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しおりを挟む「お前…あの時のジャンなのか?」
「思い出したか?」
「忘れたわけじゃない。」
「なんでお前は爺さんの家から消えた?」
「攫われたんだ…。その時、俺を庇って母さんは死んだ。
俺は王妃の手下に攫われて、三歳のなんにも分かんねぇガキを森のど真ん中に捨てていきやがった。」
「それでどうやって助かったんだ?」
「一日目は怖くて動けなかった。二日目にお腹が空いて少し移動したら、父さん…俺を見つけて育ててくれた猟師に助けてもらった。」
「それから?」
「俺が攫われた時、男の服のボタンを母さんが引きちぎったんだ。
その時は気付かなかったが、俺の服のポケットに入ってた。
父さんが死ぬ時に俺にボタンを見せた。
俺の親に関係する物かもしれないって、渡された。
渡されても、親は父さんがいるから興味がなかったけど、そのうち母さんの事を思い出した。忘れてる事すら忘れてた。
そして母さんが殺されて、俺は母さんを殺した奴に攫われて森に捨てられたって事を思い出した。
そして父さんが死んで、母さんを殺した奴に復讐する事を誓った。
それからは分かるだろ?なんでもやった。
殺人はしなかったが、それ以外は大体やったな。
あ、女には手ェ出さなかったし、出させなかった。
俺の目ぇ盗んでやってた奴がいたかもしんねぇが、そんな奴はすぐ辞めてたから、俺の近くにはそんな奴はいない。
王妃に近付くには有力貴族に近付くしかない。
そいつらの仕事なんて碌なもんしかなかったけど、やるしかなかった。
それでも最悪の事にはならないように上手くやってた。
今回の事も、あのスラムの兄弟は終わったら銀狼で面倒見ようと思ってた。
姫様もあのお嬢様が何をするか確認してから逃がそうと思ってた。
弱味を握る為にはギリギリまでやるしかなかったから。
でも、姫様が崖から落ちて、俺が助けるしかなかった。まさか、ウサギになるとは思わなかったけどな。
ま、やってた事は悪党と同じだ。
だから死んでも仕方ないと思ってる。」
「母ちゃん殺した復讐はいいのか?」
「こうなったらどうしようもないだろ。
それに姫様見てたら毒気が抜けた。」
「親父はずっと王妃の悪事の証拠を探してる。あの人は表では理想の王妃だが、裏ではやりたい放題だ。
ランバートも陛下も、なかなか尻尾を出さない王妃に痺れをきらしている。
実際王妃の実務を熟しているのは側妃のアリーシャ様だ。
王妃はお茶会やら夜会やらしか興味はないらしい。
実の子のランバート様は、アリーシャ様が育てたようなものだ。
それが良かったんだろうが。
俺は王妃の罪を暴きたい。
やりたい放題の王妃を断頭台に引きずりあげたいと思っている。
アイツのせいで俺の母親は死んだ。
だから動ける味方が少しでも欲しい。
ジェフ、お前の力を貸してくれ。
陛下とランバートの許可は取っている。」
「待て。国王は俺の事を知っているのか?」
「知っている。俺が報告した。ランバートもだ。ナタリーは知らない。」
「・・・・・・何か言っていたか?」
「泣いていた。
助けてあげられなくてすまなかったと。」
「そうか…。」
「でもお前の事を公には出来ない。
だからお前は俺の弟として公爵家に入ることになる。
これからお前は面倒な事が山ほどある。
それでも公爵という家がお前を守り、お前はそれを利用出来る。
そしてお前の存在自体が王妃を追い詰めるものとなる。
だから、俺と王妃を地獄に堕とさないか?」
「・・・・・・俺は貴族が嫌いだ。」
「だろうな」
「口も悪い」
「これから直せ。でないと王妃の前には出れない。」
「勉強なんかした事ない。」
「本が読めりゃなんとかなる。」
「俺が弟でもいいのか?」
「俺はお前なら良い。」
「あの王太子は俺が邪魔じゃないのか?」
「弟が出来て喜んでいる。」
「俺は死ななくて良いのか?」
「お前、第二王子だぞ、死んだら大騒ぎだ。」
「あの王妃を倒せるのか?」
「お前がいればな。」
「ジャンって呼んでいいのか?」
「人前では“兄上”で頼む。」
「俺…」
「もう、一人で頑張る必要はない。俺もランバートも陛下もいる。」
「ジャン…俺…お前の弟になってもいいか?」
「なってくれって言ってる。」
「クソッ!」
「泣いていいぞ、弟よ。」
「泣くか!」
「とにかくこれからよろしく。」
「ああ、よろしく兄上。」
「キモ!」
「うるせえ。けど、なんで俺の事分かった。」
「王の血が入ってるか入っていないか見分ける方法がある。」
「なんだそれ?」
「お前の目だ。」
「は?目?」
「一見、分からないが、お前の瞳は王族特有のものだ。
日に当たると瞳が金色になる。
その事を知ってるのは王族とラテリア公爵家だけだ。」
「俺は母さんが死ぬ間際に、俺の父親は国王だって聞いた。」
「ボタンは?」
「ある。母さんの形見だから。」
「怪我が治ったら公爵邸に移動しよう。」
「そうだな、姫様に会えなくなるのは嫌だな…」
「お前は公爵令息だ。姫様にはいつでも会える・・・と思う。」
その時、グレンと姫様がきた。
「ソノハナチ、ホント?」
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