一番悪いのは誰

jun

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王女の味方

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突然後宮に押しかけた俺を、部下の近衛騎士が、
「隊長、先触れもなしに押しかけては駄目ですよ!どうしたんですか?」と後宮担当のゾルジが驚いている。

「至急フェデリカ様にお目通り願いたい。
ハンカチの件と言ってくれれば分かる。聞いてきてはくれまいか?」
と頼むと、
「あ!ローラ様のハンカチ!分かりました、聞いてきます!」と言って同じ後宮担当のレオが走って行った。

「何かあったんですね、隊長。」

「お前達は知ってたのか?魅了の事を。」

「はい、ここの担当になってすぐにフェデリカ様に聞きました。
隊長にはまだ言うなと言われていました。」

「そうか・・・隊長として情けないな…。」

「いえ、隊長が魅了にかかってはいないとフェデリカ様も言っていましたが、まだハッキリと断定は出来ないからと言っていました。
あれだけ毎日近くにいては多少の影響はあるのではないかと。」

「そうか・・・おかしいとは思っていたが、深く追求しなかった…済まない。」

「アレ、かなり強烈らしいですから、多少影響が出てたから追求しなかったんだと思います。ここにいる人間は全員大丈夫ですから安心して下さい。」

「そんなに魅了に掛かっているのは多いのか⁉︎」

「王太子宮はほぼ駄目ですね。でも、ローラ様のハンカチを持っている人は数人いるみたいです。
イヴァン様は時間ないですね。辛うじて完全には堕ちてないって感じらしいです。」

そこへさっき走って行ったレオが戻ってきた。

「隊長、フェデリカ様から許可が出ました。
こっちです、ご案内します!」
と俺を呼んだ。

「ゾルジ、ありがとう。これからもフェデリカ様を頼む。」

「了解です!」と良い笑顔で返事をした。

レオに案内され、かなり奥にまで来ると、

「ここです。」と言ってドアをノックした。

「フェデリカ様、ファビオ隊長をお連れしました。」

「入ってもらって」と中から返事がしたので、

「ファビオ・ギルディー、入ります。」
と言ってから入った。

中へ入ると、フェデリカ様の双子のジーノ様もいた。

「ファビオ、ようやく気付いたのね、良かった、貴方だけ微妙だったのよ。
ジーノは貴方から貸してもらったハンカチで元に戻ったの。」

「え⁉︎ジーノ様も魅了に⁉︎」

ジーノ様が、
「ああ、今まであの人の魅了で側に侍らされてた。フェデリカがハンカチを顔に押し付けた時に頭の中の靄が晴れた。
だが、自分の部屋に行くとまだモヤモヤするからここに避難した。」
と話してくれた。

「ジーノは完全には魅了を抜け出せてないの。何が原因なのか分からない。
ジーノはちゃんと防具をつけてるのに防御出来ない。
でもローラのハンカチがあればとりあえずは以前のようにはならないみたいなの。
部屋に何か仕掛けられてるのか、それとも余程強い魅了をかけられてるのかがまだ分からないから、ここで話しを聞いてるのよ。
ファビオはどうして気付いたの?」

俺はウルーシとロレンの話しを聞いて、ようやく気付いたと説明した。

「あそこそんなに酷いのね…。私はあの部屋に入った事はないの。
あの人自身から出ているから持って生まれたって事は確かなんだろうけど、防具がほとんど効かないのが問題よね…。
お兄様はほとんど魅了されてるし…。
お父様もお母様も私の話しを聞かないからあの人の術に掛かってるんでしょうね。」

「イヴァン様は執務室にいる時だけ、以前のイヴァン様に近いのです。
おそらく執務室の引き出しにローラのハンカチが入っているのだと思います。
それさえ身に付ければまだなんとかなるのではないかと。」

「お兄様、ローラ様のハンカチを持っているの⁉︎」

「私が一枚お渡ししました。刺繍が見事だから欲しいと言われて。」

「良くやったわ、ファビオ!まだお兄様は間に合うわ!今すぐお兄様にハンカチを身に付けるように言ってちょうだい!早く!」

「イヴァン様は王妃様の所へ行って侍女を一人妃殿下に回してもらうと言っておりました。」

「お母様の所・・・とりあえずお兄様の執務室に行って。
あ、ファビオは何枚ハンカチを持っているの?」

「二十枚ほどかと。」

「自分の予備に数枚残して、残りをお兄様の側近に一枚ずつ渡してもらえないかしら?
普段使いのハンカチは私で用意するから。
そのハンカチはお守りとして持つようにしてもらって欲しいの。
もしお兄様が正気になったら聖女様に連絡を取ってもらうわ。
何かハンカチの代わりになるものがないか聞いてもらいましょう。
とにかく急いで、ファビオ!」

そう言われ、急いでイヴァン様の執務室へ向かわされた。

しかしジーノ様も国王も王妃までもとは…国を乗っ取るつもりなのか。
とにかく自分の執務室へと走った。
引き出しの箱を持ち、イヴァン様の執務室へ行くと、イヴァン様は居なかったが側近の次期宰相と言われているアルベルト・バルダートと同じく側近のロジーニ・バーサが執務をしていた。

「あれ?ファビオはリンカ様に付いてるんじゃないの?」とロジーニ。

「俺とパウロの交代制になった。イヴァン様はまだ戻られないのか?」

「まだ戻ってない。それよりその箱はなんだ?」
アルベルトは俺の箱が気になったようだ。

「ハンカチだ。とりあえず渡す。これを毎日使わずに身に付けろ。」
と言い、二人に渡すと急に黙ったまま固まった。

「これは何だ⁉︎」
「これ何⁉︎」
と驚いて俺を見た。

「これは俺の妻が刺繍したハンカチだ。
このハンカチを持っていると魅了の術が解除出来るらしいが、完全には抜けないらしい。
俺はちなみに一度も掛かっていない。」

「魅了ってマジか・・・通りで…。
好きでもなかったリンカ様をある日から好ましく思うようになった。」

「俺もだ。あの日・・・俺達三人でハンカチを貰ったんだ、その後から・・・・」

「「「ハンカチ⁉︎」」」

「お前達それ今でも持ってるのか?見せろ!テーブルに置け!」

二人がハンカチをテーブルに置いた。

「このハンカチは加護が付いてるから使わずにお守りとして持っていて欲しいって言われて渡された…」

「このハンカチの刺繍・・・薬を盛った侍女も持ってた。」

「どうしてお前だけ持ってないんだよ!」とロジーニが聞く。

「ローラ以外からは何も受け取らないと決めている。」

「お前は昔からローラ嬢一筋だよな、でもそのおかげで助かったんだな。
しかしどうして今になって発覚したんだ?」

今日まであった事を二人に説明していた時、
イヴァン様が戻ってきた。
三人がいるのに驚いたイヴァン様が立ち尽くしていた。
俺達三人は持っていたハンカチをイヴァン様の顔に押し付けた。

そして、

「アレ?めっちゃ頭がスッキリした…。何コレ?」



それから俺は今までの事をもう一度説明した。

これでフェデリカ様に強い味方がついた・・・と思う。















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