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しおりを挟む離れに着いた私とグレンは、私の部屋に入り、クロエに昼食をお願いしようとした時、
「姫様!陛下から連絡がありました。
ジョージ様がこちらに来るという事と、姫様のような事例が合った事、そしてそのウサギ化の対処方法だそうです。
こちらを!」
プルームは早馬で連絡もするが、急ぎの時は、犬鷲を使う。早い上、長距離飛べる。
対処法は何?
グレンに開いてもらう。
「死の直前に獣化した例、有り。獣化は数日のみ。」
と書いてあった。
「グレン、ジャント、リーダーニ、オチエニ、イコ!」
そして急いで医務室へと向かった。
グレンと医務室の前まで行った時、ジャンとリーダーの会話が聞こえてきた。
衝撃的な内容に私もグレンも動けなかった。
入っていいのか躊躇っていると、
「入りましょう。聞いてしまったからには隠してはおけませんから。」
とグレンが言い、私と一緒にドアを開けた。
私達が聴いていた事に二人は驚いている。
「どこから聞いてた?」
「王妃様が裏でやりたい放題って言ってた辺りだ。」
とグレンが言った。
「そうか…」
「ゴメンネ、キコエタカラ…」
「グレンには言おうと思ってたし、姫様は知らなくても良かったかな。
俺達がやる事は危険な事が多過ぎるから、これ以上は姫様は聞いちゃダメだよ。」
「リーダー…」
「俺も姫様はもうこの事に関わっちゃダメだと思う。」
「・・・・・」
耳ヘニョリ。
「ところで、なんで戻ってきたの?」
「あ!そうだった。プルームから連絡が来た。その事でジャンに報告しようって戻ってきたんだ。姫様、俺から報告しても大丈夫ですか?」
「オネガイ、チマツ」
「それでは、」
そしてグレンが、似たような事例が昔あった事、獣化は数日で戻る事、お兄様が来る事をジャンに伝えた。
「良かった、姫様、戻れるんですね。」
「ウン、イツモドルカ、ワカラナイケド」
「今だったらヤバいんじゃねえの?姫様、裸だろ?」
「「「え(エ)⁉︎」」」
「ド、ド、ド、ドウチタラ、イイノ!グレン、ハナレ、モドッテ!」
「は、はい!」
「待て、俺も行く!」
「お前ら、姫様の裸見てえだけだろ。」
「「違うわ!」」
「ハ、ハ、ハヤク、グレン、ハヤク!」
「急ぎます!」
「グレン、俺に渡せ!」
「そんな暇ねえよ!」
「ヤダ、ナンカ、ヘンカモ」
「ヤバイヤバイ、解けかけてるのかも!」
「ヤバい、急げ!」
「ヤダ、ドウチヨ、ハダカ、ヤダ!」
「もう少しですよ、メアリー様!」
「グレン、ミナイデネ!」
「絶対見ません!」
「俺は見ていいの?」
「「ダメ」に決まってるだろ!」
大騒ぎして離れに戻った三人にクロエが、
「何事ですか!そんなにバタバタ走ってはいけません!」
と怒られても無視し、
「クロエ、姫様に服着せて!裸になっちゃう!」
「は⁉︎何を言ってるんですか!は、裸になるってどういう事ですか!」
「いいから、じゃあ俺達は一旦戻ります!」
ジャンとグレンは走って帰って行った。
「姫様、一体何があったのですか?」
「テガミ、ヨンデミテ」
「先程の手紙ですか?グレン様がお読みになった時に、聞いておりましたが?」
「ケモノカ、トケタラ、ワタチ、ハダカ」
「わたち、はだか?・・・・あ!確かに今の姫様は服を召しておりません!なんて事!下手をしたら裸になっていたかもしれないではないですか!
どうして気付かなかったのでしょう!
さあ、姫様、お着替えを致しましょう。
・・・・・・・姫様…一体何を着用すればいいのでしょうか…今の大きさの服を誂えても元の大きさになってしまっては、はち切れてしまいます…。
どうしたらいいのでしょう…。」
「オヘヤニ、イルワ」
「そうですね、そう致しましょう…。
申し訳ございません…姫様。」
「イイノ、クロエ、アリガト」
そう言って、クロエに部屋に連れて行ってもらった。
「ケイトワ?」
「ケイトは、熱も下がり元気になりましたが、今日一日、休ませております。」
「ソカ、ヨカッタ」
「姫様、身体は大丈夫ですか?先程はジャン様方が焦っておられたので、もうお戻りになるのかと思いましたが…。」
「サッキワ、ヘンナ、カンジ、シタケド、イマワ、ナントモナイ」
「そうですか、では少しお休みになられますか?それとも何か軽い物でもお食べになりますか?」
「モウ、ネル」
「畏まりました、それでは私は隣りにおりますので、何かありましたらお呼び下さい。ドアは少し開けておきますので。」
そう言って、クロエは部屋を出て行った。
しかし、焦った。
あの状況で元に戻ったら大変な事になるところだった。
グレンに抱かれた裸の私…。
それを見るジャンとリーダー…。
想像しただけで死にたくなるほど恥ずかしい。
良かった…。
でもいつ戻るか分からないなら部屋から出られない。
困った。
ハァ~どうしたらいいんだろ…。
枕元のカツオ節を齧る。
カリカリカリカリ…
服を着ても意味ないし、大きな服なんか着れないし…。
カリカリカリカリ…
あ!大きな布を巻いて置けばいいのか!
カリカリカリカリ…
だったら裸になっても見られる事もない!
安心したら…眠く…なった…
「んんーー、よく寝たぁーー!」
「クロエーーー、お腹空いたーーー!」
バタバタバタバタ…
「姫様!」
とドアを開けてクロエが入ってきた。
「ヤダ、クロエ、ノックもしないで。」
「姫…様…?」
「そうよ、メア…ん?」
え?片言じゃない。
急いで自分の身体を見る。
手は…ウサギのまま。
足は…モフモフ?
お腹…モフモフ?
「クロエ、鏡、鏡!」
「は、はい、ただいま!」
クロエが手鏡を持って私にかざした。
「ん?誰これ?」
「姫様…あの…その…大きくなられて…」
「大きく?」
「姿見でお姿をごらんになって下さい。」
「クロエ、抱き上げて。」
「いえ、わたくしでは、多分持ち上げられません…申し訳ございません…」
「え?いつも抱き上げてくれたのに?」
「多分…ご自分でベッドを降りられるかと…」
「もう!自分でやるわよ。おかしなクロエ。」
ひょいと、ベッドから降りて姿見の前に行くと、
「は?うそ?なにこれ?だれ?きもちわる!」
鏡の中には、ちょうど私くらいの大きさの人間がそのままウサギになったらこんな感じだろうなぁって感じの巨大なウサギがいた。
ウサギらしさがなく、ウサギなんだけどウサギじゃない。
変に艶めかしいウサギ。
前足も後ろ足もウサギなのに、どこか中途半端。
モフモフも中途半端。
一言で言えば、人間へ進化の途中って感じ。
もうすぐ立ち上がりますよって感じ。
そしてウサギなのに胸がある。
私らしい普通の大きさの胸があるから変なのだ。
だからウサギのようで、ウサギじゃない。
こんな姿、誰が見ても気持ち悪い。
顔も私の顔だ。
毛深くなった私だ。
髪も長い。
だから気持ち悪い。
何もかも中途半端だから。
「キャーーーーーーー」
悲鳴をあげて、私は気絶した。
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