私の婚約者の苦手なもの

jun

文字の大きさ
上 下
113 / 125

ジュリア号泣

しおりを挟む



〈陛下の部屋〉


ジュリア視点



「フゥーー終わったな。」

「はい、もうロータスの手下もいない様ですし。」

「皆、ご苦労だった。
こんなにも早く解決できたのは皆の協力があってこそだ。
危険な目にも合わせたが、誰も失くす事なく終われた。
ジュリアの怪我は私の軽率な行動が原因だ。しかしジュリアは怪我をしても尚捜索、警護、捕縛と活躍してくれた。
私からジュリアには何か褒美を授けたい。
考えておいてくれ。
サイモンもよく働いてくれた。

ここにいる皆が優秀ゆえに私は助かった。

良き臣下を持てて本当に良かった。

ご苦労だった。

解散!」


陛下の言葉で襲撃事件は終結した。


解散の言葉の後、護衛が到着し、すでに事件が解決している事に全員驚いていた。


本当に陛下が無事で良かった…。


陛下が私を恐れているのは知っていた。
というか陛下の周りは漏れなく全員私を怖がっている。

学生の時から早二十年・・
笑えば怯え、
動けば怯え、
話せば怯え、
何をやっても印象は変えられなかった。


私は、
真面目で友を大事にし、頭の回転も早く、
剣の腕もなかなかのもので、上に立つ者としての気構えもある素晴らしい陛下を尊敬している。
だが、
二十年・・・二十年、私を見る度、怯えていた陛下。
その陛下が、私を心配し、褒め、褒美…。
怪我した私を心配していた陛下…
無茶をして諌めていた陛下…
ハロルドには怒られたけど、捕縛して褒めてくれた陛下…
私の息子を褒めてくれた陛下…

などと心酔する陛下の事を考えていたら、
ハロルドに頭を叩かれた。

「お前、陛下の事考えてただろ!止めろ、他所の旦那だぞ、本当の旦那の事考えろよ!」

「だって…あんなに嫌ってた私の事…褒めてくれたから…グス…」

「泣くなよ…さっきまでの勢いはどこいったんだよ。」

「ハロルドーーーー私、頑張って良かったーーーーーーーーーーー」

「分かった分かった!泣くな、みっともない!魔王の名が泣くぞ。」

「だってーーーー」

「ほら、カイルもアランも殿下もサイモンもついでに陛下も引いてるぞ!」

「だって二十年だよーーーー二十年も嫌われてたんだよーーカイル様もアラン様もリチャード様も私の事、嫌ってたものーーーーーーーー」

「ジュ、ジュリア、嫌っていたのではないぞ、怖がっていたのだ。」

「そうです、嫌ってなど滅相もないです、目を合わせない様にしていただけです。」

「そうですよ、ジュリア様のお強さに若干引いていただけですよ。」

「ほらーーーーーみんなが私を嫌いってーーーーーーーー」

「「「言ってないし!」」」

「ジュリア、みんなそんな事言ってないし、思ってないよ。今回の事でジュリアには皆が感謝している。今までは少し怖がっていたかもしれないが、もう怖がってはいないよ、
なあ、みんな!」


「ジュリア、私は今回の事でジュリアの事を好きになったぞ。」
「私もジュリア様のファンになりました」
「私も娘共々お友達になりたいくらいです!」

「ほら、そう言ってるぞ、もう泣くな。」

「本当に?」

「「「本当です!」」」

「アラン様、本当にお友達になってくれるの?」

「へ?・・・・はい!」

「じゃあ、また家に娘と遊びに行ってもいいの?」

「是非!」

「ありがとう。ハロルド、ごめんね、たくさん泣いたらスッキリした!」

「さあ、お前は少し休め。傷口から血が滲んでるぞ」

「分かった…皆様、失礼します…」

「陛下、私はジュリアを部屋に連れて行きます。」

「うんうん、ゆっくりしてこい」



バタン。





「「「「「ハアァァァァーーーー」」」」」

「襲撃より疲れたぞ…」

「あんな可愛い感じで泣くんだな、ビックリした…」

「・・・・俺…お友達になった…」

「恥ずかしい!母親のあんな姿、恥ずかしい!」

「カトリーヌの母上は…なんというか…可愛らしい方だったのだな…」




ちょっとした嵐の様な出来事に少し癒されて、各自部屋に戻った。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元美容師が、異世界に転生した結果〜天才美容師が美少女改造〜

ぱっりん
ファンタジー
有名美容室で働く、 神田美羽。 人気の美容師だったが 事件に巻き込まれ死んでしまう。 生まれ変わった先は、異世界でー!? 美容師が、異世界で人を可愛くしながら 謎をといてくファンタジーもの。

