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二枚目の手紙
しおりを挟むジャン視点
あれからあの店には行っていない。
彼女がいてもいなくても、切なくて足が向かなかった。
小さなジャックは、頑張って乳母の乳を哺乳瓶で飲んでいる。
小さなジャックが、小さな哺乳類で飲む姿は愛らしい。
「たくさん飲みなさい。たくさん飲めば大きくなりますよ。頑張れ。」
「頑張ってますよ、ジャックくんは。とっても上手にお乳も飲みますし。」
「そうなんですね、安心しました。」
「良いお父さんですね。ジャックくんも嬉しそうです。」
「私には分かりませんが、喜んでいるなら良かった。」
毎日短時間だが、ジャックを見に行っている。
血は繋がっていないが、やはり赤ん坊は可愛い。
この子は退院したら、子爵家で育てられる。
幸せになってほしい。
今日はなんとなくあの店に行ってみたくなった。
彼女がいてもいなくても、静かにお酒を飲みたかった。
久しぶりに行くと、店長が、
「お久しぶりです。」とにこやかにいつものお酒をすぐ出してくれた。
「ありがとう。久しぶりですね。」
「お預かりしているものがあるのですが、お渡ししてもよろしいですか?」
ドキッとしたが、
「どなたから?」
「ラミリア様からです」
と言って、手紙を渡された。
「ありがとう、ちゃんと受け取りますよ。」
何か店長も思うところがあったのだろう、渡して良いものなのか迷ったようだ。
綺麗な彼女の文字で私の名前が書いてある。
封筒の裏には彼女の名前。
そっと彼女の名前を撫でて、店長が貸してくれたペーパーナイフで封を切った。
先日の手紙以上に切ない手紙はないだろうと腹を括り手紙を読む。
彼女からの手紙は、前回とは違った切なさを覚える内容だった。
私を傷付けた事に悩み、心配している彼女の様子が目に浮かぶ。
彼の事も心配し、私の事も心配して、彼女は大丈夫だろうか?
私の事など気にしないでと言ってあげたいが、言いたくない気持ちもある。
ユリアさんは不誠実と言ってるが、私も同じだ。そして、正直に自分の気持ちを伝える彼女は誠実だから彼の元へ行くのだろう。
この後、どうなるのかは誰も分からない。
私も今後どうなるか、分からない。
どうも出来ないから、今の立場でやるべき事をお互いやるしかないのなら、私は彼女に手紙の返事を出してはいけない。
ここに来ていないという事は、ハッキリするまではここに来ないという事だ。
なら私はミレーヌとジャックにちゃんと向き合って最善になるように解決に導こう。
ミレーヌに私が会いに行けば良くはならないのなら、医者と相談しながら今後の治療方針を聞き、予定を立てていこう。
子爵ともジャックの事を相談しよう。
そして、数ヶ月、一年、数年後、ここに貴女が一人で来るのか、二人で来るのか、その時、楽しく飲めるように私も頑張りましょう。
万が一、私も一人ではなくなっていてもきっと、彼女は楽しそうにしてくれるでしょう。
でも、私が誰と一緒にいたとしても、貴女が誰と一緒にいても、
私はきっと貴女を愛していると思いますよ、
リアさん。
誰にもバレないように、
大事に大事に心の奥に隠しておきます。
また、お会いできる日まで、どうか貴女もお元気で。
毎日、毎晩、祈っています。
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