4 / 36
気持ち悪さの正体
しおりを挟む結局、媚薬を盛ったのはアンナだった。
アンナのポケットに媚薬が入った瓶が入っていたのを発見し捕縛した。
その際のアンナが、
「私はリンカ様の為にやっただけです。
リンカ様が望んでいらっしゃったからリンカ様がお喜びになると思い、やっただけです。」
とキッパリ言っていたが、妃殿下が指示したわけではなかった。
「私はただ、ファビオがずっと私の側にいてくれたら良いのにと言っただけなのに・・・」
とシクシク泣いているのを、イヴァン様が慰めていた。
ヤバイ、短期間での妃殿下専属ではなく、ずっと妃殿下専属にってイヴァン様が言ってしまいそうだと思って焦ったが、
「リンカ、ファビオは私の側近なのだ。
リンカの頼みでもそれだけは譲れない、済まない…。」
と言って下さった…助かった…。
溺愛しているようで、イヴァン様は何故か俺の事だけは妃殿下が何を言っても、離さなかった。
今回のように命の危険があったから俺を妃殿下の護衛にしたが、本心は俺を妃殿下の近くには置きたくなかったのだろう。
それが嫉妬心からなのか何なのかは分からないが。
イヴァン様の妃殿下に対する態度がチグハグな時の違和感の正体がハッキリしなくてモヤモヤする。
溺愛しているのに、甘やかしはしない。
それが普通なのだろうが、何かが引っかかる。
「では、パウロを私に付けて下さいませ。
ファビオとパウロを私の護衛にして欲しいです。
信頼していたアンナが捕まってしまって私、怖くてたまらないの…」
俺はギョッとした。
隊長の俺と副隊長のパウロが二人とも護衛についてしまったら執務が滞る。
何を考えているのだろう、妃殿下は!
「それは出来ないよ、隊長と副隊長二人もリンカには付けられない、それは分かるだろう?警備隊から一人付けるからそれで良いかい?」
「・・・・・分かったわ…。それにファビオが私に付きっきりなのも申し訳ないわ、パウロと交代しながらなら執務にも問題ないでしょ?」
「そうだな、じゃあパウロにも声をかける。
ファビオ、それでも構わないか?」
「私は助かりますが、宜しいのですか?」
「ああ、リンカがそう言っているのだから問題ない。ファビオはパウロと交代しながら護衛をしてくれ。
リンカの新しい侍女はすぐこちらに寄越す。
母上の侍女を一人回してもらう。」
そう言って、イヴァン様は出て行った。
残された俺は、この人と二人きりなのは大問題だと思い、
「妃殿下、新しい侍女が来るまでウルーシを中に入れます。」
と言い、すぐドアの外のウルーシに声をかけようとすると、
「待って!もう少しファビオと二人だけで話したいのだけれど…」
「話しはお聞きしますが、ウルーシを入れてからお聞きします。
有らぬ誤解を与えてしまいますからご了承お願い致します。」
と言い、速攻ドアを開けウルーシを引き込んだ。
「もう!ファビオはいつもそうね。私はファビオとだけお喋りしたかったのに!」
と気持ち悪い事を言っていたが無視した。
体調が悪くなったので休むと妃殿下が寝室へ入ると、
「ハア────、やっと息ができます…」
「何?息を止めてたのか⁉︎」
「はい、ここの空気、悪いので。少し換気しましょう」
と言い、窓を開け外気を入れた。
すると、確かに空気が変わった。
「あれ?なんか空気変わったな。」と言うと、
「本当に隊長は鈍いんですね~ここ、なんか邪悪な感じが半端ないじゃないですか!
こんな所に一日中いられる隊長を尊敬しますよ。」
「何かお香でも炊いてるのか…でも香炉なんてないよな?」
「お香じゃないですよ!妃殿下から湧き出てるんです。あの人が通った後は必ずこんな感じなんですから!」
「体臭?」
「んなわけないじゃないですか⁉︎何か香水か何かじゃないですか?趣味が悪い・・・。
でも前はその香りが嫌いじゃなかったのに突然嫌悪感が沸いたんですよね…。
隊員のほとんどが突然感じたって知ってました?」
「知らなかった…。俺は初めて会った時から妃殿下が苦手だった。免疫ついたんじゃないか、俺は。」
「え⁉︎会った時から⁉︎妃殿下って異常に人気あったのに?まあ、隊長はローラ様一筋でしたからね。」
「ちなみにその嫌悪感はいつからか分かるか?」
「いつだったかな・・・徐々に“俺も俺も”って感じだったからハッキリとは…」
「そうか…。ちなみにウルーシもローラが配ったハンカチって持ってるか?」
「今も持ってます。このハンカチ持ってるとここにいてもなんとか耐えられるんですよ!