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

透明令嬢、自由を謳歌する。

ぽんぽこ狸
恋愛
 ラウラは仕事の書類に紛れていた婚約破棄の書面を見て、心底驚いてしまった。  だって、もうすぐ成人するこの時期に、ラウラとレオナルトとの婚約破棄の書面がこんな風にしれっと用意されているだなんて思わないではないか。  いくらラウラが、屋敷で透明人間扱いされているとしても、せめて流行の小説のように『お前とは婚約破棄だ!』ぐらは言って欲しかった。  しかし現実は残酷なもので、ラウラは彼らに抵抗するすべも仕返しするすべも持っていない、ただ落ち込んで涙をこぼすのが関の山だ。  けれども、イマジナリーフレンドのニコラは違うと言い切った。  彼女は実態が無くラウラの幻覚のはずなのに、力を与えてやると口にしてきらめく羽を羽ばたかせ、金の鱗粉を散らしながら屋敷の奥へとツイッと飛んでいったのだった。

【完結】悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のマリアンヌには第一王子ジャルダンという婚約者がいた。 しかし、ジャルダンは男爵令嬢のロザリーこそが運命の相手だと豪語し、人目も憚らずに学園でイチャイチャしている。 ジャルダンのことなど好きではないマリアンヌにとってはどうでもいいことだったが、怒った父の公爵が婚約破棄の準備を進める中、マリアンヌは自分の噂話の現場に出くわしてしまう。 思わず聞き耳を立てると、最初はジャルダンとロザリーの非常識な振舞いに腹を立てているありきたりな内容は、次第にマリアンヌが悪役令嬢となってロザリーにお灸をすえて欲しいという要望に変わっていき―― 公爵令嬢として周囲の期待に応えることをモットーとして生きてきたマリアンヌは、完璧な悪役令嬢となってロザリーに嫌がらせを行うことを決意する。 人並み外れた脚力と腕力を活かしてヒロインに嫌がらせを行い、自分のアリバイをばっちり作って断罪返しをする悪役令嬢……を期待された公爵令嬢のお話です。 ゆるい短編なので、楽しんでいただけたら嬉しいです。 完結しました。

コミュ障の魔術師見習いは、バイオリニスト志望?の王子と魔物討伐の旅に出る

きりと瑠紅 (きりと☆るく)
ファンタジー
 ナルスタス王国の宮廷魔術師レオニー・ダルトンは、16才年下の愛弟子アナイス・ボーンと魔棟で暮らしている。アナイスは、周囲の大人に放置されて育った、コミュ症で身なりに無頓着な引きこもり女子だが、魔法陣を描くことが大好きで、レオニーとは、彼女が考えた魔法陣をレオニーが補完して新しい魔法を完成させる、という協力関係にあった。  人慣れしていないアナイスは、レオニーには安心しきっており、レオニーが魔法でアナイスをあれこれ変身させて楽しむのを喜んでいる。そんなアナイスに父性を感じるレオニーは、アナイスを社会に順応させるため、アナイスが密かに思いを寄せるお子様受けNo.1の騎士様、オーギュスト・ハーンとのデートをもくろむ。彼の夢は、アナイスに純白のウェディングドレスを着せて、騎士様(あるいは同等以上の男子)に嫁がせることだった。  そんなある日、国の第一王子ロレンツィオが、在籍する芸術学院で、全校生徒の前で婚約破棄宣言をする。彼は、舞台上でロザリンド・フェデラー伯爵令嬢とのピアノとバイオリンの二重奏を披露し、拍手喝采を浴びているところへ婚約者ユリアナ・バートン公爵令嬢が花束を持ってきたことで、憤慨し、日頃の鬱憤をまき散らす形で宣言をしたのだが、この行動が波紋を呼ぶ。  事態を重く見た学院理事長と国王は、王族を抜けバイオリニストになりたいという王子に、それを認める条件として、①魔物討伐隊の演習について未開の森へ行き、ゆらぎに弱いとされる魔物の前でビブラートを効かせたバイオリン演奏をし、眠らせること、②その後、森の西方に住む賢者のところへ行って腕前を披露し、合格判定をもらうこと、の二点を要求する。そのバイオリンの腕試しとも言える王子の旅の同行者に選ばれたのが、アナイスだった。   一方的な選抜に反発するレオニーだが、アナイスを妹分とする第二王子ベルナンドの働きかけもあって、思い直し、レオニー特製の装備(魔法を仕込んだ杖と様々な仕掛けがある衣装)をもたせ、送り出す。だが、それらが上手く作動しない。原因は、魔法騎士を長く務め、バイオリンの腕前も確かな賢者だった。結局、賢者に会う前にロレンツィオ王子はリタイアするが、その彼の前に賢者が現れ、判定を告げる……。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

処理中です...