上 下
61 / 550
第四楽章 中部日本吹奏楽コンクール

一枚の写真。

しおりを挟む
雨宮は朝早く来て、合奏練習で出来なかったところをひたすらに練習していた。

メトロノームをセットしてテンポ通りに忠実に吹けるようにひたすら繰り返す。

吹けるようになるまで吹く。
出来ないところはなんとしてでも完成させなくてはならない。
北浜高校は朝練はない。強制ではないためやりたい人はやる感じだ。
篠宮先輩は朝練はしていないがそれ以外の先輩は毎日ではないが練習してる先輩は多い。

朝のホームルームが始まるのが8時半からなので今は7時半。あと1時間も練習できる。

いつもの席に座って練習していると
となりの篠宮先輩の席に楽譜が入っているクリアファイルから一枚の写真が落ちきた。

「ん?なんだこれ。」
雨宮は手を伸ばし写真を見るようとする、
しかし手に取る前にいったん停止する。

周りを見る。誰も見ていないことを確認する。

「いけないいけない。誰も見てないな。」

見たいような見たくないような、天使と悪魔に囁かれてるような、そのまま裏返しのまま戻そうとする。しかし運悪く窓からの風で写真の表が見えてしまう。


「あっ。」

写真が見えてしまった。

先輩たちが全員並んで写真を撮っていた。
栗本先生が真ん中にいた。

「これ、去年のか。写真は去年の十一月って書いてあるのか。」

今の雨宮と同じくらいの年齢で先輩たちも少しあどけない感じだ。

「コンサート写真かな。先輩たち若いな。」

しばらく見ていると篠宮先輩の隣にホルンを持っている男子生徒を見つけた。

「ん?この人って誰だ。」

見覚えのない人物に首を傾げる。
すると部室の扉がガラガラと大きく音を立ててひとりの女子生徒が入ってくる。
雨宮は慌ててポケットに写真をしまう。

入ってきた部員は百瀬梓だった。

「どうしたの?」

「あっいや。なんでも。」

「ふーん。」と百瀬は自分のクラリネットを
取り出して練習し始める。

「百瀬さんって部室使う?」

「まぁ使うけど。鍵閉めなら私がしとくよ。」

「すまん。じゃあお願いするよ。」

「わかった。じゃあまた部室で。」

「うん。部室で」

雨宮はそさくさと片付け部室を飛び出して
教室に向かう。

「あっ。写真持ってきちまった。」

雨宮は後悔してしまうのと同時に
写真に映っていた男子生徒は誰なんだろうかと知りたくなってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ
恋愛
生前気苦労が絶えず息をつく暇もなかった。 侯爵令嬢を親友に持ち、婚約者は別の女性を見ていた。 所詮は政略結婚だと割り切っていたが、とある少女の介入で更に生活が乱された。 聡明で貞節な王太子殿下が… 「君のとの婚約を破棄する」 とんでもない宣言をした。 何でも平民の少女と恋に落ちたとか。 親友は悪役令嬢と呼ばれるようになり逆に王家を糾弾し婚約者は親友と駆け落ちし国は振り回され。 その火の粉を被ったのは中位貴族達。 私は過労で倒れ18歳でこの世を去ったと思いきや。 前々前世の記憶まで思い出してしまうのだった。 気づくと運命の日の前に逆戻っていた。 「よし、逃げよう」 決意を固めた私は友人と婚約者から離れる事を決意し婚約を解消した後に国を出ようと決意。 軽い人間不信になった私はペット一緒にこっそり逃亡計画を立てていた。 …はずがとある少年に声をかけられる。

涙雨

やと
青春
辛い学校生活に耐えきれなくなって不登校になった主人公ただ自分の好きな絵を描く続ける日々にとある女性と出会う、女性が残した思いを理解し自分の好きを続ける為にそして進学をする為に辛い学校生活に戻る短いお話し。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...