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夜のお出かけ
しおりを挟む領地に移ってから一カ月が経った。
しばらくは屋敷に籠っていたが、一緒に領地について来てくれたユリアが、
「この自然を満喫しないでどうするのです!」
と腰に手を当て毎日、今日は庭の散歩、次はピクニック、その次は森を散策、やたらと毎日歩かされ、体力も戻り、お日様もたくさん浴びたせいか、見た目は健康そのものだ。
ユリアも自然は飽きたのか、次は街へ行こうと私を連れ回した。
なんだかんだで年も近い私達は、キャッキャっと騒ぐのは楽しく、なんとか笑えるようになった。
そして、出掛ける度にお気に入りの店を見つけて二人で喜んだ。
その時に見つけたお店の一つは、出掛ける度に寄るようになった。
昼間は女性客が多いが、親子連れにも男性にも人気のカフェだ。
お昼時は、ほぼ満席になってしまう。
子供向けのメニューもあるし、女性が喜ぶメニューも男性が満足出来るメニューもあるし、座席も仕切りはないが背丈のある植物の鉢植えを上手く配置してあり、他のお客さんを意識する必要もない。
このお店のグラタンが本当に美味しくて、最近は街に来る度食べている。
そして、このカフェ、夜はお酒がメインのお店に変わる。
メニューもお酒に合うものに変わる。
照明もガラッと変わり、大人な雰囲気になり、とても素敵なのだとか。
そこで、ユリアとお忍びで行ってみようと今日は夜、護衛兼御者のバートに付いてきてもらいお酒を飲みにきている。
今日は店長さんがカウンターにいてくれるとの事で、私とユリアはカウンターの端に席を取ってもらっている。
バートは食事をした後は、店の外で待ってもらう事になっている。
店長さんおススメのワインとおつまみもそれに合わせて出してもらった。
「「カンパーイ」」
ワインも美味しい、料理も見た目も味も良く、生まれて初めてナイフもフォークも使わずに食べられるパスタをカリカリに油で揚げたおつまみは、塩味だけなのに止まらなくなった。
ポリポリポリポリポリポリ…
なんだか無心になって食べていたら、ユリアは酔ったのか、私に絡み出した。
「リア様は~~、優しすぎますぅ~~あんな仕打ちされて~~~私・・・・我慢・・・・出来ません・・・・ウッ…こんなに綺麗で…ウッ・・優しくて・・・・明るくて…なのにーーーーー」
「ゆ、ユリア、落ち着いて、ね、もう帰ろう、ユリア、飲み過ぎだよ。」
「いいえ、帰りません!私は酔ってなんかいません!」
「酔ってる人は酔ってないっていうよね、うん、帰ろう!」
「リア様!ここに何しに来たか分かってますか!リア様に発散してもらおうと…私は…私は…」
「うん、ありがとう、ユリア。泣いたり怒ったり大変だね、フフ」
「あ!笑った!リア様は笑った顔が一番です!そうですよね、店長!」
「あはは、そうですね、リアさんの笑顔は素敵です。」
「店長さんもやめて、恥ずかしいから!」
店長さんもユリアも気付けば私を褒めまくり、恥ずかしいので、外にいるバートを呼び、歩けないユリアを抱っこしてもらい、お会計をしてもらう際に、私達がいたカウンターの逆の端にいた男性と目があった。
騒がしくしてしまっていた為、
「騒がしくしてしまい、申し訳ございませんでした。」
と謝罪すると、
「いえ、一人寂しく飲んでましたので、仲睦まじい様子に私まで楽しい気持ちになりました。」
「お恥ずかしい限りです。それではお先に失礼致しますね、良い夜を。」
「ありがとう、貴女も良い夜を。」
とても感じの良い男性だったが、どこか淋しそうな雰囲気の人だった。
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