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自立するため

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私が王都に戻ってから、たくさんの事があった。

エリーさんは王宮で軟禁状態だが、尋問にも素直に答え、お腹の子も問題なく育っているとの事。出産までは出られないそうだ。

エリーさんがノアに何をし、何を飲ませ、何故ここまでの事をしたのかが分かった。

アルバス伯爵が何をしようとしていたのか、
何故そうしようとしたのかも分かった。
私にはその理由は教えてもらえなかったが、陛下方が納得し、誰にもその答えを言わないと決めたのなら私が聞いてはいけない事なんだろう。
マスナルダの間諜2人はまだ捕まっていないが、捕まえる訳でもないらしい。
そして水面下ではマスナルダの王位継承第2位の王弟殿下と陛下が、今のマスナルダ国王、王太子から王位、王位継承を剥奪する為になにやら動いてるとかいないとか。

アルバス伯爵に賛同していた貴族達は軒並み降爵された。賛同していたのは下位貴族がほとんどで、アルバス伯爵も高位の人達には声をかけなかったようだ。
あの薬を使われ、婚約を壊された人達には、申告してきた場合にのみ、調査、審査後、話し合いの場を持てるよう、陛下が進言なさった。

そのアルバス伯爵の処遇も決まった。
アルバス伯爵は離婚後、爵位剥奪、アルバス伯爵家は男爵になり、爵位は息子のゲルト様が継いだが、いつまで続くかは分からないそうだ。
領地は没収され、領地収入も無くなった。
問題になった鉱山は国の管理下となった為、マスナルダも手を出せない。
ジャン様の元婚約者のフィリアさんはパタっと夜遊びをやめたそうだ。

でも解決していない事が2つある。
私に白紙の手紙を渡した人は、エリーさんの想い人の“ダリオさん”だったらしいが、何がしたかったのか分からずじまい。
そして、
エリーさんの子供は誰の子か。
生まれるまで分からない。
もし、ノアの子なら・・・。


ノアの事は今でも好きだし、側にいたい。
こうなる前はただそれだけだった。
でも今はそれだけでは駄目なのだと分かっている。
婚約は破棄されている。
すぐにはノアと婚約は出来ないし、子供のこともある。

だったら私はもっと勉強し、経験を積みたい。
愚かで幼い今の私では、また同じ事を繰り返す。
だから私は決めた。
その事をお父様に相談しようと、執務室の前にいる。

トントン、
「お父様、ララリアです。」

「リアか。良いよ、入りなさい。」

お父様の執務室に入り、お父様とソファに座った。

「どうしたんだい?」

「お父様に相談にきました。」

「相談?なんだい?」

「私・・・留学したいと思っています。
今の私は何も知らない幼い子供と同じだと分かりました。
もっとたくさんの事を経験して、1人で考え、行動出来る大人になりたいのです。
成績が良くても何も分からないままでいたくないのです。
もう19で、本当なら結婚しなくちゃならない歳です。
でも、私は変わりたい。
お父様に頼り、お兄様に頼り、ノアに頼るしか・・・それしか出来なかったから…。
我儘な事を言ってるのは分かります。
それでも、どうかお願いです、私が留学する事を許して下さい。
1年で良いです、私に勉強する機会を下さい。」

「リア、今までのように誰かに世話をしてもらう生活は出来なくなるんだよ?
着替え、入浴、掃除、洗濯、食事、買い物、ボタンが取れたら繕わなければならない、それを1人で全てやるんだよ?
リアにそれが出来る?」

「やります。これから毎日やります。
皆んなに迷惑かけてしまうけど、教えてもらいます。」

「今は返事はしないよ。今言ったこと全て自分で出来るようになったら考えてあげよう。
それでいいかな、リア。」

「はい!私、頑張ります!」


それからはユリアや他の使用人のみんなに掃除や洗濯、針仕事、買い物の仕方を教えてもらった。
失敗ばかりで何一つ上手く出来なかった。
でも、諦めず何回も何回も失敗しながら少しずつ出来る事が増えていった。

その間、お母様はボロボロになった指先に泣き、お兄様は手伝うと言って邪魔をした。
ノアは、誉め殺しとばかりに褒めた。
「ララは偉いね、雑巾絞り上手くなって良かったね!前はビシャビシャだったもんね!」
「今日はバケツの水を溢さなかったんだって?凄いよ!水を少なくすれば良いのに。」
「箒も上手になったって聞いたよ、ちゃんとゴミが集められて良かったね!」
「ララ、卵が綺麗に割れたの⁉︎凄いよ、この前は殻が面白いほど入ってたもんね!」

大概、喧嘩になったけど。

着替えは1人で着れる服を用意してもらって、すぐ着れるようになった。
お風呂は身体はいいけど、髪を洗うのが大変だった。
だからユリアの髪を洗わせてもらって練習した。髪を乾かすのが、あんなに大変だなんて知らなかった。
洗濯はいろんな汚れがあって、洗い方もたくさんあった。
素材によって違うし、石鹸も汚れによって変えたりと、学院の勉強の応用だと分かったらすんなり頭に入った。
でも力がなくてしつこい汚れはなかなか取れない。
体力もつけないと思い、馬車ではなく近場は歩いて行こうとしたら、みんなに止められた。
だから庭や屋敷の中で歩き回った。
楽しかったのは、髪を結う事と市場に買い物に行く事。
買い物に行った時、私もユリアもエプロンをつけたまま買い物に来てしまった時、
偶然にもジャン様に会った。
物凄く驚いた後、満面の笑みで、お茶に誘われてとっても恥ずかしい思いをして、2度とエプロンをしたまま出掛けない事をユリアと誓った。

買い物は勉強になった。
野菜、お肉、お魚、果物、市場でいくらで売られているのかすら知らなかったし、お店によって値段も新鮮さも違うし、天候で値段も変わる。“おまけ”や“値切る”事も覚えた。
平民の人達が行くお店にもたくさん行った。
とても可愛らしい物がたくさんあるのに、値段は物凄く安い事に驚いた。
宝石のようなガラスも、精巧な刺繍も素敵なのに安い!
ユリアに聞いたら、宝石の買えない人はそれらを買ってオシャレするそうだ。
刺繍は孤児院や刺繍の得意な平民の方の作品なのだとか。
貴族はそういったものを持っていると馬鹿にされるから買わないとお店の人が言っていた。

そんな事も知らなかった。

本当になにも知らなかった。
何してたんだろう…毎日何やってたんだろう…なんて勿体無い事をしてたんだろう。
ノアと毎日お喋りして、お茶を飲んで、買い物して・・・・。
恥ずかしい。

ユリアが、
「リア様、反省は帰ってからにして下さい!
買い物、終わらせますよ!次は果物を値切って下さい、負けないで下さいよ、毎回中途半端にしか安くなりませんから!」

「が、頑張ります!」


まだまだ自立までは長そうだけど、少しずつ成長しているような気がして嬉しくなった。













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