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友との再会

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友利と結婚して1年経った。

友利との生活は、お互いのパーソナルスペースを侵すことなく、同居人としては問題なくたまに一緒に買い物に出かけたりもした。

喫茶店にもちょくちょく顔を出したりしている。

ただ、友利に唯一残した慎吾の写真を見せた時、友利は、顔色を無くした。

「え⁉︎知ってる人?友利、慎吾の事知ってるの?」
と聞けば、

「この…人は、本田の恋人だったの?」
瞬きもせず慎吾の写真を見つめる友利の様子は普通じゃなかった。

「友利、何か知ってるの?」

「前にね…勤めてた会社にこの人いたような気がする…かな…よく知らないけど…」

その日から友利は俺を避けるようになった。

どうしたのか尋ねても、

「なんでもないよ、私、そろそろここを出ようかなと思うんだ。いつまでも本田の世話になっていられないしね。」

「別に俺は気にしてないけど…友利が出たいなら止めないよ。」

そこからの友利は本気で就職先を探し出した。
元々マスターと住んでいた家に少しずつ荷物も運び出してるようだ。

なんだか友利の態度が気になり、1人で喫茶店に行き、マスターに相談した。

「マスター、友利最近おかしくない?俺には何も言わないけど、なんかおかしいんだよね、何か知ってる?」
と聞けば、

「それは俺も思ってた。あの子が会社を辞めた時もこんな感じだった。
会社で何があったのかも俺には何も話してはくれなかった。
本田くん、何か志帆は言ってなかったかい?」

友利がおかしくなったのは慎吾の写真を見た時からだ。

「友利に俺の元彼の写真を見せた時からおかしくなりました。
友利が勤めていた会社にその元彼も勤めていたようです。
友利が辞めたタイミングは、俺が元彼と別れたタイミングとほぼ同じです。
その辺に何かあるのかもしれません…。」


「志帆は本田君と元彼君の破局に何か関わってるって事?そんな偶然ある?」

確かにこれが偶然なら運命としか思えない。

でも友利との再会はホントに偶然だった。

マスターと2人でそんな話しをしていた、ランチ明けのおきゃくさんが一人もいない暇な時間帯、カランカランとドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

マスターが声をかけた後、

「蓮?」と俺を呼んだ声は、俺の友人の雄大だった。


俺と雄大は奥まったテーブル席に向かい合わせで座っている。

「とうとう見つかっちゃったかぁ…」

俺の呟きに、
「ずっと探してた。今日はたまたま取引先が近くだったから休憩がてら目に入ったここに入った…心配してたんだぞ…俺も西山も皆んなも、もちろん慎吾も。」
と雄大が言った。

勿論ってなんだよ、もう慎吾には子供も生まれてる。
今頃生まれた子供にデロデロになっているだろう。
俺に対しての罪悪感で探しているのなら、迷惑でしかない。

「雄大、突然連絡を絶った事は謝る。
でもあの時は、ああするしか自分を保てなかった。
慎吾は子供も生まれて幸せに暮らしてるんだろ?
もう俺なんか気にする必要もない。
だから雄大、慎吾にそう伝えてくれるか?
それに一応結婚したんだ。
なんかお前と慎吾と同じ会社に勤めてたっぽい。
友利志帆って言うんだけど、知ってるか?
俺の中学の同級生なんだ。」
と俺が言うと突然、雄大は立ち上がって、

「友利志帆⁉︎お前、友利志帆と結婚したのか⁉︎友利はお前と慎吾を別れさせた女だぞ!」
そう叫んだ。

それに反応したのはマスターだった。
俺は驚いて固まっていた。

「志帆は会社で何をしたんですか⁉︎」

「え⁉︎貴方は…何方?」
突然マスターが乱入してきた事に驚いていた雄大が、

「ずっと友利さんを探していました。
あの飲み会の夜に何があったのか、友利さんに聞きたかった事があるんです。
で、貴方は友利さんの何なんですか?」

「私は志帆の叔父です。」

それから雄大は、慎吾の結婚までの経緯を話した。
飲み会で酒に薬を盛られ、会社の後輩のマンションに連れ込まれた事。
その時にマンションに一緒に連れて行ったのが友利。
そして、朦朧としている慎吾とセックスした、と主張しているがそれも怪しい事。
子供は慎吾の子供ではなく不倫していた相手かもしれない事。
それでも会社でその後輩が妊娠した事が噂で流れてしまい、上司にも妊娠しているのなら結婚式は早い方が良いだろうと言われてしまって後に引けなくなってしまった事。
俺に顔向け出来なくて避けてしまった事。
結婚式で西山がキレて、新婦の悪事をバラしたと聞いた時はコーヒーを吹き出した。

