くはないのだが、どうも全体まだまだチグハグで練習あるのみだ｡

「今は便利っすね。スマホがあれば録音できちまう。」

日明が少し感動している｡

「わかるわかる。もう一回聞こう。」

谷川は録音ボタンをもう一回押そうとする。

「あっちょっと待って｡一回こっち聞いてもらっても良い？」

するとコントラバスの貝原先輩が自分のスマホの動画を再生する｡

その動画のタイトルは自由曲「星の旅」を
大阪淀川高校が演奏したものだった。

「えっ！こんな動画あるんですか？」

時田先輩が驚く｡
それもそのはず探してもなかった｡
ネットではオーケストラが演奏してる動画はたくさんあるが高校生が演奏してる動画など
探してもなかったのだ。

「実は栗本先生に渡されたの。低音をよく見といてって、栗本先生から言われたの｡」

貝原は喋りながら動画の再生ボタンを押す｡

「これっていつの？」
斉藤先輩が貝原に聞く。

「2年前の全国大会の映像だよ。淀川高校｡毎年、全国大会に行ってる名門校だしな。」

「貝原、全国大会常連だぞ。参考にするところなんてあるのか？」

斉藤は貝原に聞く｡確かにそれもそうだ。

「あれ、でもこの動画で演奏してる淀川高校のメンバー北浜高校と同じくらいじゃないですか？」

大海はふっと気づく｡北浜高校は37人に対して淀川高校は45人の編成で出ている。

大会メンバーはおよそ55人で出るのが理想だ。だけどその人数より淀川高校は少ない。

「そう！それなんだよ。でもめちゃくちゃ低音が聞こえる。良い演奏はベースがしっかり揃っている。上のメロディーが上手く聴こえるのもそれを支える低音があってのことだと思うんだよね。」

貝原先輩は目をキラキラさせて言う｡

「そうだな。よしっ！じゃあ今から自由曲合わせるか｡」

「はい！」

洸だって頑張ってる。
俺も洸と同じくらい上手くなりたいんだ｡

自分も洸と肩を並べられるようになりたい｡