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復讐に囚われるノア
しおりを挟むノア視点
アルバート殿からの話しを聞いて確信した。
エリーはララを憎んでる。
ただの八つ当たりで。
こんな事って許されるのか⁉︎
何もしてないララをこんなに傷付けたのに何も謝罪もしないで、俺と結婚するあの女は、何の罪も問えないのか⁉︎
俺を好いてもいないのに、侯爵家の女主人になれる女。
許せない。
あの女が俺にした事よりも、ただの逆恨みによるララへの所業の方が許せないし、腹わたが煮えくり返す。
どうしてくれよう…。
「ノア、大丈夫か?」
ベンダーの存在を忘れるほど怒りで頭が沸騰していた。
「あの女が憎くて憎くて堪らない。
何の罪もないララを、逆恨みでやっていい所業じゃない。
俺は許さない。
でも俺はアイツと結婚するよ。今、決めた。」
「ノア…」
「ごめん、少し頭冷やすわ。ありがとう、ベンダー。」
ベンダーと別れ、ゆっくり歩いて少し頭を冷やす。
怒りは落ち着いていたが、俺はあの女へ復讐する事に決めた。
屋敷に戻ると、父の執務室へ行った。
「父上、エリーの元婚約者の方に会いに行って、婚約解消の理由を聞いてきました。
その人が他に好きな人が出来たからだそうです。そして、その相手がラミリアでした。
エリーはラミリアへの逆恨みで俺達の仲を壊したようです。
俺はエリーと結婚します。
子供を大事にし、エリーを大切にします。
愛しはしませんが、エリーが幸せだと思わせます。その時に離婚します。」
「ノア!リアちゃんはどうするんだ!あんなに傷付けたリアちゃんはそれでもお前を支えようと寄り添ってくれたのに、お前はそのリアちゃんの前で、あの女を愛しているフリをするのか!」
「はい。俺はあの女が許せません。謝りもせず俺を悪者にし、自分は被害者となり、ララを逆恨みで貶めたアイツを地獄に落とす事以外考えられません。
あの女は、拷問しようが、殺そうが、おそらく気にはしません。どうでもいいと思ってるんでしょう。
だったら、逆に本気で幸せにしてやりますよ。期限は一年半。
それまでは本気で行きます。」
「お前はそれをリアちゃんとパトリックに言えるのか?」
「言います。」
「リアちゃんを本当に失う事になるぞ。」
「・・・・待っていてとは言えません…。
本当はそんな俺の姿も見せたくはないです。でも、それしかあの女への復讐方法が思いつきません。
そして、幸せの絶頂の時、媚薬を使って浮気させます。俺にした事を返しますよ、あの女に。」
「ノア、お前が許せないと言う気持ちはわかる。私だってお前の婚約者でエリカの親友のリアちゃんの為にあの人間を許す事など出来ない。
しかし、そのやり方は認めない。
我が家だけではなく、ルーロック家とリアちゃんは皆に陰口を叩かれるようになる。
リアちゃんは結婚すら難しくなるだろう。
お前はそれでもやりたいと言えるのか!」
「俺はどうしても…あの女を許せないんです…。ララに悪いなんてこれっぽっちも思ってないんですよ、あれだけ酷い事をしておいて。俺は…死ぬほど許せない。」
「ノア、お前一人でリアちゃん、パトリック、アルフ、ジェニー夫人、エリカを説得出来るのか?」
「今度こそリアちゃんの心が壊れてしまってもいいんだな?それでも復讐を取るんだな?」
「それは…」
「お前がしようとしているのはそれくらいリアちゃんにとってはショックな事だ。あの女より酷い事なんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・」
「少し冷静になれ。決して先走るなよ!」
父にそう言われ、執務室を出され、自室に向かうと俺の部屋の前にパトリックがいた。
「ノア、どうした?酷い顔だぞ。」
「パトリック、俺の考えは間違ってると思うか?」
「何の事だ?」
部屋にパトリックと入り、今父に話した内容をパトリックに話した。
「お前…リアを裏切るのか、二度と傷付けないと言った言葉は嘘だったのか!
愛したフリをリアに見せつけ、リアを婚約者を寝取られた惨めな元婚約者にし、リアはどっかの歳の離れた親父の後妻になれってか!
ふざけんな!お前の復讐にリアを巻き込むな!そんな事しようものなら、俺はお前もあの女も腹の子も殺す。」
「俺だってあの女に触れるのも笑顔を向けるのも鳥肌が立つほど嫌だ。
リアにそんな姿を見せるのなんて絶対嫌だ。
でも…あの女を絶望させるのはそれしか思いつかないんだよ…。
許せないんだ、あの女を。
謝罪もしない。
悪いとも思っていない。
俺に嫌われても何とも思わない。
何ならこの屋敷の誰も彼もに嫌われても痛くも痒くもないんだろう。
子供にも執着していない。
アイツの弱点すら見つけられない。
だったらアイツを幸せの絶頂の時に地獄に落とすやり方しかないじゃないか!」
「その役をお前がする意味なんてない。
あの女は勘繰るだろう、何か企んでると。
だったら相手は別がいい。
なんなら俺でもいい。」
「ダメだ!パトリックにそんな事させられない!」
「お前がやるといったら、全員同じ事を言うだろう、きっと。
絶対お前の案には賛成なんかしない!絶対やるなら俺がやる。」
「分かった。一応止めとく。」
「絶対、勝手にやるなよ!」
そして、パトリックは帰って行った。
父もパトリックも俺の案に反対した。
ララはどうだろう…信じて待っていてくれるだろうか…。
待たないよな…。
でも、どうしても許せないんだよ…
ベッドに横になり、天井をジッと見つめた。
アイツは何が楽しいんだろう。
何に幸せを感じているんだろう。
バッとベッドから降り、エリーの部屋に向かった。
ドアの前の護衛に、声をかける。
「少し話しがあるんだ。まだ起きてる?」
「いつも夜中まで起きてるようなので、今も起きてると思います。中のいる者に声をかけます。」
少しドアを開けて、ドアの横にいる護衛に俺が話しがあると伝えるよう言っている。
しばらくするとドアが開いた。
中に入ると、寝衣を着てベッドに腰掛けていた。
「少し話しがある。いいだろうか?」
「いいも何も、もう入ってるじゃない?」
「お前は幸せなのか、今?」
「は?」
「嫌なら子供は認知するから、この屋敷から出て行けば?」
「嫌よ、ここにいたら美味しい物を食べて、寝て、好きな事が出来るのよ。出て行くわけないじゃない。」
「お前はそれで楽しいの?」
「楽しいわね。」
「何年もそうやって幸せになれるのか?
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「別に。今は何をしても楽しいわよ。」
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もうずっと誰にも会ってないだろ?」
「…会いたい人なんていないもの。」
「好きな人とかいなかったのか?」
「なんなの!そんな事話しに来たなら帰って!」
「お前は意外と分かりやすいんだな。都合が悪くなると話しを終わらそうとする。
会いたい人がいるのか。
護衛は付くが、会っても良いぞ。
どうせお前は俺に興味もないし、俺もない。腹の子は俺の子だし、逃げる事もないし、別に会いに行っても良いけど。」
「外に出て良いの?」
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「この屋敷をウロウロする気はないわよ。侯爵家になんて興味もないし。」
「じゃあそういう事で。」
エリーの部屋を出た後、父の執務室に行き、エリーの外出許可をとった。
さあ、お前はどこに行く?
俺にお前が求めているものを教えてくれ。
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