それから慎吾とその後輩の女の子は別々に暮らしていて、子供は1歳になったらDNA鑑定をする事になっているそうだ。

だからあの時の事を知ってる友利をずっと探していたんだそうだ。

「マジか・・・慎吾は…どうしてる?」

「慎吾は・・・まあ…分かるだろ、参ってる。」

俺は慎吾の話しも聞かず逃げた。
あの時はそうしなければ心が保たなかった。
もう浮気されるのは耐えられなかった。
俺には慎吾に子供を授けてあげられないから…俺が消えるのが一番良いと思ったから…。


とりあえず、出かけている友利を喫茶店に呼び出した。

30分後に喫茶店に現れた友利は雄大の顔を見て真っ青になると、

「すみませんでした…私…本田にいつバレるか怖くて…怖くて…。
ごめん、ごめん、本田…本田の彼氏だなんて知らなかったの…ごめん…私が早く会社に言っていたら…本田はこんなに苦しまなかったのに…本当にごめん…」

泣き出した友利はその後も治らず、マスターは喫茶店を急遽閉めて、友利の話しを聞く事になった。



友利の話しを聞いて、慎吾と結婚した女の醜悪さに吐きそうになった。

飲み会で潰れた慎吾をマンションまで送りたいから手伝ってと同期に声をかけた佐藤美咲は、慎吾をタクシーに乗せた後、友利に“1人では運べないから”と言われ、友利も一緒にタクシーに乗せた。
同期の男達は酔っ払ってさっさと二次会に向かったんだとか。

そしてなんとかタクシーを降り、マンションの部屋の鍵を佐藤美咲が開けて中に慎吾を運び入れた。
その時にその部屋が慎吾の部屋ではなく佐藤美咲の部屋だと気付いた友利は、佐藤美咲を問い詰めた、
慎吾のマンションを知っていると言ったのにどうして佐藤美咲のマンションに運んだのだと。

言ってない、酔ってたから覚えてない、こんなに酔ってるのに何かある訳がない、それにここに運んだ友利も共犯だと言ったのだとか。
怖くなった友利はその場を逃げたのだそうだ。
そして数日前に聞いてしまった会話を思い出した、誰かに子供が出来た事を告白していたのを。

あの部屋でこれから起こりうる事が分かってしまった友利は、佐藤美咲から逃げる為、会社を辞めた。

その後、どうなったのかは全く知らなかったようだ。

俺と慎吾を大学時代に見かけた事があったから友人だと思っていた事。
俺の友人なら一度話しかけて俺の話しをしたいと思っていた事。
だからあの時、これをきっかけに話しかけられるかもと思って、佐藤美咲とタクシーに乗ってしまった事。

それらを泣きながら時間をかけて話した友利は憔悴しきっていた。

「私が・・・ちゃんと…会社に報告…してたら、本田はこんな事にならなかったのに・・・あんなに本田を泣かす事もなかったのに・・ごめん、ごめんね、本田・・・まさか本田の大事な人だなんて思わなかった・・・だって遠藤に似てなかったからーーーうわーーん、ごめんよーー本田ーーー」

号泣する友利。

「「遠藤って誰?」」とキョトンとする雄大とマスター。

佐藤美咲の話しで胸糞悪くなっていた俺達は、友利の号泣で入っていた力が抜けた。

「友利、そんなに泣くな。そして遠藤なんて今の今まで忘れてたぞ、俺。」

「あんなに、はなじでだのにーー!」

「鼻をかめ、鼻を!」

「なあ蓮、遠藤って誰?」と雄大。

「中学の時の好きな人。良い奴だったんだ。地味だけど真面目でメガネのサッカー部の男子。確かに慎吾に似た要素は一つもないわ。」

さっきまでのシリアスモードは消えてしまった喫茶店内。

何か作り出したマスター。

「あんなに遠藤を二人で観察していたのに…忘れてたなんて…」と今何の関係もない事にショックを受けている友利。

そんな友利を笑いながら慰める俺。

そんな俺達の横でずっと誰かと連絡している雄大。

「とにかく何か腹に入れよう。本田君、運んで。」

ちゃっちゃとサンドイッチを作ったマスターからサンドイッチとコーヒーを受け取り、カウンターに並べる。

テーブル席からカウンターに移動した俺達は、和やかに軽食を頂いた。

「で、なんで友利さんと結婚する事になったの?」と聞いてきた時、入り口のドアをドンドン叩く音がして、全員飛び上がるほど驚いた。

入り口ドアに鍵をかけてはいたが、シャッターは閉めていないので、マスターが対応する為鍵を開けた。


「蓮!」


開けられたドアから入ってきたのは、泣きそうな顔の慎吾だった。















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