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ジャニスの悩み相談
しおりを挟むジャン様の胸で大泣きして、お兄様も大泣きして、兄妹でジャン様に慰めてもらい、やっと落ち着いて、3人でお茶を飲んだ。
「ジャン様、ミレーヌ様の体調は大丈夫なのですか?」
「あ、まだ報告していませんでしたね。
あの後早産で産まれたのですが、それはまた後日にでも話しますね。
今日はリアさんのお話しが先ですよ。
さあ、私に話して下さい。
何が貴方を苦しめたのですか?
苦しめた方を叱ってあげますよ。」
「では私を叱って下さい。
何もかも私が原因だったんです…。
何も知らずに…何もせずに…お酒を飲んで…美味しい物を食べて…遊び呆けていました…。
私がエリー様の婚約者の方の対応を間違えてしまったから…。
それでエリー様とアルバート様は婚約を解消されてしまいました…。
のほほんとしている私を恨むのも仕方ないのです…。
助けると、側にいると言ったのに…私はノアを拒否してしまったし、お父様に何の報告もせず勝手な事をしたと、自分の行動に責任を持ちなさいと叱られてしまいました…。
正論過ぎて反論も出来ませんでした…。
たくさん考えても自信がなくて、誰かに相談したくても自分の事だからちゃんと考えないとと…。
考えれば考えるほど、私が一番悪いのだと思いました…。
だからみんなに謝ろうと思ったら、みんなに反対されて…。
私の顔を見るとノア以外全員悲しい顔をしていて…それが悲しくて…。
謝れば謝るほどみんなが泣くのです…。」
「そうなんですね。
では一つずつ解決していきましょう。
リアさんは最初、ここには何しに来たんでした?」
「療養に来ました。」
「何の?」
「ノアとの事で王都にいたくなかったのです…」
「そうですね。あなたは心を休ませる為に来たのです。
だったら美味しい物を食べて、美味しいお酒を飲むことに何の問題があるのですか?
あんなに元気になったではありませんか。
楽しい話しをして、たくさん笑いましたね。
だったら間違った事はしていませんよ。」
「でもお父様に叱られました…。私が遊んでいる暇があったら、ノアを助けようと思ったのなら何故何もしなかったのだと…。」
「それは間違っています。
ようやく血が止まった傷はまだ動けば出血してしまう状態のものです。
本当の傷ならば、ベッドの上でまだ寝ている期間です。
そんな時に動いてはいけないんですよ。
だからリアさんは、動かなくて正解だったんです。
叱られるのはお父上ですよ。
私が今度叱ってあげます。
次は、えーとエリーさんとアルバートさんといいましたか?
エリーさんという方が、問題の方ですか?」
「はい…」
「アルバートさんはどういった方ですか?」
「エリー様とアルバート様は婚約されていました。
街でアルバート様が体調を崩されたのを偶然お見かけして、少し手を貸しました。
その後態々屋敷にお礼を言いに来てくれた事があったのです。
その時私は何も考えず、私一人で対応してしまったのです。
お兄様かお父様と対応すれば良かったと今は思います。
その時なのかは分かりませんが、アルバート様は私に好意を持たれたそうです…。
それが原因で婚約を解消されたそうです…。」
「なるほどなるほど。
リアさん、リアさんは勘違いしています。
アルバートさんがリアさんを好きになったのは二人きりになったからではないですよ。
きっと優しく気遣ってくれたからですよ。
そして、とっても美しいリアさんに好意を持ったんです。
私でもそんな事をされたら好きになってしまいます。
だから、何もリアさんに悪い所はありません。
二人きりといっても長時間密室にいたわけではないですよね?
おそらくアルバートさんも紳士的な方なのでしょう、リアさんが何の警戒もせずお一人で対応したのですから。
来客の対応になんら問題はありませんよ。
婚約を解消した事は不幸な事ですが、アルバートさんがリアさんに告白したり、手紙を送ったりした事もないんですよね?」
「好意を持たれている事も、その後お会いした事もありません。」
「ならリアさんが謝る要素は一つもありません。あるならそれは、貴方が美しく優しいからです。」
「ジャン様、ふざけないで下さい…」
「ふざけてなどいませんよ、本当の事ですから。」
「そういえば…ノアも同じ事を言っていました…」
「だってそれ以外にないのですからね。
ノアさんは見る目がありますね。」
「フフ、お褒めにあずかり光栄です。」
「もっと褒めましょうか?」
「恥ずかしいから嫌です!」
「ではまた今度。」
「フフ、楽しみにしています。」
「後は・・そうそう、皆さんが悲しい顔をする、という事ですね。
それは当たり前ですよ、リアさん。
皆さんリアさんをとっても心配しているからです。
リアさんはいつ笑いましたか?」
「・・・ずっと笑っていません…。
ジャン様に最後の手紙をお渡ししてから…笑っていません…」
「偶然ですね、私もです。
同じなんて嬉しいですね。
だから私もとても苦しくて久しぶりにあのお店に行ったのです。
そしたらパトリック様が話しかけてくれたんですよ。
とても素敵な方で楽しくお話しさせて頂いたんです。
その夜は久しぶりにぐっすり眠れました。
きっと私も傷が開きかけていたのですね…。
でもパトリックさんに会えたから、傷にガーゼを貼れました。
私が悲しい顔をしていたらリアさんはどうしましたか?」
「心配します。どうしたのだろう、助けたいと思います。」
「それと同じです。皆さん、リアさんを助けたかったのです。
心配で悲しくなってしまったんですよ。
だからリアさんの存在が泣かせているのではありません。
リアさんの事が大好きだから悲しいんですよ。
分かりますか?」
「…分かります。」
