お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun

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離婚成立

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あれから隼ちゃんの行動は早かった。

あの後すぐ、慎吾の会社の部長さんのアポが取れ、夜、何処ぞの高級クラブで親父と隼ちゃん、部長さんとまさかの社長まで来ての密談となったらしい。
隼ちゃんが社長と知り合いだったようだ。

先ず佐藤美咲の子供が不倫相手の子供の可能性が高いので、DNA鑑定をした後、結果次第では認知して欲しいと言うと、社長はごねたらしい。
しかし部長が結婚する前に、社内で佐藤美咲が、不倫相手に妊娠を告げていたのを目撃した人間がいる、分かっていたうえで慎吾に結婚を迫らせていたと言うと、渋々承諾したのだとか。
そして隼ちゃんが社長に、

「私これでもとても顔が広いのです。
そちらの専属弁護士とも友人ですし、偉い人とも結構友人が多いんです。
そして横にいる彼、作家の本田 宗なんですけどね、彼の息子の友人が荒川慎吾君なんですよ。
昔から我が子のように可愛がっていた荒川君がね、まさかそちらの甥っ子さんのせいで自分の子でもないのに、沢山の社員の前で、さも荒川君の子のように大声で発表されてしまって、結婚するしかなくなってしまったんですよ。否定も出来なかったそうなんです。
その事に大変お怒りで、出版社にこの事を記事にしてもらうとか言い出してしまって、止めるのが大変だったんです。
ですからあまり我々への対応を甘く捉えていると、大変な事になると思います。

それくらい今回のこの件は、内部処理出来るものではない、と思って下さらないと後々困るのはそちらですよ。
あ、そちらの後ろにいらっしゃるこわーい方々に相談するなんて事は勘弁して下さいね。
こちらも顔の濃い怖い人に国際電話かけるようになりますから。
少しでも若い子や私の周りに怖い人を見かけたら容赦しませんから。

たかが、認知させるだけの事にあまり時間をかけませんよね、高田。」

と美形が真顔で脅す姿は怖いと親父が言っていた。

海外の怖い人は、ただ顔が怖い偉い人だと聞いてホッとした。

その後は左遷された甥っ子は、社長に脅され認知した。
その後は、奥さんとは揉めて今は別居中なのだとか。

慎吾と佐藤美咲とは離婚が成立した。
最初佐藤はごねたらしいが、社長の甥っ子が認知したと聞いて顔を真っ青にして、黙ってしまったんだとか。
今度は甥っ子の奥さんから慰謝料を請求されるかもしれないと怯えていたそうだ。
そっちに莫大な慰謝料を請求されそうなので、こっちは1年間の新居の家賃分で手を打ったそうだ。
やっぱりお金より縁を早く切りたかったと慎吾がしみじみ言っていた。

たった1年間の事なのに、何年も経った感覚だ。

そして親父達は次にあの人、母に狙いを定めて動き出した。


慎吾の離婚が成立する前に、俺も友利と離婚した。

「1年間、ありがとう、友利。なんだかんだお前と暮らすのは楽しかった。」

「私こそ楽しかったよ、本田。
私のせいでこんなに長い期間本田を悩ませる事になって本当、すみませんでした。

本田は今度こそ幸せになって欲しい。
こんなに一緒にいたのに本田の事は全く男として見れなかった自分に心配になるけど、また喫茶店に遊びに来てよ。
私、会社員は合ってないわ。叔父さんのとこでコーヒー極めて叔父さんの跡を継げるよう頑張る。」

そう言って握手して円満離婚した。


そして喫茶店を貸し切った週末、俺達はお疲れ様会をする事になった。

親父と隼ちゃんがお金を出してくれて、食材も豪華、酒も豪華になった。
大人は不参加で、マスターだけが料理人として参加してくれた。


「かんぱーーーい!」

西山の乾杯で始まったが、一言言いたいと慎吾が語り始めた。

「今回の事でいかに自分が不誠実かが分かった。
俺がやってた事は佐藤と同じだ。
いつ妊娠したと言われてもおかしくない状況が今までたくさんあった…。
それで蓮に辛い思いをたくさんさせてきた。
それも10年もだ。
蓮が俺を捨てるのも当たり前だと思う。
でも、それでも、俺は蓮の側にいたい。
蓮とずっと一緒にいたい。
俺達は結婚は出来ないけど、ここにいる友人達が証人になって欲しい。

俺は、本田蓮を一生裏切る事なく愛し抜くと誓う。

蓮、俺と添い遂げてくれるか?」



突然始まった慎吾のプロポーズもどきに、どうしようか迷う。



「発作のように毎年浮気を繰り返すお前が来年しないとは言いきれないよな、今のところ。

俺もお前と離れるのはもう嫌だ。
だが、10年味わった苦しみが消える事はない。
またあの香水臭い服、ポケットに入ったピアス、ラブホの領収書やライター、頸に付いたキスマーク、その他諸々に気付いた時、俺はまた逃げ出すと思う。

だから一緒には住まない。
俺は友利と暮らしたマンションか実家で暮らす。慎吾は俺に会いたかったら勝手に来ればいい。その代わり、女と会った後には来ないで欲しい。
そして浮気してる時は一切来ないで欲しい、俺は絶対気付くから。

それで良いなら慎吾と添い遂げようと思う。」


シーンとなった喫茶店。

最初に言葉を発したのは友利。

「さいってー・・・・」

「頸にキスマークって・・・女の趣味悪…」
西山が呟く。

「ラブホの領収書って・・・普通捨てねーの?」
と雄大。

「これだけの浮気の証拠を残すなんて浮気をする資格はないですね。」
とはマスター。


「あれ?俺プロポーズ受けたのに誰も祝福してくんねえーの?慎吾?泣いてる?」

「まあ、あの人は放っておこう!最低だから。

ほら、目出度いんだから皆んな飲もう!」
と友利が言い、慎吾以外と乾杯した。

その後は飲んで食べて、笑って泣いて、大騒ぎして楽しんだ。

そして締めの言葉は俺がやれと西山に言われた。


「この一年間、俺はお前達との連絡を経った。
もう二度と会うつもりもなかった。
たまたま雄大に会ってなかったら、こうはならなかった。

雄大、いつも俺の愚痴を聞いてくれてありがとう。お前がいてくれたから今まで慎吾の隣りにいる事が出来た。
そのお前の事も信じきれなかった、ごめんな。

西山、俺の為に怒ってくれてありがとう。
披露宴の話しを聞いた時はコーヒーを吹き出したけど、嬉しかった。
色々迷惑もかけたし、心配もかけた、ごめん。

友利、俺の我儘を聞いて戸籍も汚させて済まなかった。
中学の時からお前は俺の性別を超えた大事な友人だ。
ありがとう。

マスターも、大事な姪をこんな形で娶ってしまってすみませんでした。
でもあの夜、この喫茶店で話しを聞いてくれた事、美味しいコーヒーを淹れてくれた事、本当に嬉しかったです。
ありがとうございました。

そして、慎吾、お前は本当に馬鹿だ。
あるはずのない未来に怯えて俺を信じなかった。
たった一言、俺が離れるのが怖い、そう言ってくれるだけで良かったのにそれを言わなかった。
もう一度、信じるのは時間がかかるが、親父と隼ちゃんのように長い時間をかけて信頼を取り戻そう。
これからもよろしく。俺はお前を愛している。」



お疲れ様会は慎吾の号泣で終わった。
















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