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あれから10年

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あの騒動から10年経った。


親父はあの騒動から半年後、海外から帰ってきた。
すっかり落ち着いていた取材陣が帰国した親父の所に再び来る事はなかった。
近所のおばちゃん達に、親父はお土産を渡し、礼を言っていた。

隼ちゃんは母親の監視をいまだ続けている。
いつ反撃してくるか分からないから、だって。

あの後母親がどうなったのかは知らない。
親父も隼ちゃんも何も言わないから。

親父と隼ちゃんは今でも仲良く一緒に暮らしている。


西山は結婚した。
今は二児のパパだ。
奥さんはなんと、友利だ。
友利は西山になった。
友利が西山になってしまい、今更志帆とは呼べず、俺は友利と呼んでいる。
意外にもお似合いの二人だ。

いつの間にって感じで、結婚報告された時はコーヒーを吹いた。

でも、なんだか友達同士が結婚した事が嬉しくて、結婚式では号泣した。
俺は何故か新婦側の招待客でスピーチをやらされた。

スピーチを聞いた友利が今度は号泣し、
「化粧が落ちるから、化粧が落ちちゃうから!」と隣りにいる西山が宥めていた。


友利は遠藤も招待しており、俺の席は遠藤の隣りで、新郎側に座っている慎吾がギャーギャー言っていたが、最後の方は遠藤と仲良くなっていた。

二次会が終わって遠藤と別れる時、

「中学の時、たまに本田、俺の事見てただろ?そんなのがたまにあって、少しお前の事、意識してたんだよね。
でもその時はそれがなんなのか分からなかった。
友利と楽しそうに話してる本田をたまに見かけた。
同じクラスになってたら、もっと仲良くなれたかなって思ってたよ。

今日は会えて良かった。
今度、皆んなで飲みに行こうぜ、じゃあな!」

やっぱり遠藤は良い奴だ。
最後まで真面目でメガネな男前だった。



雄大も二児のパパだが、もう上の子は10歳になる。
あの頃奥さんのお腹にいた子だ。
相変わらず爽やかで、良いパパになった。


そして慎吾。
結婚しろと両親やら上司からせっつかれまくり、嫌になった慎吾は会社を辞めた。

「もう女はこりごり。蓮さえいれば良い。
俺は仕事に生きる!」

そして得意の英語を活かす仕事を探し、今は翻訳の仕事を在宅でしている。
俺の実家で。
ついでに俺も実家で暮らしている。

つまり実家に大人の男四人が住んでいる。

開かずの間状態の母親の部屋を解禁し、慎吾の部屋にした。

「慎吾は戒めとしてこの部屋を使いなさい。」
と親父に言われてしまい、文句も言えずその部屋を仕事部屋として使っている。改装はしたが。

実家の敷地内には離れもある。
その離れが俺達の新居になった。

一緒に住まないと言っていたが、在宅なら良いだろ!と慎吾に押し切られてこの結果だ。


あ、遠藤は転勤して今は横浜にいる。
たまに連絡が来て、慎吾も一緒に飲みに行ったりしている。


一度街で、母親に似た人を見た。

濃い化粧をした派手な女。

男と腕を組んで、楽しそうに歩いていた。

あの人がそうなのかは分からなかったが、何の感情も湧かなかった。


俺と慎吾は養子をとった。

あの佐藤美咲が産んだ子だ。
佐藤美咲は子供を置いていなくなった。

慎吾は離婚はしたが、佐藤美咲の両親とはたまに連絡をしていたそうだ。

それで子供を置いていなくなったと俺に教えてくれた。

慎吾は少なからず、責任を感じているようだった。
慎吾が嵌められなかったら、もっと佐藤美咲も子供を可愛がれたのではないかと思ったのだそうだ。

「だったら養子縁組したら?隼ちゃんに相談してみよう。
認知した例の人も嫌だとは言わないでしょ?」

そうして『陽太』は俺達の、と言うか慎吾の息子になった。


その陽太も9歳だ。

小学3年のわんぱく坊主だ。
顔は誰とも血は繋がっていないのに、親父に似ている。
なので親父は孫バカだ。
陽太もお爺ちゃん子だ。

今日も学校から帰ってきたと思ったら、
「行ってきまーす」とすぐ地元のサッカークラブへと行った。

陽太は我が家の家族構成が、普通の家とは違う事は分かっている。
友達にも言われてるらしい。
けど、
「俺は父ちゃんの事好きだし、蓮くんと爺ちゃんと隼也爺ちゃんも好きだもん、普通じゃなくても楽しいから良い!」
と言って気にしてないらしい。
逞しい子だ。


陽太は、雄大のとこの息子、一つ上の悠人が遊びに来ると、ずっと離れない。
いつもなら、「飽きたーー」と出かけてしまうのに、悠人が来ると、
「悠人、ジュース飲む?お菓子食べる?」

「ゲームしよう!悠人、どのゲームが良い?」

「今日お泊まりして一緒に寝よう!」

悠人は雄大に似て、爽やかに答える。
「ジュースだけちょうだい。お菓子はご飯食べられなくなるからいらないよ。」

「ゲームじゃなくて陽太のサッカーやってるとこ見たい。」

「明日は学校だから今日は泊まれないよ、今度な。」

陽太はそんな答えに、

「うん、分かった!」と悠人の言う事は絶対肯定する。

これは、あれだ。
明らかに悠人の事好きだな。


この二人がこれからどうなるのかは分からない。

それはこの二人が決める事だ。

愛らしい二人に俺と慎吾、雄大は見守るだけだ。



色々あったけど、男ばっかのこの居心地の良い家で、まだまだ小さい息子を皆んなで見守っていきたい。


「とうちゃーん、蓮くーん、悠人パパーー、悠人が池に落ちたーーー」


「なにーーーーーー⁉︎」走る雄大。



「浅いから!足つくから!」と慎吾。



「俺、風呂いれてくるーーーー!」と俺。



今日も本田家は賑やかだ。



















      《完》










*************************
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
どうやら男主人公の方が私は書きやすい事に気付き、初めてBL作品を書いてみました。

お気に入りやエール、いいねをたくさんありがとうございました。

これにて完結となります。

いつも読んで下さってる皆様、ありがとうございました!
次回作もお楽しみに!














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