「まだ納得していませんね。何が気になりますか?」
「私のせいだと思ってしまうんです…。
私が恨まれなければノアがあんなに傷つけられる事もなかったし…」
「リアさん、過去は変えられません。
ああすれば良かった、こうすれば良かったと思っても現状は変わりません。
リアさんは皆さんに謝ろうと思ったそうですが、謝ったら笑えますか?」
「少しは気が晴れると思います…」
「その後笑えますか?」
「・・・笑えないと思います。」
「では、それはリアさんにとって不正解だという事です。」
「不正解…」
「そうですよ、不正解です。
だって楽しくないのでしょう?」
「はい…楽しくはないですね…」
「リアさん、正しい道に進んでいたら、結果が出た時、必ず楽しくなるものです。
例え悲しい結果でも、リアさんの中で正解であれば必ず楽しくなれるんです。」
「私の中で・・」
「そうですよ、だから笑顔になる道を探しましょう。
納得できましたか?」
「確かに私が謝ったとしても解決はしないし、
エリー様は余計憤慨していたと思います…。
それに・・・私はエリー様が…嫌いです。
今まで他人を恨んだ事も憎んだ事もありませんでした。
なのに今、私はエリー様を憎み、恨んでいます。
自分が原因なのに恨んでいる自分が嫌いでした…」
「それが一番深いところにあるリアさんを悩ませている事ですなんですね…。
リアさんの綺麗な心に、初めて黒色が混じってしまったのが、今リアさんを苦しめている原因なのでしょうね。
例えば、大好きなあの店の料理に、小さなゴミが入っていたとしましょう。
店は満員のお客さんで店長も厨房も大忙しです。
リアさんの前には出来立てでホカホカの美味しそうな料理があるのに、小さなゴミが入っています。
暇ならば店長に言えますが、きっとリアさんは気を遣って声をかけられません。
食べたいけど、食べられない。
店長が動き回りながら、食べないのですか?と聞いてくれますが、すぐ別の場所に行ってしまいます。
リアさんはどうしよう、せっかく作ってくれたのにゴミが入ってるとは言えない。
食べないのも申し訳ない。
でも食べたくない。
もんもんとしますね。
店長も他の人も汗をかいて大忙し。
どうしよう、どうしよう…。
言っていいのかな、忙しいのに言ったら気を悪くするんじゃないのかな。
今のリアさんはそんな状態です。
初めての事で、どうしたらいいのか分からなくてオロオロしている状態なんです。
正解は店長や他の人に声をかければ良いのです。
そんなゴミをいれてしまった事をお店の人に言わなければ、また入ってしまうかもしれない。
言ってもらえた方が対処出来るのです。
だからお店の為に黙る事は不正解なのですよ。
またはゴミをポイっと取って気にせず食べるかです。
リアさんがゴミを取って食べる事はないでしょうから、ハッキリ指摘するというのがリアさんにとっての正解ですね。
という事は、リアさんにとっての料理の中のゴミはエリーさんということになります。
エリーさんを取り出せないのなら、ハッキリ言葉に出すのが正解です。
嫌い、憎い、許せない。
ほら、エリーさんに言う言葉はごめんなさいではないでしょう?」
「凄く…理解出来ました。
私が我慢すれば丸く収まると思っていました。
憎む気持ちを持ってもいけないのだと思いました。
エリー様のした事は決して許される事ではないという事を忘れていました。
謝るべきはエリー様、
ノアと私を貶めたエリー様を許さないし、憎んでいるときちんと言わないと、エリー様、いえ、バウンズ男爵令嬢が、私とノアにした事を肯定したも同然になってしまう…。
私は…間違っていたのですね…。」
「間違っていましたが、落ち込むことなんかありませんよ。
今回リアさんが悩んでしまったのは、リアさんが優しいからであって、正解を導けなかったからといって、リアさんが劣っている訳でもありません。
だってリアさんはまだ19歳なんですよ、経験値がほぼ0です。
ましてや、こんな案件お父様だって初めてだと思いますよ。
それを19歳の娘さんが一人で解決なんか出来る訳がないのです。
ま、偉そうな事を言って、自分もえらい目にあっても未だに解決していないんですけどね。」
「死んでしまおうかと思ったほど悩んでいたのに、ジャン様に全て論破されてしまって…なんだか…恥ずかしいです…」
「リアさん、死んでしまおうなんて絶対に思ってはいけません。
私も怒りますし、パトリックさんも、ほら見て下さい、また泣いてしまいますよ。」
「ごめんなさい、お兄様、また心配かけてしまいました!」
「やっぱりそんな事を思っていたんだな…だからリア1人には出来ないと思って付いてきた…良かった…1人にしないで本当に良かった…」
「リアさん、不安な事はもうありませんか?」
「はい。もうありません。ありがとうございました。」
「たくさん話して喉が渇きました。ユリアさん、お茶を頂けますか?」
ジャン様がユリアにお茶を頼んだ時、ユリアが、
「キャー!あ、ノア様⁉︎」
「「ノア⁉︎」」
「ごめん、なんか入りづらくて…。結構前からいたんだけど…盗み聞きするつもりはなかったんだけど、とても優しい声と話し方でカウンセリングでもやってるかのと…。」
「声をかけてくれたら良かったのに。身体が冷えてしまうわ、早く中に入って。」
「あの、こちらの方はお医者さん?」
突然のノア登場に全員が驚いてしまった。
────────────────────────
お久しぶりの投稿です。
お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
完結までなるべく毎日投稿出来るよう頑張ります。
今後もよろしくお願いします!
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