なんか浄化してくれる感じ?
だからそのハンカチは使わないでお守り代わりに毎日持ってます!」
「ロレンも?」
「はい。ロレンは気持ち悪くなるとそのハンカチを鼻に当ててます。」
「パウロに毎日持ってろって言われたか?」
「あ、言われた!」
「いつ?」
「最近言われました。毎日必ず持てって。ま、言われる前から持ってたんですけどね。」
「じゃあ残りの隊員も持ってるんだな?」
「多分…失くしてなかったら持ってるんじゃないですか?」
「・・・パウロが来たら確認しよう。持っていない隊員がいたら教えてくれ。」
「はい…隊長、やっぱ何かあるんですか?
何かここ、おかしくないですか?」
「おかしいとは?」
「うーん、なんというか不穏?というか疑心暗鬼?みたいな。
お互いを敵なのか味方なのか見極めてる感じ。探り合ってる感じかな。」
「確かに。特にここは酷いな。俺は結婚式があったから最近は分からなかったが、何か少しずつ澱んでいってたな、ここの空気。」
「一回、ちゃんと調べた方が良いですよ。
ここは本宮とは明らかに空気が違いますから。」
そう言われてみればそうだ。
本宮に行くとやっと呼吸が出来る感じがしてた。
イヴァン様も本宮の執務室にいる時は、妃殿下に対してもここにいる時とは少し態度が違う。
「ここが変なのか?妃殿下がいるから変なのか?」
「どっちもじゃないですか?とにかく何か変です。新しく来る侍女がまたおかしくなったら、この王太子宮は明らかに何かあるって事ですよ。」
ローラに貰ったハンカチを持ってる隊員は妃殿下に対して嫌悪感を持っている・・・。
浄化…してるなら…
考えられるのは・・・“魅了”。
昔からたまに使われる禁術。
魔道具だったり、魅了を生まれ持つ人間が現れたりと、どんなに対策していても不意に現れるその禁術は、聖女の浄化でしか解除出来ない。
だから王族は生まれた時から魅了対策で、何かしらの防具をつけている。
指輪だったりネックレス、イヤリング、腕輪など常に付けているはずだ。
イヴァン様も見えていないだけで付けているはずなのに魅了にかかったのか?
それとも外されたのか?
だが、刺繍が見事だから欲しいと言うからローラのハンカチを一枚渡したはずだ。
でも毎日は持っていないだろう。
執務室の机の引き出しに入れているのか…。
だからあそこでは普通なのか。
俺はずっとローラといたし、ハンカチも毎日持っていた。
だから妃殿下の魅了が効かなかった。
異常に俺に執着するのは“魅了”が効かないからか。
パウロは気付いていたのか…。
と言う事はフェデリカ様も気付いていたのか。
フェデリカ様は言っていた、敵が多いと。
魅了はどこまで広がっている?
おそらく近衛隊の中にも数人魅了にかかった者がいるだろう。
侍女は?メイドは?使用人は誰が魅了にかかっている?
陛下は?
王妃は?
とにかくフェデリカ様と話しをしなければ。
このままではこの国が終わってしまう。
この時初めて事の重大さに気付いた。
顔から血の気が引いた時、パウロが来た。
「パウロ…済まない…隊長として失格だ…。
パウロは気付いていたんだな、魅了に。」
「隊長やっと気付いたんですね。隊長はあまりにも無防備なのに平気で妃殿下の近くにいるのでどっち側なのかイマイチ自信がなかったんですよ。
だったらすぐフェデリカ様の所へ行ってください。」
パウロと交代し、俺はフェデリカ様のいる後宮へと走った。
472
お気に入りに追加
2,389
あなたにおすすめの小説

うーん、別に……
柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」
と、言われても。
「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……
あれ?婚約者、要る?
とりあえず、長編にしてみました。
結末にもやっとされたら、申し訳ありません。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
誤字を訂正しました。
現在、番外編を掲載しています。
仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。
後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。
☆☆辺境合宿編をはじめました。
ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。
辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。
☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます!
☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。
よろしくお願いいたします。

2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる